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どうやって?
しおりを挟む「私も……一緒に行かせて…!」
「……………」
あかりは少しだけ眉をひそめ、私を見た。
「一緒にと言ったって……私はあなたを守ってあげられない。下手すれば、死ぬことになる」
あかりは淡々と続ける。
「あなたの勝手な行動で貴重な命を落とさないで。現に誰か危険な状態にあるかもしれない。……――あなたの戯れ言に付き合ってる暇はないの」
「!!」
「……もういい?…それじゃあ、私は行くから。ついてこないでね。精々自分の身を守っておいて」
あかりはそっとそう言うと、静かに教室を出ていった。
………正直、心に刺さった。
何か私も役に立ちたくて…こんな私を、間接的にでも勇気づけて貰ったあかりを、少しでも助けたくて言ったのに……。
しばらく、放心状態で動けなかった。
それから少しして、四組の方から悲鳴と机の倒れる音がした。
………ダメだ。
行かなきゃ…!
だって、おかしい…!勝手な行動をしてるのは………
「――――…ハッ…ハッ……」
「…だ、大丈……」
「………このくらい、何ともないよ」
「………で、でも、手が…」
「――――あかりっ…!」
「?!」
夢中になって四組に飛び込む。
犯人であろうがたいのいい大男は、うつ伏せになって倒れている。
四組の皆は体育座りで、数人がガムテープで手を縛られていた。
そしてあかりの左腕からは……ポタポタと血が滴り落ちている。
「……!あかり、怪我してるよ……!!」
「…このくらい、なんてことない」
「そんな…!」
「…四組の皆、コイツの上に全員で乗っかって押さえつけておいて。もし動こうとしても胴体を完全に押さえておけば大丈夫」
そう言いながらあかりは、少しフラつきながら廊下へ出ていった。
「ちょ、ちょっとあかり!」
あかりを追いかけて廊下へ出る。
「あかり、腕……!血が出てるよ!?ねえってば!」
「………なんでついてきたの?」
「…!」
あかりはいつもの表情とは違って、目には怒りが込められているように冷たく、こわい表情をしていた。
今まで……見たことのない表情。
「だ、だって、一人じゃ心配だったから…」
「…私はいったハズだよね。最悪死ぬことになるって、だから来ないでって……」
あかりはぶるぶると小さく震えている。
「……で、でもっ!命を落としかねないのは…あかりじゃない!それは…それは変わらないことでしょ?!貴重な命って言うんなら、一人だけカッコつけないでよ……!!」
震えた声で、一思いに言い切った。
こんなにハッキリ人に反発したのは、初めてのことだと思う。
いつも…人に任せて、人に合わせて。
頼まれたら断れない性格で、その上――
『……ねえ。あいつ何なんだろね?ブスのクセに上野くんと仲良くしてさ』
『え…』
『それな。マジ思ってた。』
『じゃ、あいつ明日からハブね』
『……あ、利奈ちゃん、おはよう。昨日言ってた係のことなんだけど…』
『…あ、…えっと………』
『――ねーぇ、原田ちゃん。そういうのよくないと思うよ?』
『……え?』
『利奈に仕事押し付けるつもりなんでしょ。利奈にも迷惑かけるし、うちらもそういうの気分悪いからさ~』
『い、いや、そう言うんじゃないよ!ただ、二人に任された係のことだから、ちゃんと分担したくて…』
『は?何?口答えすんの?』
『つーか、利奈もそう思うでしょ?』
『えっ……』
『………私……は…………』
『………………うん。そう……思う…』
…ああ、そっか。
皆一緒だったよ。
友達でいたかったのは、友達と思いたかったのは、最初から一人だけ。最初から、私だけ。
皆にとっても、――――雪にとっても…私はただの「都合のいい人間」なんだ。
一人が嫌だったのは、本当は一番必要とされたかったのは……私だった。
「ひっ、人のことは言えないクセに…!勝手に説教垂れないでよッ!!」
「………」
あかりは黙り込んでいる。
…何を八つ当たりしてるんだろう。
役に立ちたくてとか思って、自分を守ってばかりで。
そう思うことで私は、私が正義だって、「いい子」だって思いたいんだ。
……最悪な人間だ。
「…私はあなたとは違う」
「……違わないでしょ」
「違うの」
「違わないでしょ!!例え運動能力が違くたって、判断力が違くたって、顔が、身長が、体重が、性格が違ってもおんなじ人間じゃない!!なんで、なんで一人だけ特別でいようとするの!?なんで……なんで!!」
…違う。そんなことが言いたいんじゃない。
私は、私は……
「…私はあなた達とは違って……死んでもいい人間だから」
「……………え?」
止まらなかった頭と八つ当たりのオンパレードは、あかりの意外な一言で簡単に止まった。
「……私幼い頃に、人を殺したの」
開いた口は、塞がらない。
「だから私はあなた達とは違う。汚れてない。穢れてない。…穢れて醜くなるのは一人でいい。死ぬリスクを追うのは…私だけでいい」
…
……
何て声をかければいいのか分からず、過ぎていくのは時間ばかりだった。
声は喉の奥に詰め込まれて、出てこない。
喋ろうとしても口がぱくぱく動くだけ。
「…そう言うことだから。じゃあね」
……駄目!
