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第3部
第9話 異端児
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叫ぶハルファスの言葉には、何かとてつもない覚悟を感じた。当然と言ってしまえば当然なのだが、決死の覚悟というものが垣間見える。
『絶対に負けるな』というのは他力本願だが、ハルファス自身が何も出来ないというのを踏まえるのなら仕方のない事だろう。鳥を模した姿をしているので、物を握ることはできない。どれだけ兵器を生み出そうと彼自身にできることは何もないのだ。
そして、ただの人間を撃った筈なのに、対象が死ななかったどころか復讐に現れた。この時点でハルファスは死を覚悟したつもりだろうが、美原に押された言葉に僅かな勝機を期待したのだろう。
「ハルファスッ‼︎早く‼︎」
「ベリアル殺せる武器なんざねぇ‼︎テメェの腕に掛かってんだぜ‼︎」
どこにでもあるような一軒の銭湯を前に、銃撃戦を始めるつもりだろうか。やはり人通りの少ない道ではあるが、朝方という事もあり、通行人が現れる可能性もある。なんとしても被害者はこの身だけに留めておきたい。
「死にやがれッベリアルゥ‼︎」
数分前をなぞるように、この身へ向けて弾が飛ぶ。しかしベリアルの動体視力を得たこの身体では、それも小学生による投石となんら変わりないスピードを見せる。
一発一発を弾いたところで次の弾が発泡されて、恐らくハルファスの能力で自動的に弾は補充される。この場に留まり続けて防戦一方になるのは時間の無駄だと思われる。
「なぁ、トウヤ。このまま歩いていってハルファス殴る感じでいいか?」
『殺すなよ。こういうのはベルゼブルに任せとくべきだ』
悪魔の持つ、人知を超えた能力。確かにハルファスによる創造は目を見張るような能力だが、所詮は人知で作られたもの。DRがガラクタ同然と投げ捨てた有象無象の一部でしかない。
一歩一歩、身体に銃弾が当たるたびむず痒そうな仕草をするベリアルは歩み寄る。恐怖に歪んだ顔の双方は止まる事なく発泡を続け、目と鼻の先まできた身体へ尚も弾を打ち込み続けていた。
「そこそこ痛えんだよ。やめろ唐揚げ」
鞄から飛び出した細長い首を掴み、引き摺り出す。もがく鳥の姿には滑稽と語るしかないが、こういうのも慢心に繋がるのだろう。そのおかげで先程一発を食らってしまったのだから。
「誰がッ‼︎唐揚げだぁテメェッ‼︎」
呼吸を止める勢いで首を握り締め、ハルファスの言葉を断つ。暴れるその身は段々と鎮まり、果てには動かなくなった。
そして、自然と嘴が上下に開く。
その中に姿を見せた異質なものを見て、瞬時に理解。奴の狙いにまんまとハマってしまった訳だ。
『ベリアル‼︎目ぇ閉じろ‼︎』
「あぁ⁉︎んだこれぁ‼︎」
あらゆる兵器を創造する能力というのなら、もう少し用心しておくべきだった。命を奪う物だけが兵器ではないという事を。
ハルファスの口内に形を作っていたのは、閃光弾の類だった。
この至近距離ならば、閃光弾本体にある殺傷能力は凄まじい。だがベリアルにダメージを与えられるかと言われれば、無駄な行為に等しいだろう。しかし、本来の用途は視界を奪うことだとすれば、効果は絶大である。
『絶対に負けるな』というハルファスの言葉は、強がりでしかなかったのだ。奴は初めから逃走することを考えて、我々に悟られないよう閃光弾を使う計画を練っていた。
『ベリアル、見えるか⁉︎』
「なんっにも見えねえッ‼︎トウヤは⁉︎」
『俺の目は無事だけどお前の視界が空いてねえから何にも見えねえ‼︎』
「クソがッ‼︎つーか熱いなオイ燃えてんのか⁉︎」
閃光弾を至近距離で受けて仕舞えば、当然弾本体の燃焼が飛び火する。イフリートのコアを使うたびにベリアルの身体は燃えているので、これはどうにかなるだろうが、今一番は視界を奪われている現状がとてもよろしくない。
「逃げられたらもう見つけらんねえぞ‼︎どうすんだ⁉︎」
『俺の目は使える。主導権を返せ‼︎』
「よし、絶対捕まえろよッ‼︎」
ベリアルの声は途切れて、久しい身体の感覚を手に入れる。ベリアルの身体を自身の精神が操るという、今まで使う理由がなかったスタイルがこんな形で役に立つ事になるとは思わなかった。
『……オレ様はやっぱまだ見えねえな。おいトウヤ、ハルファスまだ居るか?』
「……は?」
『おい聞いてんのか?』
「いや……居るけど……」
ハルファスの口から放たれた閃光弾をモロに食らって、視界が役立たずになっていた時間は僅かな数秒である。
しかし、その数秒で眼前の光景が生まれたというのはとても信じられないものだった。
「……誰だお前」
そこに姿を見せていたのは、たった一人の少女。しかしそれだけの存在を異端と認識させるには、あまりにも充分すぎる。
まるで自分の今の姿のように。
マモンと蓮磨のように。
