記憶のカケラ

シルヴィー

文字の大きさ
3 / 42
ストーリー

異変

しおりを挟む
ハッと夢からめて起き上がると、目の前に見知らぬ顔があった。

「わああっっ!」

こちらに顔を向けて眠っているらしい…が、突然のことに驚いてベッドから転げ落ちてしまった。よくよく見ると、随分ずいぶんと幼い少年だった。ペディアと同じ青色の髪で、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気があった。

少年は大きな物音と声で目がさめたのか、身じろぎをした。

「う……ん、、…ねえ…?」

「……なんでここに居るの。ここ私の部屋よ?あなた誰?」

矢継ぎ早に質問してしまった私は悪くないと思う。少年はそんなペディアの様子に気づかず、ぼーっとした頭を徐々に覚醒させていた。意識がハッキリしてきたのか、焦点が合わなかった目がようやくこちらを向いた。そしてにっこりと笑って挨拶をする。

「…あ、ペディ姉。おはよう」

「…おはよ。で、誰なの?私はあなたのことなんて知らないわよ?」


ペディアは一応挨拶を返しつつ警戒して聞くと、少年は少し寂しそうな表情をしつつ答えてくれた。

「うん。そうなるのも、無理はないと思うよ。僕は姉ちゃんのこと、全部知ってる。でも、僕の存在はみんな知らないから」

少年はそこまで言って、ベッドから出る。5~6歳ほどの低い身長だった。しかし、話し方が妙に大人びている気がして、益々ますます気になってしまった。

「ペディ姉、これから着替えて朝ごはん食べに行くんでしょ?僕は先にダイニングに行ってるから、着替えてきてね。僕のことが知りたいなら、ご飯を食べ終わった後にでも言うよ」

少年は扉を開けずにするりと部屋から出ていった。ペディアはその様子に驚きながら冷静になる。

「あの子、なんで私のこと…」

考えても分からない。パジャマから外着に着替えてダイニングに行く。少年は僅かに引いた椅子に座っている。ペディアの隣の席だった。

「お父さん、おはよう。今日は雨が降りそうな天気だね」

父はペディアの正面に座っているのだが、ぼーっとしているのか返事がなかった。ペディアがもう一度声をかけると、ハッと我に返って苦笑いを浮かべた。

「あ、ああ。そうだな。ペディア、今日はなにか予定があるのか?」

「うーん。これと言って、特に予定はないけど、ギルドに顔を出して依頼でも受けに行こうかなって思ってるよ」

ペディアの住むこの世界は、剣と魔法の世界。魔法が発展し、生きるために全ての者が戦う世界である。ペディアは水属性の魔法を得意とし、その他に光属性の魔法も扱うことができる。
父も同じく、水魔法を得意とするが、ペディアは父の扱う魔法を見たことがない。それどころか、物心ついた時から父の戦う様子を見たことがないのだ。それが何故かは教えてくれないため、疑問に残っている。

「ペディア。…予定がないなら、少し俺に付き合ってくれるか?俺も準備があるから、昼になったら声をかける」

「……?うん、分かった」

いつもの父らしかぬ言動に疑問を覚えながら返事をする。まさかこれをきっかけに、真実を知ることになるとは知らずに……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...