気がつけばキツネ!? ~天才少女のおキツネライフ!!~ 《キガキツ!!》

バルッ!!

文字の大きさ
3 / 4

ギルドの仲間たちと、狐耳の大誤解

しおりを挟む

「ふぅ……ようやく着いた……」

 重くなった腰に手を当てて、リド――いや、姿は、ギルドの立派な扉を見上げた。

 いつもなら余裕の表情で入っていく場所だが、今日は気が引ける。
 なにせ、なのだ。
 しかもド直球の狐耳。しかもゆらゆら揺れる尻尾付き。

(……冷静に考えて、俺がギルドにこういう姿で来るって、どういう事案だよ……)

 だが、この姿を解決する手がかりがあるとすれば、信頼できる仲間たちしかいない。覚悟を決めて扉を押す。

 中は朝の騒がしさそのまま、冒険者たちがわいわいと集っていた。

「いらっしゃ――」

 受付の少女が言葉を飲む。

 それもそのはず。のだから。
 しかも、明らかに只者ではない魔力を纏っている。

「あの……お名前をお伺いしても?」

「……リド・ルキリスだ。登録番号《0037-AR》だ。昨日の夜、俺はこうじゃなかった」

「へ? ……へぇええええええええええええ!?!?!?!?」

 受付嬢が椅子から転げ落ちる。
 ギルドの喧騒が一瞬にして止まり、皆の視線が一点に集まる。

「今、なんつった!? リド様だとォ!?」「え!? あの、アルゼン最強のイケメン魔術師!?」「嘘だろ、狐耳の美少女になっちまったのかよ!?」「趣味か!?」

「ちがぁあああああああう!!!!!」

 リドの叫びがギルドに響く。

 その時だった。
 ギルド奥の扉が開き、が姿を現す。

 一人は背が高く、冷静沈着な女剣士、《レイナ・ヴァルシュタイン》。
 銀の髪に鋭い眼光を持つ美人で、リドの長年の戦友。
 もう一人はぼさぼさの髪に片眼鏡をかけた青年錬金術師、《ジーノ・ベルグ》。常に何かのフラスコをいじってる研究狂。

「……狐耳の……小娘? なんでここに……って、あ?」

 レイナは狐耳少女の瞳を見て、ピクリと眉を動かす。

「……その眼。リド、なの?」

「やっと気づいてくれるまともな奴がいた……!」

「マジで!? マジなの!? え、え!? これ人体変換魔術!? それとも祝福系!? 転生!? 亜人融合!? やべぇ!! めっちゃデータ取りたい!!」

「落ち着けジーノ!! お前はまず俺の話を聞け!!」

 リドは息を整えながら、自宅での出来事をざっくり説明した。

 ――飲みすぎたこと
 ――起きたら魔方陣の中だったこと
 ――お稲荷像が「契約成立」とか叫んだこと
 ――気がついたら狐耳美少女だったこと

「…………」

 レイナとジーノは無言で顔を見合わせる。

「つまり、お前はか何かを酔った勢いで召喚・契約した……ってことね」

「そうなるな。しかも解除法が分からん。ジーノ、お前何か知らんか?」

「知らん!」

「即答かよ!!!」

「でもさ、でもさ! すっげー面白いよ!? ていうかリド、今魔力の流れすげー綺麗だよ! 体が軽くなってない? 精神的にはアレだろうけど、魔術師としては今、完全に"最適化状態"だよ!」

「それでも戻りたいんだよ!! 俺はイケメンのままでいたいんだ!!」

「贅沢な悩みね……こっちは年齢戻したくても戻せないってのに」

「それは知らんがな!」

 周囲は騒然、リドは大混乱、ジーノは大興奮、レイナは半笑い。

 そんな中、ギルドの掲示板にひとつのクエストが貼られる。

『【緊急依頼】
 失われた狐の神具「白尾の宝珠」を探索せよ。
 報酬:未定(大変貴重な遺物の可能性あり)』

 その依頼文を見て、リドの尾がふわりと震えた。

(――あれだ。何か、体の奥が反応してる。間違いない)

 リドは前を向き、口を開く。

「よし。元の姿に戻るためにも、このクエストを受ける。みんな、付き合ってくれ」

「任されたわ、相棒」「最高の研究対象!!」「狐耳最高……うぁっ、鼻血出た」

「だがアレン。テメェは駄目だッ!!」


「……へ?」


「やっぱ俺の人生、今日からハードモードだな……!!」

 こうして、リドたち(アレンを除く)は“元に戻るための冒険”へと歩み始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...