ドゥームレジスター

バルッ!!

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《ピピピッ! ピピピ!ッピピピッ!ピ(カチッ)》

「……………ねみぃ」
重い瞼を擦りながら、
ゆっくりとベッドから体を起こす。
少し開いたカーテンからは、
すでに眩しい光が指しこんでいた。

ふと、テーブル上の時計を見るとまだ朝の9時だ。

「……ん?9時?」



「……ヤベェ!!

今日は9時からあいつと遊ぶ約束したんだった!?」

慌ててベッド横のスマホを取る。
画面に映されたメッセージには、

『今着いたんだが、ダイチ何処いんだ?』

ヤバい、アイツからのメッセージだ…
そりゃもう着いてるよなぁ。

……仕方ない。ここは素直に謝るしかないな。


『すまん、今起きたとこ…』
『え』

『まじ?』
『マジ』



『急いで来い!駆け足!!』
『了解!!』


こうして軽く友人への謝罪を終えると、
スマホとバッテリーに充電コードという三種の神器を肩掛けのカバンへと突っ込み、
駆け足で集合場所である玉藻駅へと向かったのだった。



「やべぇ……」
それは家から駅まで半分程の所、近道としてショッピングモール裏の商店街を抜けた時に事件は起きた……


「腹減った…そういや朝、食ってなかったな……」
だがここは通り慣れた道だ。
何がどこにあるかは殆ど頭に入っている。

「確か自販機が……っと、あった!」
少し歩いた先に自販機を見つけるとスポーツドリンクを1つ買い、その場で三分の一程飲んだ。
腹へのチャージも完了し、俺は歩きだそうと後ろを振り向いた。


「…ん?」

そこにはタイトルの無い一冊の本が落ちていた。
それは国語辞典程の厚さがあり、表紙は黒一色で塗り潰され、その周りには金色の硬い何か金属のようなもので縁取られている。

今さっきまでは無かったはずだよな?
置いたとしても誰かが近づいてきたら分かるだろうし、上から落ちても普通音で気づくし…

……落ちていた理由は分からないが、そのままにするよりは交番に行けた方がいいか。

今は予定があるし後にはなるけどそれぐらい大丈夫だろう。


俺は突然現れたその黒く分厚い謎の本をカバンに入れ、再び駅の方へと向かった。



「よしっ!やっと着いた…」
「ダイチーッ!!」

いつもの待ち合わせ場所である玉藻駅前の噴水近くで俺の友人、寺本 龍次は大きく手を振って待っていた。

身長は180センチと俺より少し高く
頭には青いヘアバンドをしている。
本人曰く、髪が顔に掛かると落ち着かないとか。
そこから飛び出るように茶髪が上向きに尖っている。

こいつはかなり重度のゲーマーで、
本当に三度の飯よりゲームってやつだ。
でも、ただのゲーム好きって訳でもない。

最近人気のFPS系のオンライン大会で優勝を果たしたガチ勢だ。


「寺本!遅れてスマンッ!!」
「オセェ!そもそもなんで誘った本人が遅れるんだよ!!」
「正論過ぎてなんもいえね……」
「まったく、仕方ねぇなぁ。じゃ、今日の昼飯はダイチが驕りだ!」
「朝もちゃんと食ってないんだが…まぁ、昼飯位ならいいか。あそこのバーガーでいいか?」

