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第2部
第12話 交差する歴史
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「あ~…マジどうでもいいんだけどさぁ、コイツそんなに強くなかった……し……」
眼前に立ち、戦闘の態勢を取るサマエルに目を向ける。先程まで封印下にあった男を解放し、味方に付けてやろうと考えていたのだが……
どう考えても、絵面がそういうアレじゃなかった。もしサマエルの語った通り、四百年の時が経過していたのなら、当然その服は風化して塵と化す条件を満たしている。
カッコつけてセリフを決めた直後、荒廃した街に吹いたひとつの風がサマエルの身に纏っていたそれを砂に変えた。なんとも残念だ。
「お前……最高にカッコ悪いぞ」
「最高に頼もしい助っ人になんて事抜かしやがる」
確かに全裸の男は気になるが、眼前のカマエル相手にこれほど嬉しい助っ人はない。なんとしてでもこの窮地を脱して、色々と聞かなければならないのだから。
「さて、やるか」
「……そうだな」
適当な意思疎通を図ったのち、眼前に佇むカマエルという標的を捉えて飛び出す。第二ラウンドの先手必勝だ。
しかし、視線を地に伏せたカマエルは防御の形態を取らず、微動だにしない。これは誘い込まれているのだろうか。何かしらのカウンターが来ると考えた方が得策か。
一発目の蹴りを打ち込んでみると、案の定見切られていた。こちらは攻撃を外してしまったが、まだもう一発がカマエルに迫る頃だろう。
「テメェなぁ……なにしてんだぁぁぁ‼︎」
振り向いた視界の先には、全裸で拳を振りかざすサマエル。そして、それに向かって叫ぶカマエル。
なんとなく、言葉の意味を理解できた気がする。だとしてもかなり己の思考も動くのが遅いなと感じた。
カマエルの蒼い長剣は矛先をサマエルに向けられていたが、標的は定まっていないらしい。防御を拡散させる技術か、又はただ情緒が不安定になっているだけか。
「マジでなに見せやがんだぁ‼︎マジ殺すぜってー殺すぞこの露出狂‼︎」
「うっせぇんだよ‼︎テメェがあんな事しなけりゃ俺の服無くなってねえんだわ‼︎」
怒りが全面に出過ぎていると言っても過言ではない現在のサマエル。彼は何を思ったか、拳を引っ込めて蹴りの攻撃にシフトした。
割と最低な戦いに加わりたくなかったのだろうか。己はその場で立ち尽くしてしまった。
「近づけんじゃねぇ‼︎マジ最底辺淫行野郎がぁ‼︎」
「うるっせぇつってんだろッ‼︎」
当然と言えばその通りだろうが、カマエルはその攻撃を避け続ける。一方全裸のサマエルは、天使という存在に対して優位に立っているという愉悦感に浸っている。そんな顔をしていた。
「あー‼︎もうマジ無理ぃ‼︎今回は見逃してやるけどマジでもう一回封印するからな‼︎あとお前服着ろ‼︎」
顔面を真っ赤に染めていたカマエルはその足を止め、こちらに向かって言葉を吐き捨てる。向こう側から吹っかけてきた闘いといえど、なんだかものすごく迷惑なことをした気がしてならなかった。
カマエルはそのまま翼を広げ、天目掛けて一直線に飛び上がる。雲を突き破って、姿を眩ませてしまった。
「さて、色々聞きたいことがあるんだが……今の俺はカマエルと同じこと思ってる」
「あ?てめぇ天使と同じ思考とかどんな神経してんだ」
「いや、人型のときは頼むから服着てくれ」
「アガリアレプト、忙しいところ悪いね」
「ルシファー様。そういえばサタナキアが探してた……っとぅおッ……サマエル……?」
今日も今日とて、見つからない歴史の断片を詮索し続ける日々。そんな最中に現れたのは、ルシファーともう一つの影。
何故か連れられたサマエルの姿が、そこにはあった。
「邪魔するぜ」
「ルシファー様、どういう事ですかコレ……」
「簡単に話すと、だな。俺はアガレスの力を使い、過去へ向かって悪魔学を解いた人物に接触を試みた。だが、それは俺らにとってのタブーらしい。俺のタブーへの接触を感知したカマエルにやられたって事だ」
サマエルは、注がれた珈琲を啜り終えて語った。一体何をタブーとして隠しているのかは分からないが、天使の存在と情報の在り処さえ分かれば、あとはこの能力でどうにかなるのではないだろうか。
なんて、考えていたのだが。ひとつ、引っかかる点がある。当然、この話を聞いていた二人の悪魔は同じことを考えているだろう。
