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第一話『割れた世界』
しおりを挟む二月十一日。
その日は、何の変哲もない朝のはずだった。
ニュースでは相も変わらず、政治家の汚職。
SNSでは、誰かの失敗を嗤う投稿がトレンド入りしていた。
俺はコンビニのコーヒー片手に、遅刻ぎりぎりの足取りで駅の階段を駆け上がる。
いつも通り、同じ日常。
それが崩壊するとは、誰も知らなかった。
──午前七時十三分。
空が「割れた」。
ガラスを砕くような音とともに、雲の裂け目から幾筋もの光が地上へ降り注ぐ。
誰もが足を止め、スマホを構え、息を呑んだ。
そして、現れた。
純白の翼。
金属のように冷たい光を放つ瞳。
人間の形をしていながら、明らかに“人ならざるもの”。
その存在は、神話に語られる“天使”を思わせた。
だが、俺の本能はそれを――災厄と呼んでいた。
『我は《ガブリエル》。告げよう、人類よ。お前たちの時代は終焉した』
その声は空気を震わせ、世界中の人間の脳へ直接響いた。
街が沈黙し、時間が止まる。
『我は裁定を下す。人の才を《力》へと変換する。
その名も──《革命》。』
瞬間、世界が“痛み”で満たされた。
胸の奥が灼けるように熱い。
視界に見知らぬ“数値”や“文字”が溢れ出す。
《Talent:文学的感受性 → Ability:精神干渉》
《Talent:瞬間記憶力 → Ability:映像再生》
《Talent:料理技術 → Ability:物質再構成(限定)》
──才能が、能力へと変換されていく。
歓声、悲鳴、狂笑。
すべてが混じり、現実がきしむ。
その中心で、俺――本城 樹(ほんじょう いつき)は息を呑んだ。
《Talent:洞察 → Ability:心象透視》
他人の感情が、色と形を伴って“見える”ようになった。
それは祝福のように思えた。
だが、それが呪いであることを知るのに、そう時間はかからなかった。
---
その日の午後、テレビが“最初の犠牲者”を報じた。
超能力者同士の小競り合い。
それが、火種となって世界中で爆発した。
国家が崩れ、街が焼け、思想が分裂する。
《革命》は、人の心を暴き、奪い、殺した。
「……クソ。何が《革命》だよ」
瓦礫の中、俺は呟いた。
昨日まで通っていた学校は跡形もない。
ニュースの犠牲者リストの中に、クラスメイトの名前を見つけた。
そして、そのとき。
ガブリエルの“声”とは別に、もうひとつの声が脳に響いた。
『……もし、聞こえるなら。止めて。ガブリエルを──止めて。』
女の子の声だった。
弱々しく、しかし確かに、助けを求めていた。
誰なのかも分からない。けれどその声が、俺の中で何かを動かした。
---
夜。
廃ビルの屋上で、俺は崩壊した街を見下ろしていた。
炎と光と、混沌。
だが、その中で確かに、人の“意志”だけは燃えていた。
「才能が力になるなら……俺は、この力で、世界を見届ける」
掌に浮かぶ淡い光。
それは他人の心を“視る”能力。
呪いでもあり、唯一の武器でもあった。
その夜、《超能力者狩り》と呼ばれる組織が初めて動き出した。
彼らの最初の標的――本城 樹。
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