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第15章 絶望の街『イルニス』
第201話 街の子供たちによると
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「あたしは人に聞いて回ろうかと思うけど、あなたたちはどうする?」
アンジェが提案してくるが、俺は遠慮せざるを得なかった。
「こんな格好で聞き込みはかえって怪しまれてしまう……」
「確かに……じゃ、ムギちゃんはそこの噴水前で待ってて。リオちゃんのお兄さんは?」
「癪だが俺も待ってる。エルフだとバレてそいつを殺すの面倒だ」
「……そうね。それがいいわ」
ライザの発言にアンジェが苦笑いを浮かべる。その様子を見兼ねてか、セリナは「私は行きます」と名乗り出てくれた。
「リオン君は? 一緒に来ます?」
セリナに問われ、リオンは少し考えたあと、ライザの足元にピタッとくっついた。
「寂しそうだから、兄ちゃんとムギト君と待ってるー」
「……そうかい、ありがとよ」
リオンに言われ、ライザが息を吐きながら自分の頬を掻く。フードで顔は隠れているが、きっとそれなりに頬を赤めていることだろう。素直じゃない奴だ。
しかし、実際のところリオンが一緒にいてくれて助かった。猫を連れたピエロとフードをかぶった男が噴水の前で無言で座っているなんて異様な光景に決まっている。
時間を潰している間、リオンの相手はノアにしてもらった。
ノアの長い藍色の毛をもさもさと撫でまわしたり、どこからか拾ってきた猫じゃらしを使って戯れたりと上手く暇をつぶしている。リオンも猫の扱いが上手くなったようだ。いや、この場合はノアがすっかり猫になり切っているというべきか。こいつ、絶対自分が神の使いって忘れているだろ。
そうやってぼーっとしながらしばらくノアとリオンのことを眺めていると、街の子供たちがボールを持って噴水の近くまでやってきた。どうやらボール遊びをするらしい。
「お前ら……こんなところにいて危なくないのか?」
思わず声をかけると、子供たちは不思議そうな顔でこちらを向いた。そして俺の顔を見た途端、ぱぁぁと表情が明るくなり、目をキラキラと輝かした。
「すげー! ピエロだー!」
「初めて見たー!」
「ねえ、なんかやって! なんかやって!」
「え? え?」
戸惑っているうちにあっという間に子供たちに囲まれてしまう。こんな格好をしていたことがかえって仇になってしまったらしい。しかし、「なんかやって」と言われてもピエロっぽいことは何一つできないのだが!
困っているとノアと遊んでいたリオンが彼女を頭に乗せて俺のほうまで戻ってきた。はしゃぐ子供たちを見て察したのだろう。目を輝かせてリオンは俺に請うた。
「ねえねえ、あれやって。ボールを蹴る奴!」
「あ?」
リオンにいきなりリクエストされてキョトンとされたが、男の子が持っているボールを見てピンときた。リオンが言っているのはリフティングだ。
「ちょっとそのボール貸してくれ」
「うん、いいよ」
快く貸してくれた男の子からボールを受け取る。「サンキュ」と礼を言うと、俺は噴水から離れてボールを蹴れるスペースを取った。
「よっと」
軽いかけ声と共にスッとボールを蹴ると、ボールは吸い寄せられるように俺の額の上に転がった。そのまましばらく額の上でボールをキープすると、子供たちの感嘆の声があがった。
「すごーい!」
「もっとやって! もっとやって!」
明るい子供たちの声に応えるため、額の上にあったボールを滑らせて足へと持っていく。
ポン、ポンと膝と足とボールを蹴る。なんてことのない、ただのリフティングだ。しかし、時たま高く蹴り上げたボールを避けるように足を回してまたいでみると、再び歓声があがった。リオンの時もそうだったが、アラウンド・ザ・ワールドはここでも子供たちに人気らしい。
子供たちに拍手をされる俺を見て、珍しくライザが「へえ」と俺に感心した。
「なんだお前、足のほうが器用じゃねえか」
「昔、サッカー……いや、玉蹴りやってたからな」
答えるがライザの興味はすでに失せており、「ふーん」と気のない返事が返ってきた。
