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第十八話『最初の観測点』
しおりを挟む「……ここが?」
加納が低く呟いた。
「ああ」
本城は頷いた。
「最初に“光の柱”が降りた場所だ」
空は曇っているのに、ここだけ妙に明るい。
まるで、過去の光がまだ残留しているかのようだった。
レイが端末を操作しながら言う。
「監理局の内部データでも、ここは“空白”。
事件発生地点なのに、記録が存在しない」
「消したんだ」
本城は即答した。
「都合が悪かったから」
---
三人は、かつてイベントホールだった建物の中へ入った。
天井は抜け落ち、壁には焼け焦げた痕跡が残っている。
だが──
**破壊の中心だけが、妙に整っていた**。
「……おかしい」
加納が眉をひそめる。
「壊れてるはずなのに、
“始まり”だけが保存されてる」
「観測点だからよ」
レイが言った。
「ガブリエルにとって、
ここは“基準”」
本城の胸が、微かに疼いた。
---
その瞬間だった。
視界が、反転する。
《心象透視》が、勝手に発動した。
「……ッ!」
本城は膝をつく。
情報が流れ込んでくる。
だがそれは、他人の感情ではない。
**自分自身の記憶**だった。
---
──2月11日、午前7時13分。
駅前の喧騒。
割れる空。
降り注ぐ光。
そして──
自分が、ここにいた。
「……そうか」
本城は、震える声で呟いた。
「俺、ここで……」
続きが、映る。
光の柱の中心で、
本城は一瞬だけ、**“誰か”と目を合わせていた**。
少女。
白い服。
泣きそうな目。
『……止めて』
あの声。
---
「本城!」
レイの声で、意識が引き戻される。
本城は荒く息を吐いた。
「……思い出した」
「何を?」
加納が身を乗り出す。
「俺が“死んだ”理由だ」
レイの表情が、凍りつく。
---
「ガブリエルは、全人類を一斉に観測した」
本城は静かに語り始めた。
「才能を数値化して、能力へ変換するために」
「でも?」
レイが促す。
「例外があった。
“観測が重なった人間”だ」
加納が息を呑む。
「重なった……?」
「俺は、その瞬間、
**誰かを観測していた**」
レイの瞳が揺れる。
「それって……」
「ああ。
ガブリエル以外の“視点”だ」
---
沈黙。
壊れた建物の中で、風の音だけが響く。
「つまり」
加納が言葉を選びながら言った。
「お前は最初から、
“二重観測状態”だった?」
「そのせいで、
ガブリエルの裁定がズレた」
本城は立ち上がった。
「俺は“完全な生存”でも、“完全な死”でもない。
だから《心象透視》は、
他人だけじゃなく、“世界の裏側”も見える」
レイは、静かに頷いた。
「……だから監理局は、
あなたを“危険な誤差”として狩った」
「そして」
本城は、崩れた床の中央を見る。
「ここを消した」
---
加納が、ぽつりと言った。
「……あの少女は?」
本城は、視線を落とす。
「まだ、分からない。
でも……」
拳を握る。
「彼女は“革命”の中心にいる」
レイが、本城を見る。
「本城。
ここに来たことで、
あなたはもう“観測対象”じゃない」
「分かってる」
「次は──
“観測者”になる」
本城は、静かに笑った。
「ああ。
そのつもりだ」
---
その時。
天井の崩れた穴から、
**一筋の光**が差し込んだ。
だがそれは、天からではない。
“上書きされるような光”。
レイの端末が、警告音を鳴らす。
「……まずい。
監理局じゃない」
加納が呟く。
「……ガブリエルだ」
空気が、再び“裁定”を帯び始めていた。
本城は、顔を上げる。
「……来たか」
革命の“始点”で、
再び、天使が世界を覗き込もうとしていた。
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