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第3部
第10話 大遅刻
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正義の味方。と、そう答える一つの姿がそこには佇む。強烈な血の匂いが辺りを覆い尽くすのも時間の問題だが、ベリアルの語感を得た今の状況ではそんな時間も関係ない。
「悪魔を殺して世界を平和に……これが私の仕事。あんたは下がってな」
悪魔を殺す。と語ってこちらに配慮を投げかけている。恐らくこの少女もベリアルと同じように、人間の中にいる悪魔は認知できないのだろう。
加えて、自身の身体を覆っていたベリアルの装甲は、精神を入れ替えたことにより引っ込んでいた。これなら、見た目は普段の自分と何ら変わりがない。
こちらに向けていた視線を、手元に握られたハルファスの亡骸に移した少女。手のひらを広げて、地に落とした鳥の姿を踏み潰した。
いつしか見た、道路の真ん中で車に轢かれた動物の死骸を彷彿とさせるそれが二度と動き出す事はなかった。
響き続けた発砲音と、閃光弾。当然近隣住民や通りすがりに多大なる迷惑をかけたのだろう。通報を受けた警察官がパトカーを転がして、三人程度がその場に現れた。
悪魔犯罪対策課の警察手帳的なものを見せて状況を説明するも、奴らは何一つ理解を示さない。結局は担当地区の関係で、悪魔犯罪対策二課へと捜査は引き継がれた。
「はぁ……遅刻確定だ……」
「別にいいじゃねえか、戦ってたって言えば」
「そうだけどよ……蓮磨とか浦矢の対応が絶対めんどくせえ」
蓮磨なら、なぜ遅刻したのかを問い正す前に怒鳴ってくるだろう。年下の癖にあまりにもしっかりしてるから、言い返すこともできない。
そして浦矢は、興味本位で色々聞いてくる。確かに3課は暇だが、仕事をしてくれという気持ちが積もるばかりなのだ。
「とりあえず隊長に連絡だけして急ぐか」
「働いたら腹減ったぜ」
「前にマモンから貰ったアメならあるけど?」
「宮沖先輩おっそいですねー」
「トウヤが寝坊なんてするとは思えないな。ベリアルが何かやらかしたんだろう」
いつも通りの3課は、今日もくだらない会話を繰り広げながら書類を眺めるだけのお仕事。平和な世に浮かれ続けるのもいい加減に腑抜けすぎているとは思うが、そうなっても仕方ないくらい悪魔による犯罪は無に等しいのであった。
「……あ、隊長電話なってますよ」
「マジか。携帯投げてくれ」
「いや流石にこんなもの投げれませんよ」
未だに開閉を可能としたガラケーから懐かしい曲が鳴り響き、震えている。その背面に付属した液晶には、『ミヤオキ』の文字が浮かんでいた。
「あ、宮沖先輩からですね」
携帯電話を受け取った隊長は、耳にスピーカーを当てるようにして相手からの連絡を受ける。
「どしたトウヤ。めっちゃ遅刻だけど」
「あー……すいません隊長、朝から悪魔出ちゃって戦ってました……」
「おいおい大変だな。ちゃんと捕まえたか?」
「一応捜査は2課の方に回されたんですけど、こっちもこっちで色々調べることありそうです」
「わかった。詳しいことは後で聞くから気をつけて来いよ」
「了解です」
数十秒の会話が終わると、隊長はため息を落として腕を伸ばす。ここ数日のデスクワーク続きで身体に負担が多かったのだろう。
ふと、そんな3課の扉を開く者がひとり。久しく見た顔に、懐かしさすら感じる人だった。
「おう、宗二。久しぶりだな」
「お久しぶりです。長いこと休み貰ってすみませんでした」
天使との抗争が起こった時より有給を使っていた山藁宗二が、約一週間ぶりにその顔を覗かせた。いつもと変わらない彼が、日常の一部へと戻るのだ。
「山藁さん、なんかあったんですか?」
「おい浦矢、そういうプライベート的な話はあまり……」
「いいよ蓮磨くん。全然そんなじゃなくて普通に旅行行ってただけだから。はいこれお土産」
山藁宗二の鞄から、地元のお土産感溢れる饅頭のパッケージが姿を見せる。見たこともない商品だが、多分美味いのだろうなと一目でわかる感じのものだった。
