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第3部
第8話 悪魔の匂い
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「あのクソ女やっぱり狙ってやがった‼︎」
「んなっ……どういう事だよ……」
金属を踏む音が響き、その場から去ろうとする一人の姿は死角へと消える。次第に痛みは引いていくが、完全回復までは時間がかかりそうだ。
「ずっと臭えって言ってただろうが。あの女の部屋には異常なもんが多すぎるんだよ‼︎」
そう言われてみれば、思うことがある。一度だけベリアルの身体を自分が動かしたあの時の感覚を思い返せば、あらゆる五感が優れていたではないか。ベリアルが感じていた不快な匂いというのは、キツい香水ではなかったという訳だろうか。
「火薬と毒と、腐った血肉の匂いだ。お前の鼻誤魔化す為にわざと香水ぶちまけたんだろうよ」
「嘘だろ……何で美原さんがそんなもん持ってんだよ⁉︎」
「知るかッ‼︎とりあえず追いかけるぞ、これも仕事だろ⁉︎」
「よし、コアを寄越せ‼︎」
恐らく、銃声を聞いた近隣住民がしばらくして駆けつけるだろう。そうなったときにやれ救急車だのなんだと言われるのは面倒なので、その場を去る目的と共に一人の姿を追う事にした。
コアを喉の奥へと落とし、そこの住民へと身体を委ねる。見開いた目と鼻の先では、ベリアルの腕が銃弾を摘んで引き摺り出していた。
『普通の銃弾だな。どこでこんなもん……』
と、親指と人差し指に挟まれた銃弾は唐突に姿を変え、まるで砂のように散り散りとなって崩れ落ちた。
『んなっ……』
「おいトウヤ、コイツ確定で悪魔と連んでやがる」
『それならお前、匂いで分かるんじゃねえのか⁉︎』
微かな記憶を辿り、思い出す。確かバアルが現れた時に予知のような事をしていたので、優れた嗅覚で悪魔を探知することは出来るはずなのだ。
「そうだな、オレ様は匂いで悪魔を探せる。だが……」
『なんだよ』
「追いながら話してやる。行くぜ」
脚に全力を込め、上空へと飛び上がる。自宅の向かいにある三階建ての建造物に作られた簡易の屋上へ着地して、その姿を模索する事にしたようだ。恐らく、そこまで遠くへは向かっていないだろう。
「さて、続きだ。オレ様は悪魔の匂いを辿れるが、ひとつだけ辿れない匂いがある。マモンだ」
『マモン……?』
「蓮磨に身体を預けてる時のマモンからは、蓮磨の匂いしかしねえ。つまりあの女の部屋に悪魔の匂いが無かった理由は、アイツが体内に悪魔を飼ってやがるからだ」
そう語る。つまり、悪魔は人間と心身を共にする事で身を隠すことができるという訳だ。悪魔狩りの詳細が掴めない理由が、なんとなく分かった。
『ていうか、これ美原さんが悪魔狩りって事になんのか⁉︎』
「知るかよ、んな事。しっかし、この隠れ方してる悪魔がわんさか居るなら探すのクソ面倒だぜ」
視界を動かしながらその姿を模索し、会話を続ける。体内に悪魔を飼っている人間が複数居て、尚且つ犯罪に手を染めている可能性まであるというのは、ことの重大さを思い知るには充分すぎる。なによりも、そこそこ身近な人間がそうだったというのだから尚更だ。
『居たぞ‼︎銭湯んとこだ‼︎』
「オーケー。テイスティングの時間だぜ」
コンクリートを踏み、空高く飛び上がる。今なお走り続ける目標人物との距離は恐らく二百メートルと言ったところだろうか。この距離であるならば、恐らく移動に悪魔の力は使っていないと考えるのが妥当だろう。
美原の進行方向を塞ぐように、彼女の眼前へと目的地を定める。そこへと向けて、直線に立ち並ぶ一軒家の瓦を踏みつけてまた一歩と脚を前へ動かしてゆく。
地に脚を着いた先で、眼前の姿を睨む。それに反応するよう、美原の顔は恐怖に歪められるばかりだった。
「残念だったな、トウヤは毒でもハジキでも死なねえぞ」
「なんでっ……‼︎」
どうやら、先程まで笑顔でこちらに銃口を向けていた自信は剥がれてしまったらしい。イレギュラーな対応には慣れていなかったのだろう。
「どうせ昨日のメシにも毒盛ってたんだろ。ブツの出所は何処だ?」
美原は鞄へと手を突っ込み、先程までの鉄の塊を探していた。しかし、警察の装備程度で悪魔をどうにかする事などできないというのは一般的な常識である。無謀な行動としか見做せない。
「……ハルファス‼︎悪魔を殺せる武器を‼︎」
「なぁるほど、ハルファスか……」
ハルファス。主に、武具を錬成する能力を持つ。兵器と呼ばれるものなら、ありとあらゆる種を扱う事が可能な悪魔である。
美原の言葉に反応して鞄から首を出したのは、鳥の模造品のような生物。即ち、ハルファスだった。
「ふざけてんじゃねぇ‼︎契約と違ぇだろうがぁなんでベリアルなんかと戦わなきゃならねんだぁ‼︎」
「うるさいッ‼︎早く‼︎」
「糞糞糞クソクソ女がぁぁ‼︎テメェのせいで大ピンチだ‼︎負けたら俺は食われてお前はお縄なんだぜ‼︎絶対負けんじゃあねえぞッ‼︎」