ルシファーが、話を遮って質問をかける。
「待て、サマエル。お前、アガレスとどうやって会った?」
「あ?なんでだよ。その辺で捕まえて使っただけだぞ」
単調に語られるも、それを信じることは出来なかった。絶対にあり得ない事柄だからだ。
「サマエル……いいか。アガレスは十年前に死んだ……」
「あ……?」
そうだ。アガレスは、人間界とゲートが繋がってすぐに失踪した。アガリアレプトの能力によって後々死亡が確認されたのだ。
「んな訳ねえだろ、俺は確かに過去に行って封印されて、四百年経ったんだ。証拠に服も無くなってただろ……?」
「だが、アガレスは既に……‼︎」
「いや、確かに俺はアガレス連れてった‼︎そうだよ、アイツ拉致した時にベリアルが居た‼︎アイツに聞けば……‼︎」
そんな口論を傍観していたルシファーが、遂に口を開いた。
「……歴史が改編された、って事か」
語られた言葉は、端的に事実らしきものを語った。アガレスが生きていた世界線が存在していて、その世界で歴史を改変したことによりアガレスは死んだという事だろうか。
「……アガレスが死んでいるこの世界では、本当のことは分からない。天使なら何か知っているのかもしれないが、奴らがこちらに協力などする筈も無い」
「どうしました?なんだか調子が優れないように伺えますが……」
「あーもうマジうっせぇ‼︎黙ってろラファエル‼︎」
能天使指揮官の二つの影がいつも通りに佇む天界。机に突っ伏してもがき苦しむカマエルの姿を、不思議そうに見つめるラファエルの姿があった。
「いや……分かってますよ。サマエルに逃げられたこと、根に持っていらっしゃるんでしょう?」
「ちげーし‼︎逃げられたんじゃなくて逃したんだわマジで‼︎」
「あらあら……」
「あらあらじゃねーよ‼︎何憐れんでんだマジで殴るぞ⁉︎」
確かに、もしあのまま戦い続けていれば負けていたのかもしれない。ルシファーの実力を見ても、まだあんなものではないと確信が持てる。
だが、仕方がなかった。眼前にあんな光景が広がってしまえば、誰だろうと困惑せざるを得ない。そもそもなんでサマエルは隠そうとか思わなかったのか、それが不思議で仕方なかった。
「カマちゃん、言動は横暴なのに中身は超純粋乙女ですもんね」
「あ⁉︎何言ってんだマジふざけんな‼︎」
眼前に立ち、戦闘の態勢を取るサマエルに目を向ける。先程まで封印下にあった男を解放し、味方に付けてやろうと考えていたのだが……
どう考えても、絵面がそういうアレじゃなかった。もしサマエルの語った通り、四百年の時が経過していたのなら、当然その服は風化して塵と化す条件を満たしている。
カッコつけてセリフを決めた直後、荒廃した街に吹いたひとつの風がサマエルの身に纏っていたそれを砂に変えた。なんとも残念だ。
「お前……最高にカッコ悪いぞ」
「最高に頼もしい助っ人になんて事抜かしやがる」
確かに全裸の男は気になるが、眼前のカマエル相手にこれほど嬉しい助っ人はない。なんとしてでもこの窮地を脱して、色々と聞かなければならないのだから。
「さて、やるか」
「……そうだな」
適当な意思疎通を図ったのち、眼前に佇むカマエルという標的を捉えて飛び出す。第二ラウンドの先手必勝だ。
しかし、視線を地に伏せたカマエルは防御の形態を取らず、微動だにしない。これは誘い込まれているのだろうか。何かしらのカウンターが来ると考えた方が得策か。
一発目の蹴りを打ち込んでみると、案の定見切られていた。こちらは攻撃を外してしまったが、まだもう一発がカマエルに迫る頃だろう。
「テメェなぁ……なにしてんだぁぁぁ‼︎」
振り向いた視界の先には、全裸で拳を振りかざすサマエル。そして、それに向かって叫ぶカマエル。
なんとなく、言葉の意味を理解できた気がする。だとしてもかなり己の思考も動くのが遅いなと感じた。
カマエルの蒼い長剣は矛先をサマエルに向けられていたが、標的は定まっていないらしい。防御を拡散させる技術か、又はただ情緒が不安定になっているだけか。
「マジでなに見せやがんだぁ‼︎マジ殺すぜってー殺すぞこの露出狂‼︎」
「うっせぇんだよ‼︎テメェがあんな事しなけりゃ俺の服無くなってねえんだわ‼︎」
怒りが全面に出過ぎていると言っても過言ではない現在のサマエル。彼は何を思ったか、拳を引っ込めて蹴りの攻撃にシフトした。
割と最低な戦いに加わりたくなかったのだろうか。己はその場で立ち尽くしてしまった。
