転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第15章 絶望の街『イルニス』

第200話 魔王と同じ顔なので

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 そんなライザのことをリオンは不思議そうな顔で見つめていた。

「兄ちゃん……帰っちゃう?」

「ああ。お前の元気そうな顔を見たしな」

「ええ……なら、今日は僕と一緒に寝てくれないの?」

 リオンに悲しい顔で見つめられ、ライザは頭を抱えた。こんな可愛い弟にせがませてしまえば、流石のライザも断るのは胸が張り裂けそうになるほど心苦しいのだろう。少し考えたライザはため息交じりで俺たちに請うた。

「……今日は泊まらせろ」

「うん……いいよ」

 了承してもばつが悪そうなライザだったが、笑顔になるリオンを見て恥ずかしそうにしながらも口角を上げた。その様子に顔を見合わせたアンジェとセリナは「クスッ」と笑った。


 ◆ ◆ ◆


 翌朝。

 アンジェが作った朝食を食べながら、俺たちはこれからのことを話した。

「ところで……『イルニス』の街ってどんな感じだったんだ?」

 昨日買ってきてくれたパンを頬張りながら聞いてみるが、アンジェもセリナには複雑そうな顔をされた。

「まあ……食材を買えただけマシよね」

「そうですね……状況は実際に見てもらったほうが早いかもしれません」

 意味深な様子の二人に思わず首を傾げるが、話を広げる前にアンジェが「そうだ」と思い出したように手を叩いた。

「あたし、ムギちゃんに良い物を買ってきたのよ。今日はこれを着て出かけましょ」

 と、アンジェがニコニコと笑う。だが、その笑顔が不自然なくらいキラキラと輝いており、嫌な予感のあまり自然と頬が引き攣った。

 そして、俺の予感は見事に的中してしまった。

「……お前……その格好……めっちゃ似あってるぞ」

「ああ……むしろそれで魔王倒したらいいと思う」

 アンジェが用意してくれた服を見てライザとノアが肩を震わせ、目に涙を溜めながら笑いを堪えている。しかし、いくら眉間にしわを寄せても、怒りで顔を赤くさせてもこいつらにはわからないのだろう──ピエロの仮面をかぶっている今の俺の格好では。

「本当、思ったより似合ってるわ」

「ええ、とっても素敵です」

 人の気を知ってか知らずか、アンジェもセリナも満面の笑みで俺を褒める。

 しかし、これはお世辞にも似合っているようには思えなかった。赤と黄色の派手な色を縫い合わせたつなぎ。環状のフリル。そして白く塗られた肌と目元を真っ赤にペイントされた顔。見事なまでのピエロコーディネートだ。

「これなら、魔王と同じ顔でも街中歩けるわよ」

 ということでアンジェがわざわざ買ってきてくれたこの服だが、お世辞にも似合っているとは思えない。

 というかに合っているのならあそこにいる口悪いコンビがあんなに笑っていない。けれども、確かに顔を隠すならこういった変装が必要だ。あと、メイクしてくれたのがセリナだから余計悪く言いづらい!

 しかし、我が儘も言っていられないので、この格好のまま『イルニス』の街に行くことになった。

 だが、そこで飛び込んできた光景に俺は目を疑った。

「……うわ」

 自然と言葉が漏れた。おそらく、普段は活気のある綺麗な街並みなのだろう。しかし、家の屋根は穴が開き、レンガの外壁は崩れ、行き交う人々の顔も暗かった。かろうじて店は開いているが、活気があるとは言えない。

「どうやら全部魔物にやられたみたいなの」

「余程活発になっているのか、この数日でも何回か襲われているみたいで……」

 アンジェとライザが街を見回す俺に説明してくれる。街がこんな具合だったから昨日は彼らも最低限の品を購入してきただけで撤退してきたとのこと。意外と帰宅が早かったのはそういうことだったらしい。

「……でも、これら本当に魔物の仕業か?」

 フードをかぶったライザが砕けた壁をじっと見つめる。一見、ただ崩れただけのレンガに見えるが、改めて見るとところどころ黒く焦げたレンガがあった。この崩れ方は打撃ではない。おそらく爆発だ。

「連中が爆弾なんて、物騒な代物を持っているとか考えたくないな」

 ライザの肩に乗ったノアがぼそりと呟く。こんな爆発物を持って街を暴れ出したら被害はどんどん大きくなるばかりだ。あまり考えたくないが、残念ながらこういう勘は当たってしまう。
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