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第29話
しおりを挟む結局この日は特に何をするでもなく宿に到着したのだった。しかしなんかすごいなここ。施設が充実してなさすぎる。修学旅行という行事において、廃れたゲーセン的なものだとか屋内プールだとかは中学生には全く縁もゆかりもないものだ。それが何一つないので、最も適しているという事だろうか。
建物はこんなに綺麗なのになあ…
こんなに分かりやすい反比例の例は初めて見たよと意識の中で笑う。何が面白いんだ教えてくれ僕よ。
本日最も面白かったのは、斗真が一人で部屋を利用している事だった。物凄い寂しそうな顔しながら男一人が扉の向こうに消えていく様には、失礼だが笑いが止まらなかった。あんな顔初めて見たわ。
「ここ3人って広いね…」
「私寝相悪いけどこの部屋なら大丈夫だな」
続けて何か言うべきだろうか。と言うかその場のノリで同じ部屋に入ったが、これはかなり失念していたのではないだろうか。
「何してんの日向ちゃんトイレならあっちだぞ」
悩んでただけなのだが、そう捉えられたのだろうか。物凄い恥ずかしい。
「いや…そ、そんなじゃなくて…僕ほんとにこの部屋で良かったのかなって………」
荷物を足で部屋の隅に寄せ、疑問を問いかける。自分でもよく分からない動作にまた恥を感じた。
「別にいーんじゃないの?『友達』だし」
「友達…でいいんですか?だとしても男女同じ部屋っていうのも…」
俯いて呟くと、こちらに向かう足音が聞こえた。
「何言ってるの日向ちゃん。私はどっちかなんて気にしてないから日向ちゃんの好きな方でいればいいよ。私たちはその日向ちゃんを嫌いになったりは絶対しないから、ね?」
御影ちゃんの声はいつも通りの柔らかい感覚で突き刺さる。たったそれだけで、先程の設問が蛇足であると気付く。
「それなら…遠慮なく、『僕』で居させて貰います‼︎」
綺麗な笑顔とは程遠いだろうが、精一杯笑ったつもりだ。今までできていた亀裂のようなものはすべて自分の作ったものだったと、それが消えて初めて気付いたのだった。
「…さ、それじゃ、そろそろいこっか?」
「今日は歩き疲れたからね~身に染みるやつだよ絶対!」
こんないい話っぽい事をした後なのだが、僕は重大な事を忘れていたらしい。
「いやちょっと待って下さいッ…なんであんな話した後に温泉なんですか⁉︎」
「なんでって私らに聞かれても…決められた時間に入れって言われてたんだし…」
現、脱衣所。右も左も肌色に染められた世界にただ1人取り残され、顔の温度上昇だけを感じていた。
「何してんの早く脱げって!」
「うわぁぁぁぁやめてほんとお願いだから!紫苑さん今朝からなんでセクハラキャラで定着してるんですか⁉︎」
朝から胸を揉みしだかれ、そして今は制服が我が身から逃走したのだった。
この狭い空間で、嫌悪の目を向けられることに特化した僕は紫苑さんからのセクハラっぽいものを受け注目の的と化していた。
あとなんか御影ちゃんは鼻血垂らしてた。古典的な反応だこと。
結局運動部の猛攻に耐えきれず全身を無事に曝け出した訳なのだが、正直言って死にたいの一言である。紫苑さん曰く「このサイズ感がたまらない」らしいがなんの話かは聞かなかった。というか聞きたくなかった。
もう、女の子怖い。
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