記憶のカケラ

ストーリー

父と見知らぬ人

ペディアとアガーべが使い魔契約を結んだ直後、扉をノックする音が聞こえた。それと同時に少し焦ったような父の声が扉越しに聞こえてくる。

「ペディア、ちょっと庭に来てくれ」

父はそれだけ告げると、扉付近から離れていく。多分、庭の方へ行くのだろう。ペディアは焦り気味の父に疑問符を浮かべながらアガーべを見、部屋を出た。

「お父さん、どうし……」

家の裏にある庭に出ながら、父の背中に話しかけようとして、息が詰まった。違う、この人は私のお父さんじゃない。誰……？！

どす黒い雰囲気を醸し出しす彼に恐怖心を抱いた。そのまま動けずにいると、彼はゆっくりとこちらを振り向く。

ペディアの知る父はそこにはいなかった。父の顔をした別のなにか…。彼は歪いびつに顔を歪ませながら薄気味悪い笑顔を作っている。

「……だっ、だれ？！」

恐怖心から声を絞り出すように叫ぶと、おぞましい笑いを漏らしながら話し始めた。父ではなく、別の誰かの声だった。

「ぐははは…、ようやく戻ってこれたわい。あの邪魔者のせいで、10年もかかってしまったわ…!!お前が最後だろう。楽にあの世に逝いかせt……!!｣

彼は薄気味悪い笑顔から苦悶の表情に変わった。小声で呟く声も聞こえてくる。

｢まだ、生き残って居たのか…！すぐにお前も殺してやるから、首洗って待っていろ…!!ぐっ…」

父と彼が身体の中で、葛藤しているのか、時折父の声も聞こえてくる。恐怖で動けないペディアは、その場で茫然ぼうぜんと眺めることしか出来なかった。

そんな中、2つの声が同時に聞こえた。

「ペディア!!逃げろ！」

「ペディ姉！」

ハッと我に返ったが、遅かった。彼が私を殴ったのだろう、父の申し訳なさそうな謝罪の声を最後に、私の意識は途絶えた。