「お前、普段も蹴ったほうがいいんじゃねえの?」
ぽつりと呟いたライザの言葉が意味深に聞こえ、思わず首を傾げる。
アンジェが提案してくるが、俺は遠慮せざるを得なかった。
「こんな格好で聞き込みはかえって怪しまれてしまう……」
「確かに……じゃ、ムギちゃんはそこの噴水前で待ってて。リオちゃんのお兄さんは?」
「癪だが俺も待ってる。エルフだとバレてそいつを殺すの面倒だ」
「……そうね。それがいいわ」
ライザの発言にアンジェが苦笑いを浮かべる。その様子を見兼ねてか、セリナは「私は行きます」と名乗り出てくれた。
「リオン君は? 一緒に来ます?」
セリナに問われ、リオンは少し考えたあと、ライザの足元にピタッとくっついた。
「寂しそうだから、兄ちゃんとムギト君と待ってるー」
「……そうかい、ありがとよ」
リオンに言われ、ライザが息を吐きながら自分の頬を掻く。フードで顔は隠れているが、きっとそれなりに頬を赤めていることだろう。素直じゃない奴だ。
しかし、実際のところリオンが一緒にいてくれて助かった。猫を連れたピエロとフードをかぶった男が噴水の前で無言で座っているなんて異様な光景に決まっている。
時間を潰している間、リオンの相手はノアにしてもらった。
ノアの長い藍色の毛をもさもさと撫でまわしたり、どこからか拾ってきた猫じゃらしを使って戯れたりと上手く暇をつぶしている。リオンも猫の扱いが上手くなったようだ。いや、この場合はノアがすっかり猫になり切っているというべきか。こいつ、絶対自分が神の使いって忘れているだろ。
そうやってぼーっとしながらしばらくノアとリオンのことを眺めていると、街の子供たちがボールを持って噴水の近くまでやってきた。どうやらボール遊びをするらしい。
「お前ら……こんなところにいて危なくないのか?」
思わず声をかけると、子供たちは不思議そうな顔でこちらを向いた。そして俺の顔を見た途端、ぱぁぁと表情が明るくなり、目をキラキラと輝かした。
「すげー! ピエロだー!」
「初めて見たー!」
「ねえ、なんかやって! なんかやって!」
「え? え?」
戸惑っているうちにあっという間に子供たちに囲まれてしまう。こんな格好をしていたことがかえって仇になってしまったらしい。しかし、「なんかやって」と言われてもピエロっぽいことは何一つできないのだが!
困っているとノアと遊んでいたリオンが彼女を頭に乗せて俺のほうまで戻ってきた。はしゃぐ子供たちを見て察したのだろう。目を輝かせてリオンは俺に請うた。
「ねえねえ、あれやって。ボールを蹴る奴!」
「あ?」
リオンにいきなりリクエストされてキョトンとされたが、男の子が持っているボールを見てピンときた。リオンが言っているのはリフティングだ。
「ちょっとそのボール貸してくれ」
「うん、いいよ」
快く貸してくれた男の子からボールを受け取る。「サンキュ」と礼を言うと、俺は噴水から離れてボールを蹴れるスペースを取った。
「よっと」
軽いかけ声と共にスッとボールを蹴ると、ボールは吸い寄せられるように俺の額の上に転がった。そのまましばらく額の上でボールをキープすると、子供たちの感嘆の声があがった。
「すごーい!」
「もっとやって! もっとやって!」
明るい子供たちの声に応えるため、額の上にあったボールを滑らせて足へと持っていく。
ポン、ポンと膝と足とボールを蹴る。なんてことのない、ただのリフティングだ。しかし、時たま高く蹴り上げたボールを避けるように足を回してまたいでみると、再び歓声があがった。リオンの時もそうだったが、アラウンド・ザ・ワールドはここでも子供たちに人気らしい。
子供たちに拍手をされる俺を見て、珍しくライザが「へえ」と俺に感心した。
「なんだお前、足のほうが器用じゃねえか」
「昔、サッカー……いや、玉蹴りやってたからな」
答えるがライザの興味はすでに失せており、「ふーん」と気のない返事が返ってきた。
「お前、普段も蹴ったほうがいいんじゃねえの?」
ぽつりと呟いたライザの言葉が意味深に聞こえ、思わず首を傾げる。
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