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第2部
第19話 邂逅
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「さて……一番近いのは何処ですかね」
無機質なコンクリートの巣食うビル群の端、かつてのDR本部が隣接していた近辺にて。未だ大規模な解体工事が行われる土地には、そのうちにテーマパークが建てられるらしい。
「おや、妙に気配の集中した場所が……」
その場から、距離は数十キロと言ったところだろうか。そこに、複数体の堕天使が固まっていた。
当然、目的のために行うべき最善策は分かっている。それに目掛けて、地を蹴り一途に接近した。
「まだ買うのかよ……さっさと帰らねえとやべぇんだぞ分かってんのか」
「うるせえな。天使はルシファーとサマエルだけ狙ってんだろ、別に俺らは何もされねえよ」
現在、ブエルのコアをマモンに貸し出している状況なので、この状況で戦闘を始めることはできない。だからこその安全を考慮して人目につくことを避けるべきなのだろうが、サマエルがこちらに敵意を向けていないということもあるため割り切ってしまった。
スーパーの割引惣菜コーナーで今夜の肴を探している最中にも、ベリアルはいつになく不安な様子を見せていた。やはりコイツにも人を大切にする心が芽生えたということだろうか。子どもの成長を喜ぶ父親みたいなことを考えつつ、とりあえずコロッケとインスタント味噌汁をカゴに入れてレジへと向かった。
「四百二十七円になります。ポイントカードありますか?」
「あぁ、はい」
「レジ袋は?」
「いらねっす」
会計を済ませ、店を後にする。毎日毎日割引品を狙うこの万年金欠の宮沖トウヤなる男は、多分あの店員に覚えられているのではないだろうか。さっきの店員にも「またコイツか」みたいな顔を向けられたので、恐らく間違ってはいないだろう。
「なぁ、マモンとこ行こうぜ。ブエルのコア返してもらわねえと不安で仕方ねえ」
「お前にしては弱気だな。そんなに俺が心配か?」
「そりゃあ心配になるだろ。ブエルで半永久的にオレ様の力を引き出せる上、メシまで食わせてくれるんだからな。お前が死んで困るのはオレ様の方だ」
「だと思ったよ、畜生」
別に裏側に隠した感情があるのか。なんて、考えもしていない。ただ純粋にコイツはそう思っているのだろうなと思うところに、悪魔なんだから仕方ないだろうと言い聞かせておく。
ふと、何かが眼前を通過した。羽虫の類だと思ったので、条件反射によって咄嗟に手を振り追い払おうとしたのだが、何故だろうか。腕に力が入らず、視界がぼやける。
ここ数日、詰めたスケジュールで仕事をしていたからだろうか。立ちくらみをする要因は幾つでも見つかるため、これ以上考えるのは望ましくないと考えた。
そして、唐突な激痛の中でぼやけた視界の色が変わった。
赤だった。視界の下側から侵食するように飛び散る赤が、視界を染めていた。
「トウヤッ⁉︎」
真横で先程まで肩を並べて歩いていた宮沖トウヤの姿が、その場に倒れ込む。噴水のように噴き出した赤いそれは、間違いなく鮮血そのものであった。
人間の出血致死量は全体血液の30%であり、この傷ならば十分とも持たないだろう。人目が多い場で、この状況は非常に不味い。
一直線に過ぎ去った正体は分からないが、恐らくそれがトウヤの腹を裂いたのだろう。そしてそれを攻撃として打つことのできる方向に、敵は居る。
とにかくトウヤを助けるためには、自身のコアを食わせて痛みの感覚を乗っ取る必要があるだろう。しかし、この状況で変身してしまえばトウヤの命は完全にこの身が吸収してしまう。やはりマモンにコアを渡さなければよかった。
いや、何を迷っているんだ。
オレ様は悪魔、偉大なる公爵ベリアルだ。
初めてトウヤにコアを食わせた時、この身体を自身のものにする気で満ちていたではないか。
何を躊躇っている。
眼前の贄を乗っ取ってしまえよ。
早くしないと、使える寿命がどんどん減っていくぞ。
敵はすぐに来るぞ。
早くしろ。早く、早く。
別に、トウヤじゃなくてもいいんだろ。
永久機関なのはトウヤじゃなくてブエルのコアだろ。
「ベ……リアルッ‼︎早く……食わせ……ろ‼︎」
あぁ。これ、ヤバいやつだな。
オレ様が何やっても、トウヤ死ぬわ。
なら、最善手を打てば後悔はないわな。
自身のコアを、瀕死の口に捩じ込んで飲み込ませる。死力を振り絞ったその一飲みで、何かが千切れた感覚を味わった。
「……悪ぃけど、今は手ェ抜かねえぞ」
トウヤの腹をかっ裂いた攻撃の張本人が、その姿を表して地に降り立つ。清楚な純白に身を包んだ、女だった。
「堕天使が集まっていると思ったのですが、何故ただの人間に反応があったのでしょうか。そして今はあなたの中に、大量の反応がある……」
「うるっせえな。プッツンしてる奴に質問攻めなんざ、答えもらえると思ってんのか」
「別に、答えなんて要りませんよ。貴方含めて駆除するだけですので」
女は、仕込み刃の杖を抜く。戦況は、完全に臨戦形態へと移行した。
