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第25話 鼻中隔湾曲症 ~手術した感想・完結編~
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手術した感想、いよいよ総まとめです。
そもそも私がメス(正確にはレーザーメスと吸引とガーゼ山脈)に向き合った原因は、軽度の睡眠時無呼吸症候群と診断されたこと。アプリの「いびきスコア」が毎晩50前後を叩き出し、喉は毎朝、干からびた砂漠。枕元で鳴るのはアラームではなく「ガァァァ……」という新種の環境音。妻いわく「Amazonで“怪獣ホワイトノイズ”買った覚えないけど?」。買ってません、標準装備です。
さて、肝心のその後。厳密な計器での再測定はまだですが、いびきスコアは30前半まで低下。アプリのグラフも、かつての黒い山脈から、今は穏やかな丘陵地帯へ。エベレストから高尾山へ。登山靴からスニーカーになった感覚。完全にゼロではないにしても、「夜間ゴジラ上映会」は、季節限定ミニシアターへ格下げされました。ありがとう、鼻。ありがとう、医療。
そして、私の長年の同居人——“慢性的鼻づまり氏”。彼は突然、退去しました。術後一度も本格的に詰まっていない。朝、鼻で空気がスッと通るだけで「人間って吸気でこんなに感動できるんだ」と思う。鼻で息を吸うだけで、無駄に達成感。階段でゼーゼー言わない、ラーメンの湯気を真正面から迎え撃てる、マスクの内側がサウナにならない。小さなことが全部、生活品質(QOL)の大事件でした。
もちろん、良いことばかりではありません。術後しばらくは、ガーゼ抜きという人生イベントがありましたし、鼻内部の“工事現場”の片付けも必要でした。「これ痛いんだよね~」と笑顔で宣告する医療スタッフの爽やかさに、私は人生の覚悟リストへ「笑顔の裏はだいたい強い」を追記。鼻洗浄のボトルとは親友になり、綿球は鼻内VIP席の常連に。鼻セレブは、我が家のインフラ。ここに投資対効果を認め、鼻関連のポートフォリオは強気継続でございます。
それでも、総合収支は圧倒的プラス。術後すぐに「これほんとに自分の鼻?」と思うほど吸えるようになった瞬間は、未だに思い出してニヤけます。空気がもったいなくて深呼吸を多めにしてしまう副作用つき。呼吸が静かになると、なぜか思考も静かになる。夜中の覚醒が減り、朝の目覚めが「よいさよいさ」から「おはよう」へ。鼻という物理的チャンネルが改善すると、心のチャンネルもノイズが減るんですね。人体、奥深い。
では、「手術するべきか?」と悩む方へ。私は医師でも広告塔でもありませんが、ひとりの生活者として言えるのは次の三つ。
「困りごと」が明確なら、医学的に“該当”か一度きちんと診てもらう価値は大きい。画像やスコープで可視化すると、納得感が違う。
術後ケアは“面倒”ではなく“投資”。鼻洗浄、加湿、ワセリン、少しの我慢。この4つで回復スピードは段違い。
期待値の設定は“ほどよく現実的”に。いびきが完全消滅するとは限らない。でも、「うるさい山脈」が「静かな丘」になるだけでも、隣で眠る人の人生が変わる。自分の朝も変わる。
最後に、手術前の私にひと言送るなら——
「怖いのは“手術”じゃなく、“慣れた不便をいつまでも続けること”だ」。
鼻は顔のど真ん中にあるくせに、普段は存在を忘れられがち。だからこそ、その働きが静かに正常化するだけで、世界が一つクリアに見える。喉の奥まで冷たい空気が流れ、胸の中でふっと灯がつく。そんな当たり前を、毎朝やり直せるようになりました。
この連載をここまで読んでくれたあなたの鼻にも、どうか追い風を。もし医師から一度でも手術を提案され、条件が合うなら、前向きに検討してみてください。準備とケアをちゃんとやれば、得られる実利は大きい。
というわけで——
“Let’s improve the Quality of Life!”