「んなっ……どういう事だよ……」
金属を踏む音が響き、その場から去ろうとする一人の姿は死角へと消える。次第に痛みは引いていくが、完全回復までは時間がかかりそうだ。
「ずっと臭えって言ってただろうが。あの女の部屋には異常なもんが多すぎるんだよ‼︎」
そう言われてみれば、思うことがある。一度だけベリアルの身体を自分が動かしたあの時の感覚を思い返せば、あらゆる五感が優れていたではないか。ベリアルが感じていた不快な匂いというのは、キツい香水ではなかったという訳だろうか。
「火薬と毒と、腐った血肉の匂いだ。お前の鼻誤魔化す為にわざと香水ぶちまけたんだろうよ」
「嘘だろ……何で美原さんがそんなもん持ってんだよ⁉︎」
「知るかッ‼︎とりあえず追いかけるぞ、これも仕事だろ⁉︎」
「よし、コアを寄越せ‼︎」
恐らく、銃声を聞いた近隣住民がしばらくして駆けつけるだろう。そうなったときにやれ救急車だのなんだと言われるのは面倒なので、その場を去る目的と共に一人の姿を追う事にした。
コアを喉の奥へと落とし、そこの住民へと身体を委ねる。見開いた目と鼻の先では、ベリアルの腕が銃弾を摘んで引き摺り出していた。
『普通の銃弾だな。どこでこんなもん……』
と、親指と人差し指に挟まれた銃弾は唐突に姿を変え、まるで砂のように散り散りとなって崩れ落ちた。
『んなっ……』
「おいトウヤ、コイツ確定で悪魔と連んでやがる」
『それならお前、匂いで分かるんじゃねえのか⁉︎』
微かな記憶を辿り、思い出す。確かバアルが現れた時に予知のような事をしていたので、優れた嗅覚で悪魔を探知することは出来るはずなのだ。
「そうだな、オレ様は匂いで悪魔を探せる。だが……」
『なんだよ』
「追いながら話してやる。行くぜ」
脚に全力を込め、上空へと飛び上がる。自宅の向かいにある三階建ての建造物に作られた簡易の屋上へ着地して、その姿を模索する事にしたようだ。恐らく、そこまで遠くへは向かっていないだろう。
「さて、続きだ。オレ様は悪魔の匂いを辿れるが、ひとつだけ辿れない匂いがある。マモンだ」
『マモン……?』
「蓮磨に身体を預けてる時のマモンからは、蓮磨の匂いしかしねえ。つまりあの女の部屋に悪魔の匂いが無かった理由は、アイツが体内に悪魔を飼ってやがるからだ」
そう語る。つまり、悪魔は人間と心身を共にする事で身を隠すことができるという訳だ。悪魔狩りの詳細が掴めない理由が、なんとなく分かった。
『ていうか、これ美原さんが悪魔狩りって事になんのか⁉︎』
「知るかよ、んな事。しっかし、この隠れ方してる悪魔がわんさか居るなら探すのクソ面倒だぜ」
視界を動かしながらその姿を模索し、会話を続ける。体内に悪魔を飼っている人間が複数居て、尚且つ犯罪に手を染めている可能性まであるというのは、ことの重大さを思い知るには充分すぎる。なによりも、そこそこ身近な人間がそうだったというのだから尚更だ。
『居たぞ‼︎銭湯んとこだ‼︎』
「オーケー。テイスティングの時間だぜ」
コンクリートを踏み、空高く飛び上がる。今なお走り続ける目標人物との距離は恐らく二百メートルと言ったところだろうか。この距離であるならば、恐らく移動に悪魔の力は使っていないと考えるのが妥当だろう。
美原の進行方向を塞ぐように、彼女の眼前へと目的地を定める。そこへと向けて、直線に立ち並ぶ一軒家の瓦を踏みつけてまた一歩と脚を前へ動かしてゆく。
地に脚を着いた先で、眼前の姿を睨む。それに反応するよう、美原の顔は恐怖に歪められるばかりだった。
「残念だったな、トウヤは毒でもハジキでも死なねえぞ」
「なんでっ……‼︎」
どうやら、先程まで笑顔でこちらに銃口を向けていた自信は剥がれてしまったらしい。イレギュラーな対応には慣れていなかったのだろう。
「どうせ昨日のメシにも毒盛ってたんだろ。ブツの出所は何処だ?」
美原は鞄へと手を突っ込み、先程までの鉄の塊を探していた。しかし、警察の装備程度で悪魔をどうにかする事などできないというのは一般的な常識である。無謀な行動としか見做せない。
「……ハルファス‼︎悪魔を殺せる武器を‼︎」
「なぁるほど、ハルファスか……」
ハルファス。主に、武具を錬成する能力を持つ。兵器と呼ばれるものなら、ありとあらゆる種を扱う事が可能な悪魔である。
美原の言葉に反応して鞄から首を出したのは、鳥の模造品のような生物。即ち、ハルファスだった。
「ふざけてんじゃねぇ‼︎契約と違ぇだろうがぁなんでベリアルなんかと戦わなきゃならねんだぁ‼︎」
「うるさいッ‼︎早く‼︎」
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─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
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