曲がった鼻と真っすぐな日々 ― 鼻中隔湾曲症手術記

Akkami

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第23話 術後8か月 ~鼻の違和感はやや緩和~

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術後8か月。前回の通院から気づけば3か月が経っていた。カレンダーに「鼻点検日」と書いておいたのに、仕事と猫の毛づくろい(なぜ私の黒いTシャツ限定)に追われ、あっという間に当日である。

この3か月で、鼻の違和感と痛みは、たぶん、きっと、わりと、良くなってきた……気がする。朝、洗面台の前で「今日の鼻、どう?」と自分に聞くと、以前は「圧迫感80%、やる気20%」だったのが、最近は「圧迫感40%、やる気60%」くらいに改善。鼻がようやく社会復帰を考え始めた、そんな雰囲気だ。

ただ、人に「調子どう?」と聞かれると、そこで初めて鼻を強く意識してしまい、急に人中(じんちゅう)(鼻と唇の間の縦スジ)にムズムズした違和感が現れる。あれは“気づいたら出る”系のやつだ。さらに鼻の表面には、薄~い麻痺がまだ住んでいる。住民税を払ってるのかは不明。氷で冷やした缶コーヒーが当たっても「冷たい」が半拍遅れて届くし、くしゃみ前の“来るぞ来るぞ…”の予兆が、映画の予告編くらい長い。

病院。今回は待合のテレビで健康体操が流れていたが、鼻のストレッチは紹介されない。そりゃそうだ。呼ばれて診察室へ。
主治医「調子は?」
私「なんか、だいぶ良い気がします。気のせいの可能性も高いですが」
主治医「良いことです。レーザーメスで細い神経をいじってますから、回復はもう少しかかります」
毎度の説明。分かってはいる。脳内の私がホワイトボードに“神経=細いLANケーブル、再配線中”と図解する。

検査の後、先生は淡々と続ける。
主治医「前回と比べて通気は安定。麻痺は薄くなってます。お薬、もう3か月続けましょう」
私「神経ビタミン、延長戦ですね」
主治医「そう。焦らず“鼻のリハビリ”を」

帰り道、私は独自の“鼻リハ”を考案。
・マスクの内側でそっと“鼻体操”:眉を上げ下げして人中に優しい刺激(周囲からは表情豊かな人に見える)。
・香りで反応チェック:コーヒー→OK、カレー→OK、猫のカリカリ→微妙。嗅覚は社会復帰8割。
・歯磨きは電動の振動が鼻へ響くため、鼻に「今から行くよ」と声かけしてからスイッチオン。マインドフル歯磨き。

ふと、術前の自分を思い出す。夜、いびきアプリに“怪獣低音”を記録され、朝は喉カラカラ。いまは録音が鳥のさえずりレベルに落ち着いた(たぶん近所の本物だが)。鼻洗浄の回数も「義務」から「習慣」に格下げされ、綿球はベンチ入りから控えに。成績は地味に右肩上がり、控え選手の活躍は減っていく。

それでも、完璧ではない。季節の変わり目は鼻がすぐ会議を招集し、「本日は違和感議題を審議します」とザワつく。私は議長として深呼吸し、加湿器という与党の力で可決・散会。薬は財政出動、睡眠はインフラ、そして笑いは追加予算。

家に帰ると猫が鼻先をクンクン。「点検お疲れさま」と言っている(気がする)。鏡の前で鼻をそっと触り、半拍遅れの感覚を待つ。来た。少し遅れても、ちゃんと来る。それで十分だ。

処方箋を机に置き、手帳に次の通院日を書き込む。
—もう3か月、神経回復の旅は続く。

まだまだ続くね。
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