今日も鼻から、いい空気、吸い込もう。
そもそも私がメス(正確にはレーザーメスと吸引とガーゼ山脈)に向き合った原因は、軽度の睡眠時無呼吸症候群と診断されたこと。アプリの「いびきスコア」が毎晩50前後を叩き出し、喉は毎朝、干からびた砂漠。枕元で鳴るのはアラームではなく「ガァァァ……」という新種の環境音。妻いわく「Amazonで“怪獣ホワイトノイズ”買った覚えないけど?」。買ってません、標準装備です。
さて、肝心のその後。厳密な計器での再測定はまだですが、いびきスコアは30前半まで低下。アプリのグラフも、かつての黒い山脈から、今は穏やかな丘陵地帯へ。エベレストから高尾山へ。登山靴からスニーカーになった感覚。完全にゼロではないにしても、「夜間ゴジラ上映会」は、季節限定ミニシアターへ格下げされました。ありがとう、鼻。ありがとう、医療。
そして、私の長年の同居人——“慢性的鼻づまり氏”。彼は突然、退去しました。術後一度も本格的に詰まっていない。朝、鼻で空気がスッと通るだけで「人間って吸気でこんなに感動できるんだ」と思う。鼻で息を吸うだけで、無駄に達成感。階段でゼーゼー言わない、ラーメンの湯気を真正面から迎え撃てる、マスクの内側がサウナにならない。小さなことが全部、生活品質(QOL)の大事件でした。
もちろん、良いことばかりではありません。術後しばらくは、ガーゼ抜きという人生イベントがありましたし、鼻内部の“工事現場”の片付けも必要でした。「これ痛いんだよね~」と笑顔で宣告する医療スタッフの爽やかさに、私は人生の覚悟リストへ「笑顔の裏はだいたい強い」を追記。鼻洗浄のボトルとは親友になり、綿球は鼻内VIP席の常連に。鼻セレブは、我が家のインフラ。ここに投資対効果を認め、鼻関連のポートフォリオは強気継続でございます。
それでも、総合収支は圧倒的プラス。術後すぐに「これほんとに自分の鼻?」と思うほど吸えるようになった瞬間は、未だに思い出してニヤけます。空気がもったいなくて深呼吸を多めにしてしまう副作用つき。呼吸が静かになると、なぜか思考も静かになる。夜中の覚醒が減り、朝の目覚めが「よいさよいさ」から「おはよう」へ。鼻という物理的チャンネルが改善すると、心のチャンネルもノイズが減るんですね。人体、奥深い。
では、「手術するべきか?」と悩む方へ。私は医師でも広告塔でもありませんが、ひとりの生活者として言えるのは次の三つ。
「困りごと」が明確なら、医学的に“該当”か一度きちんと診てもらう価値は大きい。画像やスコープで可視化すると、納得感が違う。
術後ケアは“面倒”ではなく“投資”。鼻洗浄、加湿、ワセリン、少しの我慢。この4つで回復スピードは段違い。
期待値の設定は“ほどよく現実的”に。いびきが完全消滅するとは限らない。でも、「うるさい山脈」が「静かな丘」になるだけでも、隣で眠る人の人生が変わる。自分の朝も変わる。
最後に、手術前の私にひと言送るなら——
「怖いのは“手術”じゃなく、“慣れた不便をいつまでも続けること”だ」。
鼻は顔のど真ん中にあるくせに、普段は存在を忘れられがち。だからこそ、その働きが静かに正常化するだけで、世界が一つクリアに見える。喉の奥まで冷たい空気が流れ、胸の中でふっと灯がつく。そんな当たり前を、毎朝やり直せるようになりました。
この連載をここまで読んでくれたあなたの鼻にも、どうか追い風を。もし医師から一度でも手術を提案され、条件が合うなら、前向きに検討してみてください。準備とケアをちゃんとやれば、得られる実利は大きい。
というわけで——
“Let’s improve the Quality of Life!”
今日も鼻から、いい空気、吸い込もう。
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