「近づけんじゃねぇ‼︎マジ最底辺淫行野郎がぁ‼︎」
「うるっせぇつってんだろッ‼︎」
当然と言えばその通りだろうが、カマエルはその攻撃を避け続ける。一方全裸のサマエルは、天使という存在に対して優位に立っているという愉悦感に浸っている。そんな顔をしていた。
「あー‼︎もうマジ無理ぃ‼︎今回は見逃してやるけどマジでもう一回封印するからな‼︎あとお前服着ろ‼︎」
顔面を真っ赤に染めていたカマエルはその足を止め、こちらに向かって言葉を吐き捨てる。向こう側から吹っかけてきた闘いといえど、なんだかものすごく迷惑なことをした気がしてならなかった。
カマエルはそのまま翼を広げ、天目掛けて一直線に飛び上がる。雲を突き破って、姿を眩ませてしまった。
「さて、色々聞きたいことがあるんだが……今の俺はカマエルと同じこと思ってる」
「あ?てめぇ天使と同じ思考とかどんな神経してんだ」
「いや、人型のときは頼むから服着てくれ」
「アガリアレプト、忙しいところ悪いね」
「ルシファー様。そういえばサタナキアが探してた……っとぅおッ……サマエル……?」
今日も今日とて、見つからない歴史の断片を詮索し続ける日々。そんな最中に現れたのは、ルシファーともう一つの影。
何故か連れられたサマエルの姿が、そこにはあった。
「邪魔するぜ」
「ルシファー様、どういう事ですかコレ……」
「簡単に話すと、だな。俺はアガレスの力を使い、過去へ向かって悪魔学を解いた人物に接触を試みた。だが、それは俺らにとってのタブーらしい。俺のタブーへの接触を感知したカマエルにやられたって事だ」
サマエルは、注がれた珈琲を啜り終えて語った。一体何をタブーとして隠しているのかは分からないが、天使の存在と情報の在り処さえ分かれば、あとはこの能力でどうにかなるのではないだろうか。
なんて、考えていたのだが。ひとつ、引っかかる点がある。当然、この話を聞いていた二人の悪魔は同じことを考えているだろう。
ルシファーが、話を遮って質問をかける。
「待て、サマエル。お前、アガレスとどうやって会った?」
「あ?なんでだよ。その辺で捕まえて使っただけだぞ」
単調に語られるも、それを信じることは出来なかった。絶対にあり得ない事柄だからだ。
「サマエル……いいか。アガレスは十年前に死んだ……」
「あ……?」
そうだ。アガレスは、人間界とゲートが繋がってすぐに失踪した。アガリアレプトの能力によって後々死亡が確認されたのだ。
「んな訳ねえだろ、俺は確かに過去に行って封印されて、四百年経ったんだ。証拠に服も無くなってただろ……?」
「だが、アガレスは既に……‼︎」
「いや、確かに俺はアガレス連れてった‼︎そうだよ、アイツ拉致した時にベリアルが居た‼︎アイツに聞けば……‼︎」
そんな口論を傍観していたルシファーが、遂に口を開いた。
「……歴史が改編された、って事か」
語られた言葉は、端的に事実らしきものを語った。アガレスが生きていた世界線が存在していて、その世界で歴史を改変したことによりアガレスは死んだという事だろうか。
「……アガレスが死んでいるこの世界では、本当のことは分からない。天使なら何か知っているのかもしれないが、奴らがこちらに協力などする筈も無い」
「どうしました?なんだか調子が優れないように伺えますが……」
「あーもうマジうっせぇ‼︎黙ってろラファエル‼︎」
能天使指揮官の二つの影がいつも通りに佇む天界。机に突っ伏してもがき苦しむカマエルの姿を、不思議そうに見つめるラファエルの姿があった。
「いや……分かってますよ。サマエルに逃げられたこと、根に持っていらっしゃるんでしょう?」
「ちげーし‼︎逃げられたんじゃなくて逃したんだわマジで‼︎」
「あらあら……」
「あらあらじゃねーよ‼︎何憐れんでんだマジで殴るぞ⁉︎」
確かに、もしあのまま戦い続けていれば負けていたのかもしれない。ルシファーの実力を見ても、まだあんなものではないと確信が持てる。
だが、仕方がなかった。眼前にあんな光景が広がってしまえば、誰だろうと困惑せざるを得ない。そもそもなんでサマエルは隠そうとか思わなかったのか、それが不思議で仕方なかった。
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「あ⁉︎何言ってんだマジふざけんな‼︎」
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