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第20話
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そんな回想を並べていたあの日から数日が経った。今目の前に広がる光景に絶句する僕は『好奇心』に支配されていた。
とんでもない暑さから逃れるように自分自身考える事を放棄し、身体が勝手に冷気を求めて脚を動かす。行き着いたその先で目に入ったその光景。それは——
「なっ…何これ…」
眼前に佇む数々の物体を凌駕するかの如く異様な存在感を放つそれに生唾を呑む。そう、そこにあったものは、紛れもない。かつてあの日、斗真の手に握られた袋から覗いていたアレに酷似したものだった。それすなわち、超有名会社の販売するカップ麺『アルティメットシリーズ』のパッケージに『濃厚のその先へ、豚骨醤油アルティメット』と書かれてあった。置かれた棚には「新発売」の文字が。
「豚骨…醤油…だと⁉︎」
動揺を隠しきれない自称太りやすい体質の八雲日向こと僕は、この商品を購入するか否か首を傾げていた。
いや、初心に戻って考えてみよう。この商品は確かに高カロリーだ、全シリーズを通して他社よりも二、三倍のカロリーがある。故にこれまで避けてきたという事実、運動不足と言えど体重の変動とは僕にとってみれば一時的なものである。即ち、だ。
「一回くらい食べても大丈夫なんじゃないか⁉︎」という思考が現れた。無論、それに抗う事は出来なかったようで気がつけば豚骨醤油アルティメットと週刊誌を持ってレジに並んでいた訳だが。
しかし何故だろうか、コンビニで商品単体をレジに持っていく事を何故躊躇うのだろうか。分からないが、商品を二つ以上持たないと会計を済ませたくないと考えるのである。まったくもって意味不明である。きっと商品一つだけだと店員からめんどくさがられると勝手な解釈で思い込んでいる精神だと思うのだが。
「か…買ってしまった…」
一日三食が優香の手により義務付けられた八雲家ではこれを胃に収める機会が夜食しか存在していない。夕方にアルティメットシリーズは胃がもたないので、3時のおやつという訳にもいかないだろう。
その日の夕暮れ。夏の伸びた陽に包まれた部屋はまだ電気を付ける必要があまり無く、自然の明かりとした夕日を使い、豚骨醤油と共に購入した週刊誌を読んでいた。
連載当初から読んではいるものの、何故人気なのか分からない作品が多々ある事に自分の好みがズレているのか、また自分が流行を嫌っているだけなのかという疑問を一つ並べる。一昔前に比べれば読むものが少なくなったと感じるこの本も、そろそろ卒業すべきなのかもしれない。
ふと、スマートフォン震えている事に気づいた。画面に表示された桜御影の名前の下に書かれた文面を読む事で顔が歪むのを痛感した。
「ラーメン美味しかった?」
なんで知ってるんだよ、どこから見てたんだよ、怖い怖い怖い…いや、見つけたなら声を掛けてくれ。なんで斗真といい御影さんといい見てるだけなんだよ。なんで常時監視されてるみたいになってんだこれ。
脳内で行われた高速処理の末、とりあえず今は既読を付けないでおこうという結論に至る。夕飯を終えてから考えよう、この件について——
結局、メッセージは適当に終結された。何故外を歩くだけで黒歴史が増えていくのかという疑問を抱えながらすする豚骨醤油アルティメットはとんでもない量の油で構成されていた。これはカップ麺のを超えている。そう感じるには充分すぎた。まずチャーシューが7枚も入っていた。さらに緑がとんでもなく少ない。だが、それにより引き立てられた味は絶品で本当にインスタント食品かと疑いたくなるのだ。
そして次の日、案の定体重は増えた。
とんでもない暑さから逃れるように自分自身考える事を放棄し、身体が勝手に冷気を求めて脚を動かす。行き着いたその先で目に入ったその光景。それは——
「なっ…何これ…」
眼前に佇む数々の物体を凌駕するかの如く異様な存在感を放つそれに生唾を呑む。そう、そこにあったものは、紛れもない。かつてあの日、斗真の手に握られた袋から覗いていたアレに酷似したものだった。それすなわち、超有名会社の販売するカップ麺『アルティメットシリーズ』のパッケージに『濃厚のその先へ、豚骨醤油アルティメット』と書かれてあった。置かれた棚には「新発売」の文字が。
「豚骨…醤油…だと⁉︎」
動揺を隠しきれない自称太りやすい体質の八雲日向こと僕は、この商品を購入するか否か首を傾げていた。
いや、初心に戻って考えてみよう。この商品は確かに高カロリーだ、全シリーズを通して他社よりも二、三倍のカロリーがある。故にこれまで避けてきたという事実、運動不足と言えど体重の変動とは僕にとってみれば一時的なものである。即ち、だ。
「一回くらい食べても大丈夫なんじゃないか⁉︎」という思考が現れた。無論、それに抗う事は出来なかったようで気がつけば豚骨醤油アルティメットと週刊誌を持ってレジに並んでいた訳だが。
しかし何故だろうか、コンビニで商品単体をレジに持っていく事を何故躊躇うのだろうか。分からないが、商品を二つ以上持たないと会計を済ませたくないと考えるのである。まったくもって意味不明である。きっと商品一つだけだと店員からめんどくさがられると勝手な解釈で思い込んでいる精神だと思うのだが。
「か…買ってしまった…」
一日三食が優香の手により義務付けられた八雲家ではこれを胃に収める機会が夜食しか存在していない。夕方にアルティメットシリーズは胃がもたないので、3時のおやつという訳にもいかないだろう。
その日の夕暮れ。夏の伸びた陽に包まれた部屋はまだ電気を付ける必要があまり無く、自然の明かりとした夕日を使い、豚骨醤油と共に購入した週刊誌を読んでいた。
連載当初から読んではいるものの、何故人気なのか分からない作品が多々ある事に自分の好みがズレているのか、また自分が流行を嫌っているだけなのかという疑問を一つ並べる。一昔前に比べれば読むものが少なくなったと感じるこの本も、そろそろ卒業すべきなのかもしれない。
ふと、スマートフォン震えている事に気づいた。画面に表示された桜御影の名前の下に書かれた文面を読む事で顔が歪むのを痛感した。
「ラーメン美味しかった?」
なんで知ってるんだよ、どこから見てたんだよ、怖い怖い怖い…いや、見つけたなら声を掛けてくれ。なんで斗真といい御影さんといい見てるだけなんだよ。なんで常時監視されてるみたいになってんだこれ。
脳内で行われた高速処理の末、とりあえず今は既読を付けないでおこうという結論に至る。夕飯を終えてから考えよう、この件について——
結局、メッセージは適当に終結された。何故外を歩くだけで黒歴史が増えていくのかという疑問を抱えながらすする豚骨醤油アルティメットはとんでもない量の油で構成されていた。これはカップ麺のを超えている。そう感じるには充分すぎた。まずチャーシューが7枚も入っていた。さらに緑がとんでもなく少ない。だが、それにより引き立てられた味は絶品で本当にインスタント食品かと疑いたくなるのだ。
そして次の日、案の定体重は増えた。
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