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第十九話『観測者は見えない』
しおりを挟む光は、ゆっくりと“降りてきた”。
それは柱ではない。
かつてのような、圧倒的な啓示でもない。
ただの、**視線**だった。
世界のどこかから、
この場所を“見ようとする意志”。
「……感じる?」
レイが小声で言った。
「ああ」
本城は頷いた。
「でも、前と違う」
加納が辺りを見回す。
「何がだ?」
「焦点が、合ってない」
本城は静かに言った。
「“探してる”」
---
光は、建物の中心をなぞるように漂った。
だが、本城たちには触れない。
まるで、**見えないものを前提に探している**かのように。
「……なるほど」
本城は、息を吐いた。
「ガブリエルは、
“観測できるもの”しか見ていない」
「どういう意味?」
レイが聞く。
「能力は、才能の変換だ。
つまり──」
本城は、床に落ちたガラス片を拾い上げる。
「“意味づけ”された人間だけが、
ガブリエルの視界に入る」
加納が、ハッとした顔をする。
「じゃあ俺は……」
「最初から、見えてなかった」
本城は頷いた。
「残留者は、観測外だ」
---
光が、ぴたりと止まる。
そして、**声**が響いた。
『……異常値を確認』
直接、脳に響く、あの声。
『二重観測体……再計測を要求する』
レイが、本城の袖を掴む。
「本城……!」
「大丈夫だ」
本城は、小さく首を振った。
「ここが、分岐点だ」
---
本城は、一歩前に出た。
だが、**何もしない**。
ただ、そこに立つ。
『……応答せよ』
声が、わずかに苛立ちを帯びる。
本城は、心の中で“拒否”した。
言葉ではない。
能力でもない。
**選択**だ。
---
「……見えてないな」
本城は、独り言のように呟いた。
「ガブリエル。
お前は“理解できるもの”しか裁定できない」
『裁定は、理解を必要としない』
「嘘だ」
本城は、真っ直ぐ“光のない場所”を見た。
「理解できないものは、
誤差として切り捨ててる」
沈黙。
光が、微かに揺れた。
---
加納が、息を詰める。
「……今、揺れたぞ」
「効いてる」
レイが囁く。
「でも、危険よ」
「分かってる」
本城は、ゆっくりと目を閉じた。
《心象透視》を、**自分自身に向ける**。
恐怖。
怒り。
迷い。
全部、そこにある。
だが──
それを“意味づけ”しない。
---
光が、急に遠のいた。
『……再評価不能』
声が、わずかに歪む。
『観測対象が……不定』
レイが、驚いたように言う。
「……消えた?」
「いや」
本城は目を開ける。
「“見失った”」
---
建物の中の圧が、消える。
風が、自然に吹き抜ける。
加納が、深く息を吐いた。
「……生きた心地がしなかった」
「今のが、
天使を欺くってこと?」
レイが聞く。
「正確には」
本城は答える。
「**裁定の前提を壊した**」
---
「ガブリエルは、
全てを管理してるつもりでいる」
本城は、二人を見る。
「でも実際は、
“管理できる世界”しか見ていない」
「だから」
加納が続ける。
「俺みたいな奴は、
最初から数に入ってなかった」
「ああ」
本城は、静かに頷いた。
「そして俺は──
その“外側”に立てる」
---
レイが、端末を閉じた。
「……決まりね」
「何がだ?」
「これからの動き方」
彼女は本城を見る。
「正面から革命を壊すんじゃない。
“見えない場所”から、
少しずつズラしていく」
本城は、微笑った。
「革命を、
内側から腐らせる」
---
加納が、苦笑する。
「性格悪いな」
「褒め言葉だ」
その瞬間。
本城の視界に、**一瞬だけ**少女の影が映った。
微笑んでいる。
今度は、はっきりと。
『……ありがとう』
声は、もう怯えていなかった。
本城は、静かに呟く。
「……まだだ」
革命は、始まったばかりだ。
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