「……一つ教えてやる。怒りながら食うメシは何食おうと美味くねえんだよ」
無機質なコンクリートの巣食うビル群の端、かつてのDR本部が隣接していた近辺にて。未だ大規模な解体工事が行われる土地には、そのうちにテーマパークが建てられるらしい。
「おや、妙に気配の集中した場所が……」
その場から、距離は数十キロと言ったところだろうか。そこに、複数体の堕天使が固まっていた。
当然、目的のために行うべき最善策は分かっている。それに目掛けて、地を蹴り一途に接近した。
「まだ買うのかよ……さっさと帰らねえとやべぇんだぞ分かってんのか」
「うるせえな。天使はルシファーとサマエルだけ狙ってんだろ、別に俺らは何もされねえよ」
現在、ブエルのコアをマモンに貸し出している状況なので、この状況で戦闘を始めることはできない。だからこその安全を考慮して人目につくことを避けるべきなのだろうが、サマエルがこちらに敵意を向けていないということもあるため割り切ってしまった。
スーパーの割引惣菜コーナーで今夜の肴を探している最中にも、ベリアルはいつになく不安な様子を見せていた。やはりコイツにも人を大切にする心が芽生えたということだろうか。子どもの成長を喜ぶ父親みたいなことを考えつつ、とりあえずコロッケとインスタント味噌汁をカゴに入れてレジへと向かった。
「四百二十七円になります。ポイントカードありますか?」
「あぁ、はい」
「レジ袋は?」
「いらねっす」
会計を済ませ、店を後にする。毎日毎日割引品を狙うこの万年金欠の宮沖トウヤなる男は、多分あの店員に覚えられているのではないだろうか。さっきの店員にも「またコイツか」みたいな顔を向けられたので、恐らく間違ってはいないだろう。
「なぁ、マモンとこ行こうぜ。ブエルのコア返してもらわねえと不安で仕方ねえ」
「お前にしては弱気だな。そんなに俺が心配か?」
「そりゃあ心配になるだろ。ブエルで半永久的にオレ様の力を引き出せる上、メシまで食わせてくれるんだからな。お前が死んで困るのはオレ様の方だ」
「だと思ったよ、畜生」
別に裏側に隠した感情があるのか。なんて、考えもしていない。ただ純粋にコイツはそう思っているのだろうなと思うところに、悪魔なんだから仕方ないだろうと言い聞かせておく。
ふと、何かが眼前を通過した。羽虫の類だと思ったので、条件反射によって咄嗟に手を振り追い払おうとしたのだが、何故だろうか。腕に力が入らず、視界がぼやける。
ここ数日、詰めたスケジュールで仕事をしていたからだろうか。立ちくらみをする要因は幾つでも見つかるため、これ以上考えるのは望ましくないと考えた。
そして、唐突な激痛の中でぼやけた視界の色が変わった。
赤だった。視界の下側から侵食するように飛び散る赤が、視界を染めていた。
「トウヤッ⁉︎」
真横で先程まで肩を並べて歩いていた宮沖トウヤの姿が、その場に倒れ込む。噴水のように噴き出した赤いそれは、間違いなく鮮血そのものであった。
人間の出血致死量は全体血液の30%であり、この傷ならば十分とも持たないだろう。人目が多い場で、この状況は非常に不味い。
一直線に過ぎ去った正体は分からないが、恐らくそれがトウヤの腹を裂いたのだろう。そしてそれを攻撃として打つことのできる方向に、敵は居る。
とにかくトウヤを助けるためには、自身のコアを食わせて痛みの感覚を乗っ取る必要があるだろう。しかし、この状況で変身してしまえばトウヤの命は完全にこの身が吸収してしまう。やはりマモンにコアを渡さなければよかった。
いや、何を迷っているんだ。
オレ様は悪魔、偉大なる公爵ベリアルだ。
初めてトウヤにコアを食わせた時、この身体を自身のものにする気で満ちていたではないか。
何を躊躇っている。
眼前の贄を乗っ取ってしまえよ。
早くしないと、使える寿命がどんどん減っていくぞ。
敵はすぐに来るぞ。
早くしろ。早く、早く。
別に、トウヤじゃなくてもいいんだろ。
永久機関なのはトウヤじゃなくてブエルのコアだろ。
「ベ……リアルッ‼︎早く……食わせ……ろ‼︎」
あぁ。これ、ヤバいやつだな。
オレ様が何やっても、トウヤ死ぬわ。
なら、最善手を打てば後悔はないわな。
自身のコアを、瀕死の口に捩じ込んで飲み込ませる。死力を振り絞ったその一飲みで、何かが千切れた感覚を味わった。
「……悪ぃけど、今は手ェ抜かねえぞ」
トウヤの腹をかっ裂いた攻撃の張本人が、その姿を表して地に降り立つ。清楚な純白に身を包んだ、女だった。
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「うるっせえな。プッツンしてる奴に質問攻めなんざ、答えもらえると思ってんのか」
「別に、答えなんて要りませんよ。貴方含めて駆除するだけですので」
女は、仕込み刃の杖を抜く。戦況は、完全に臨戦形態へと移行した。
「……一つ教えてやる。怒りながら食うメシは何食おうと美味くねえんだよ」
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