曲がった鼻と真っすぐな日々 ― 鼻中隔湾曲症手術記

Akkami

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その24話 術後1年 ~鼻中隔に穴!?~

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術後から一年が経ちました。
痛みや違和感は、あの最盛期を10とすると今は2.5。鼻の平和指数は上がったのに、右鼻の内側だけは妙にイベントが多い。2週間おきに小さなおでき(以下、オデ氏)が「出社→退社→また出社」と律儀に勤怠を刻むのです。触れるとちょい痛。術前にはいなかった新入社員、どこから紛れ込んだ。

検診で主治医に報告。
主治医「稀だけど、鼻中隔に小さな穴が開く後遺症があります」
私「稀ガチャ、当たりました?」
主治医「ピンホール程度。いわば“医療系鼻ピアス”ですね」
私「流行に乗った覚えはないのですが……」

自覚は薄いのに、この極小トンネルが曲者。空気の流れがいつもより“変わりやすい”せいで、粘膜の一部に負担が集中→オデ氏が短期出向、の図。右鼻だけ社内組織図が複雑らしい。人事異動はそこじゃない。

私「塞がる見込みは?」
主治医「一年だと自然閉鎖は難しめ。うまく付き合っていきましょう」
なるほど、いきなり撤収はない。となれば、こちらは“共存の作法”を磨くほかない。

当面の運用ルール(ドライで実務的に):
・触らない勇気。綿棒での“人事介入”は禁止。つい押したくなるボタンほど危険。
・鼻洗浄は“そっと”。勢いは正義じゃない。優しさがKPI。
・刺激物はコントロール。七味のワンショットがプロジェクトを炎上させる日がある。
・運動時は呼吸を観察。違和感が出たらテンポを落とす。鼻もチームメンバー。
・気になるサインが続いたら受診。独断の“現場判断”は後悔とセット。

生活の気づきも増えた。ランニングで息が上がると、右鼻だけ空港化して「スー……」と控えめな環境音。家族曰く「今日の鼻は向かい風」。季節や体調で出勤表が変わるのが面白い(いや、面白くはない)。カレンダーに“オデ氏来訪”を記録しはじめたら、なんとなく法則も見えてきた。会議前に緊張していると、なぜか勤怠が良い。空気を読んでるのか、読めてないのか。

心理面では、「完全に終わっていない」というモヤが残る一方、扱い方が分かってきた安心感もある。違和感の波が来たら「はい、社内イベント開始」と受け止め、深呼吸→作業ペース調整→そっと放置。すると波は引く。昔は“ゼロにしたい”ともがいて疲れていたけれど、今は“コントロール下に置く”方が精神衛生に良い。RPGでいえば、会心の一撃よりも「持続回復をこまめに回す」戦い方だ。

主治医のまとめは要点だけ。
「小さい穴、命に関わらず。過度にいじらない。変化が続くときは来院」
派手な必殺技はないけれど、ルール運用と記録、それに“触らない”の徹底が効く。医療の現場って、結局プロジェクト管理なんだな、と妙に納得する私。ガントチャートの最上段に「触らない」を太字で置きたい。

というわけで――
“稀”を引き当てた一年後の私は、鼻ピアス(非おしゃれ)持ちのまま日常を快走中。完全エンディングは未定だけれど、エピローグ前の平穏は延長されている。物語は続く。けれど、続くなら続くで、こちらも長期運用の装備でいきましょう。

まだまだ続くね。こちらは“触らぬ神に崇りなし”モードで、粛々と。
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