「待って、あかり!!」
走り去ろうとするあかりの手を掴み、自分でも考えていない言葉が反射的に出た。
「汚れていいのが自分だけなんて…リスクを犯すのが自分だけだなんてそんなの駄目だよ…っ!あかりが人を殺したなんて…そんなの今は関係ない!!」
あかりは目を見開いた。
「あかりが何らかの理由で人を殺してしまっていて、だから死んでもいいなんて逃げてるだけじゃん!死ぬ意味なんて無い!!生きて罪を償えばいいじゃんッ!!」
「……綺麗事ばっか言って」
あかりの雰囲気が一変した。
空気が張りつめられ重く、冷たく静まり返る。
「あなた達に、分かるわけ無いでしょう!人を殺すって事が。優しい両親に育てられて暖かい家でぬくぬく平和に育ってきたあなた達に、母親を殺した私の気持ちなんて!!」
あかりは息を荒げ叫ぶようにそう言った。
普段のあかりとは少しもかすらないように変貌していた。
「…お母さん……を…?」
「ッ……!」
あかりはバッと下を向き唇を噛んだ。
…お母さんを、殺す?
優しくて、朝起こしてくれて、おいしいご飯を作ってくれて、すごい大切なお母さんを……
…どうして殺したの?
なんで?
どうやって?
私には到底理解できない問題を前に、疑問が頭をグシャグシャにかき混ぜた。
そう。意味が分からない。
けど……
「……軽蔑した?」
「…………」
「…もう一つ言っておく。私はお母さんを殺したことに対しては……何の後悔もしていないから」
「……――でも!!」
あかりは肩を揺らし少しだけビクッ!と跳ねた。
「だからって一人で悩まないでよ!一人で抱えないでよ!!それで一人で死んじゃったらどうするの?!私が味方でいるよ。私が、あかりの友達でいるよ、友達にならせてよ!」
…ああもう。自分で何言ってんのか分かんないや。
「――――私があかりの、お母さんになるよ…」
あかりは震わせていた体を止めた。
「……何、言ってるの」
でもその声色は…呆れて疲れたような中に、温もりのある声だった。
「……私のお母さんになんてなれるわけ…ないじゃない。私の、…わっ私のお母さんはっ……一人…ッ…だけなんだから………っ…!」
あかりは糸が切れたように、床に崩れ落ちてしまった。
……ああ、そっか。
………羨ましかったんだ。
よく分からないけど…きっとあかりは、お母さんに愛されていなかったんだろうな。
それで何かあって……
理由もなく愛されて、そのくせに死んでもいいみたいなことを言っていたから、あかりは怒っていたんだ。
………あかりはただ、お母さんに……
「うっ…ふっ………うぅ……」
あかりは泣いている。
ボロボロと次から次へと涙を溢し、廊下に水滴をつくっていく。
「……大丈夫。大丈夫だよ…これからは、もう………」
「……ありがとう。死んでもいいとか言うのは…やめておくよ」
あかりは腫れた目を擦りながら言った。
「…うん。ありがとうは私こそだよ。私あかりにすごく、救われたんだ…」
「…そうなの?覚えはないけど…」
「それでも私は救われたんだから、いいの!」
「…そっか。………でも、私」
あかりは、私の目をハッキリと見て言った。
「それでも私……行くよ。罪滅ぼしって事にはならないかもしれないし、結局意味はないかもしれないけど………皆を、私の手で救えるなら……救いたい」
「……」
「…うん。あかりならそう言うと…思ってたよ」
私はもう、あかりを止めなかった。
一緒に行こうとも言わなかった。
ただ…一つだけ約束をした。
「――――必ず生きて、帰ってきてね。」
完
あとがき
皆様こんばんは(こんにちは)、セツナです。
今作の「学校閉鎖」、いかがでしたでしょうか。
自分的には漫画で言う「読み切り」ってやつにしたかったんですが、上手く話がまとまらなかったような気がします……
読みにくかったら大変申し訳ないです。
しかしながら自分的にはまあまあ満足してます。
なんかこう……「少女(学生)が大きい男と闘う」みたいな感じのが書きたくて作ったものなので、そこそこイメージ通りに出来たのかな~なんて思っています。
結局これどうなったん?っていう想像はお任せいたします。
こんな長ったらしい文章をお読みくださり、誠にありがとうございました。
ちなみにこの次はあかりが母親を殺す話を書いて、そこで完全終了という形にしたいなと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
最後になりまた言うことになりますが、本当にありがとうございました。
感想、ぜひぜひお願い致します。
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