悪魔を纏った姿と捉えて間違いない存在。その少女が片手に握るのは、紅く身を染めて、所々から骨を突き出すハルファスの変わり果てた姿だった。
「……誰だお前」
「正義のヒーロー」
『絶対に負けるな』というのは他力本願だが、ハルファス自身が何も出来ないというのを踏まえるのなら仕方のない事だろう。鳥を模した姿をしているので、物を握ることはできない。どれだけ兵器を生み出そうと彼自身にできることは何もないのだ。
そして、ただの人間を撃った筈なのに、対象が死ななかったどころか復讐に現れた。この時点でハルファスは死を覚悟したつもりだろうが、美原に押された言葉に僅かな勝機を期待したのだろう。
「ハルファスッ‼︎早く‼︎」
「ベリアル殺せる武器なんざねぇ‼︎テメェの腕に掛かってんだぜ‼︎」
どこにでもあるような一軒の銭湯を前に、銃撃戦を始めるつもりだろうか。やはり人通りの少ない道ではあるが、朝方という事もあり、通行人が現れる可能性もある。なんとしても被害者はこの身だけに留めておきたい。
「死にやがれッベリアルゥ‼︎」
数分前をなぞるように、この身へ向けて弾が飛ぶ。しかしベリアルの動体視力を得たこの身体では、それも小学生による投石となんら変わりないスピードを見せる。
一発一発を弾いたところで次の弾が発泡されて、恐らくハルファスの能力で自動的に弾は補充される。この場に留まり続けて防戦一方になるのは時間の無駄だと思われる。
「なぁ、トウヤ。このまま歩いていってハルファス殴る感じでいいか?」
『殺すなよ。こういうのはベルゼブルに任せとくべきだ』
悪魔の持つ、人知を超えた能力。確かにハルファスによる創造は目を見張るような能力だが、所詮は人知で作られたもの。DRがガラクタ同然と投げ捨てた有象無象の一部でしかない。
一歩一歩、身体に銃弾が当たるたびむず痒そうな仕草をするベリアルは歩み寄る。恐怖に歪んだ顔の双方は止まる事なく発泡を続け、目と鼻の先まできた身体へ尚も弾を打ち込み続けていた。
「そこそこ痛えんだよ。やめろ唐揚げ」
鞄から飛び出した細長い首を掴み、引き摺り出す。もがく鳥の姿には滑稽と語るしかないが、こういうのも慢心に繋がるのだろう。そのおかげで先程一発を食らってしまったのだから。
「誰がッ‼︎唐揚げだぁテメェッ‼︎」
呼吸を止める勢いで首を握り締め、ハルファスの言葉を断つ。暴れるその身は段々と鎮まり、果てには動かなくなった。
そして、自然と嘴が上下に開く。
その中に姿を見せた異質なものを見て、瞬時に理解。奴の狙いにまんまとハマってしまった訳だ。
『ベリアル‼︎目ぇ閉じろ‼︎』
「あぁ⁉︎んだこれぁ‼︎」
あらゆる兵器を創造する能力というのなら、もう少し用心しておくべきだった。命を奪う物だけが兵器ではないという事を。
ハルファスの口内に形を作っていたのは、閃光弾の類だった。
この至近距離ならば、閃光弾本体にある殺傷能力は凄まじい。だがベリアルにダメージを与えられるかと言われれば、無駄な行為に等しいだろう。しかし、本来の用途は視界を奪うことだとすれば、効果は絶大である。
『絶対に負けるな』というハルファスの言葉は、強がりでしかなかったのだ。奴は初めから逃走することを考えて、我々に悟られないよう閃光弾を使う計画を練っていた。
『ベリアル、見えるか⁉︎』
「なんっにも見えねえッ‼︎トウヤは⁉︎」
『俺の目は無事だけどお前の視界が空いてねえから何にも見えねえ‼︎』
「クソがッ‼︎つーか熱いなオイ燃えてんのか⁉︎」
閃光弾を至近距離で受けて仕舞えば、当然弾本体の燃焼が飛び火する。イフリートのコアを使うたびにベリアルの身体は燃えているので、これはどうにかなるだろうが、今一番は視界を奪われている現状がとてもよろしくない。
「逃げられたらもう見つけらんねえぞ‼︎どうすんだ⁉︎」
『俺の目は使える。主導権を返せ‼︎』
「よし、絶対捕まえろよッ‼︎」
ベリアルの声は途切れて、久しい身体の感覚を手に入れる。ベリアルの身体を自身の精神が操るという、今まで使う理由がなかったスタイルがこんな形で役に立つ事になるとは思わなかった。
『……オレ様はやっぱまだ見えねえな。おいトウヤ、ハルファスまだ居るか?』
「……は?」
『おい聞いてんのか?』
「いや……居るけど……」
ハルファスの口から放たれた閃光弾をモロに食らって、視界が役立たずになっていた時間は僅かな数秒である。
しかし、その数秒で眼前の光景が生まれたというのはとても信じられないものだった。
「……誰だお前」
そこに姿を見せていたのは、たった一人の少女。しかしそれだけの存在を異端と認識させるには、あまりにも充分すぎる。
まるで自分の今の姿のように。
マモンと蓮磨のように。
悪魔を纏った姿と捉えて間違いない存在。その少女が片手に握るのは、紅く身を染めて、所々から骨を突き出すハルファスの変わり果てた姿だった。
「……誰だお前」
「正義のヒーロー」
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