夜空の天ちゃむ

牙夢乃時雨

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森の病院

裏取引

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「天ちゃむ、取引をしよう。お前が人間との架け橋になったら俺と結婚しろ。お前よく見たら顔すごい可愛いじゃん、それに、ホロンの記憶を見てもお前はいい奴だ。俺の妻にもってこいの人材だ。巨人族には年齢制限なんてないしな。」

 いきなりそんなことを言われたって決められない。だけど、それよりも今は病院、快麻や私がけがをしたときに手当してくれる人がいないことの方が重大だ。

「わかった。その取引飲むよ、でも快麻と私を全力で助けてね。」

 口頭での約束は証拠がないと確かめようがない、これは私の勝ちだ。冒険が終わった後は連絡をしないで自然消滅を狙おう。

「はーい。取引を飲むってことで、音声とらせていただきました~。」

 筋金はポケットからボイスレコーダーを取り、私に見せてきた。音声が取ってあるかは、私にはわからないが、とられている場合私は圧倒的に不利となる。

「だ、大丈夫だよ。そんな脅しには乗らないし、私何も嘘行ってないからね。絶対あなたと結婚するから。」

 筋金は笑顔になった。

「わかったよ、全力で二人の旅をバックアップさせてもらうよ。安心して旅をしな。あと、危険な場所に行こうとしたら、俺のボーを行かせるか、危険忠告だけでもしてあげるよ。」

 とてもありがたいことだが、快麻が私のことを好きなのは知っているし、頑張り屋で不器用ながら私のことを考えて行動してくれるのはとても嬉しいしそんな快麻が私は好きだ。でも、そんな快麻が危険にあうということは絶対に避けたい。この裏取引は快麻には内緒にしておいて、時が来たら話そうと思った。

「ありがとうございます...今日はこの料理をいただいて寝ますね。」

 私はテーブルにある美味しそうな料理をたべた。味は美味しかったが、感動はしなかった。思ったことは快麻への申し訳のなさ、もやもやだ。快麻が魚をたべてゾンビウイルスに侵された、これは快麻が危なっかしい証拠であり、普段から見ている私でも、安心安全だとは言い切れない。

「箸が止まってるぞ、今日はもう遅い寝ろ。お前の寝室は二階の201号室だ。安心しろ、誰も入れないように見張りをつけておいた、出るのは自由だ。見張りが邪魔だったら行ってくれ。」

 配慮も上手だし、筋金がいい男なのは話していてわかる。こんなかっこいい婚約者だったら皆好きだ。ああ、だめだ、今日はこんなことばかり考えてしまう。もう忘れて寝よう。

 筋金とボーにお別れを伝えると階段を上がり指定された201号室へ向かう。

 案内され入ると、見張りと思われる人は部屋から出ていった。

 部屋の中は木目調で綺麗なつくりだ、一人部屋だがダブルベッドで暖房がついていて温度もちょうどいいし、お風呂がついている。ずっとここに住みたいくらいだ。 

 お風呂に入って今日はすぐに寝た。




 目が覚めると目の前には血だらけの筋金が倒れていた。
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