そんないつもの何気ない会話をしながら青になった横断歩道を渡っていく。


「なぁ大地。バーガー食った後どこ行く?」
「ん~そうだな。それなら近くの……」

ゲーセンに行こうぜ。



しかしその言葉は、目の前に現れたトラックによって変わってしまう。

「寺本!?」

咄嗟に大地は寺本を両手で突き飛ばた、
それによってぶつかる標的は大地に代わる。


……。


………………。


………………………。


……しかしいつまで経っても来るはずの衝撃が来ない。

そう思い周りを見渡す大地が目にしたのは、


静まりかえった世界と、




空中に開かれるあの黒い本だった。


「マジかよ………」

死を覚悟していた大地は、奇妙奇態きみょうきたいな世界にただ呟くことしか出来ないでいた。


隣を見ると驚いた顔をしたまま寺本が固まっている。
「助かったんだな……」

もう一度周りを見渡してみる。
よく見ると駅前にいる人々だけではなく噴水も、車も、空を飛ぶ鳥さえもこの世の全ての時間という時間が止まった意味不明な状態だった。



「この本のお陰なのか…?時間が止まったのは……」
空間に目線を向けるが、
途中で拾った黒い本は未だに浮かび続けている。
それはまるで大地を待つようだった。


「訳分かんねぇ………けど、これしかないよな。」

仕方なく近いてはみるが変化はなく、
ページも変わらず開かれたまま存在している。

大地はもう一度辺りを見渡す。
「本当に止まってんだよな……。
もしかして、一生この空間のままだったりして?」

「そんなことないですよね……?」そう思いながら呟いた瞬間。
黒い本は強風にあおられたかのような音を立て、
まるで回答を探しているかのように次々とページが変わり続ける。

それは時間にして十数秒程。
音は止み空間が静けさを取り戻すと、
聞こえてきたのは抑揚の少ない女性の声だった。


《大地》

「………本って喋るんだ…ってか時間を止めてる時点でヤバいよな、しかも黒いし名前書いた相手が死んだりして。拾わなかったら良かったんじゃ……あぁー、頭がキャパ超えて独り言が止まんねぇ……」

《神野 大地》

「あ、はい…」

突然、名前をフルネームでという中々されない呼ばれ方をされ変わった返事をしてしまうが、黒い本は気にすることなくそのまま語りかけてくる。


《貴方はトラックに轢かれて死ぬ運命です。》


「………………。



ではなく?」


《えぇ。今、そう説明しました。》
「いやなんだよその説明ッ!!なんか可笑しくないか!?」

《可笑しくはありません。運命は運命です。》

運命って……まぁ確かに
トラックはかなりスピードが出ていたし、
あのまま突っ込んだらそりゃ死ぬのも分かる。
もし、生きていたとしても長くはないだろうし。

    大地は今の状況を細かく理解することで少しずつだが、冷静な思考を取り戻していく。

「運命なのは分かった。で、この後はどうなるんだ?死後の世界で神に会うとかか?それともこのまま」《いいえ》



《私の能力によって神野大地、貴方をもう1つの世界への転移を可能にしました。》


「………俺、転移しちゃうの?」

《はい、転移しちゃいます。》
わぉ……。

《転移先は異世界、この地球とは異なる世界で生きるという意味です。》
なるほど、地球とサヨナラバイバイか。

「いや、だろうと思ったよ……てか、俺にはトラック死と別の世界、異世界に転移するしか選択肢は無いのか?」


《この空間を維持するにも限界があります。もう少しすれば未来が再生されるでしょう。そうなれば、貴方はトラックに轢かれ死にます》

「分かった分かった……。トラック死な。」

《もう1つの選択肢は、貴方がトラックに轢かれ死にます。その後貴方を再構築し、もう1つの世界に転移させます。》

「なるほどぉ。もう一回説明いいか
な?ちょっと理解ができなくてさ。」


《分かりました。》


《ゴホン………》

《貴方には2つの選択肢があります。1つは『トラックに轢かれて死ぬ』もう1つは『トラックに轢かれて再構築したのちに「ッ!?」

《そことはどこでしょうか?》

「いやいやいや、どう考えてもオカシイでしょ……なんで俺、死んでんの!!」
《仕方ないことです。》

「仕方ないのかよ!?」

いやそうだ。確かコイツ、最初に言ってたじゃないか……

《ですから、》

「《。》って」


そんな言葉に頭を抑えながら、大地はただただこう呟くのだった。



「マジかよ……」と
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