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狐耳好きの弟子がヤバい
しおりを挟む「はぁ……はぁ……。これ……マジで俺の身体……なのか……?」
自分の手を見ても、鏡を見ても、どうあがいても美少女だった。
しかもなんかこう……尻尾までふわふわしてて、違和感がえげつない。
もともと整った顔立ちの《リド・ルキリス》だったが、今の姿はどう見ても少女。
しかも、思わず拝みたくなるレベルの狐耳美少女である。
「お稲荷像ォ!! なに勝手に契約してくれてんだよぉ!!」
像に怒鳴ってみても、さっきのファンファーレのような音は鳴らない。
光もしない。うんともすんとも言わない。
「……とりあえず、状況を整理だ。まず、俺は昨夜、酔い潰れた。起きたら、狐耳美少女だった。原因はおそらく、この魔方陣と……この像。となると、解除方法は……」
そう呟いていると、ドアがノックもなくバァン!!と開いた。
「師匠~! 朝っぱらから魔力が暴れてましたよ!? 無事ですか!? 大丈夫ですか!? 僕はいつでも介抱できますよ師匠ーーーっ!!」
走り込んできたのは、リドの弟子、《アレン・サリト》。
年若いながら魔術の才に優れた優等生……なのだが――
「……って、誰ですかあなた!? うわ! し、失礼しました! こ、ここは師の研究所なのに……え!? ええ!? 師匠ー!?!?」
狐耳のリドと目が合った瞬間、アレンの目がカッと見開かれた。
「そ、そんなまさか……狐耳の……その、可愛い……っていうか……めちゃくちゃ好みな少女が……まさか……師匠……!?」
「……俺だよアレン。リド・ルキリスだ。今はこの通り狐耳の美少女だけどな」
「無理、最高、もう無理、死んでもいい――!」
「落ち着けや弟子ェ!!」
地面に突っ伏して震えながら感動している弟子を横目に、リドは頭を抱えた。
このままではマジで日常が崩壊する。
もともと弟子のアレンは狐耳属性持ち。今のリドは、ドンピシャでアレンの性癖に刺さってしまっているのだ。
「い、いいか。俺は元の姿に戻る。だからな? 変な目で見るなよ? あと近寄るな。あと尻尾を触るな。マジで」
「うう……でも……」
「触るなって言ってんだろがアアアア!!!」
自宅が一気にカオスと化す中、リドは覚悟を決めた。
「よし……ギルドに行くぞ。頼りになる連中もいるし、あいつらならこの魔術を解く方法もきっと見つけてくれる……はず」
「師匠! もちろん僕も同行します! 一生ついていきます!」
「やめろ! お前は一旦、距離を置け!!」
こうして――
アルゼン王国が誇るイケメン大魔術師《リド・ルキリス》は、
狐耳美少女の姿でギルドに向かうという、地獄みたいな一日を迎えるのであった――。
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