「おはようございます……」
「おう、お疲れ」
息を切らしながら開くいつもの扉は、毎日潜っているそれとは思えないほど重かった。やはり出勤時間をできる限り守らなくてはという義務感は増すばかりで、なんなら後半はベリアルを担いできたまである。
ちなみにこいつはずっと飴玉を食っていた。朝からの働きぶりを見ると何も言えなくなるのが残念だ。
「あれ、山藁さん。お久しぶりです」
「久しぶりだねー、トウヤくん。朝から悪魔退治お疲れ様」
「いや、ほんと疲れましたよ」
「トウヤ、早速だが、今回3課が調べなきゃならないってのはなんだ?」
隊長の言葉が飛ぶ。これは、恐らく現在の世間を取り巻く環境を打破する為のヒントに限りなく近いものだと思われる。
「悪魔狩り……かもしれない奴と会いました」
「悪魔を殺して世界を平和に……これが私の仕事。あんたは下がってな」
悪魔を殺す。と語ってこちらに配慮を投げかけている。恐らくこの少女もベリアルと同じように、人間の中にいる悪魔は認知できないのだろう。
加えて、自身の身体を覆っていたベリアルの装甲は、精神を入れ替えたことにより引っ込んでいた。これなら、見た目は普段の自分と何ら変わりがない。
こちらに向けていた視線を、手元に握られたハルファスの亡骸に移した少女。手のひらを広げて、地に落とした鳥の姿を踏み潰した。
いつしか見た、道路の真ん中で車に轢かれた動物の死骸を彷彿とさせるそれが二度と動き出す事はなかった。
響き続けた発砲音と、閃光弾。当然近隣住民や通りすがりに多大なる迷惑をかけたのだろう。通報を受けた警察官がパトカーを転がして、三人程度がその場に現れた。
悪魔犯罪対策課の警察手帳的なものを見せて状況を説明するも、奴らは何一つ理解を示さない。結局は担当地区の関係で、悪魔犯罪対策二課へと捜査は引き継がれた。
「はぁ……遅刻確定だ……」
「別にいいじゃねえか、戦ってたって言えば」
「そうだけどよ……蓮磨とか浦矢の対応が絶対めんどくせえ」
蓮磨なら、なぜ遅刻したのかを問い正す前に怒鳴ってくるだろう。年下の癖にあまりにもしっかりしてるから、言い返すこともできない。
そして浦矢は、興味本位で色々聞いてくる。確かに3課は暇だが、仕事をしてくれという気持ちが積もるばかりなのだ。
「とりあえず隊長に連絡だけして急ぐか」
「働いたら腹減ったぜ」
「前にマモンから貰ったアメならあるけど?」
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「トウヤが寝坊なんてするとは思えないな。ベリアルが何かやらかしたんだろう」
いつも通りの3課は、今日もくだらない会話を繰り広げながら書類を眺めるだけのお仕事。平和な世に浮かれ続けるのもいい加減に腑抜けすぎているとは思うが、そうなっても仕方ないくらい悪魔による犯罪は無に等しいのであった。
「……あ、隊長電話なってますよ」
「マジか。携帯投げてくれ」
「いや流石にこんなもの投げれませんよ」
未だに開閉を可能としたガラケーから懐かしい曲が鳴り響き、震えている。その背面に付属した液晶には、『ミヤオキ』の文字が浮かんでいた。
「あ、宮沖先輩からですね」
携帯電話を受け取った隊長は、耳にスピーカーを当てるようにして相手からの連絡を受ける。
「どしたトウヤ。めっちゃ遅刻だけど」
「あー……すいません隊長、朝から悪魔出ちゃって戦ってました……」
「おいおい大変だな。ちゃんと捕まえたか?」
「一応捜査は2課の方に回されたんですけど、こっちもこっちで色々調べることありそうです」
「わかった。詳しいことは後で聞くから気をつけて来いよ」
「了解です」
数十秒の会話が終わると、隊長はため息を落として腕を伸ばす。ここ数日のデスクワーク続きで身体に負担が多かったのだろう。
ふと、そんな3課の扉を開く者がひとり。久しく見た顔に、懐かしさすら感じる人だった。
「おう、宗二。久しぶりだな」
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「おい浦矢、そういうプライベート的な話はあまり……」
「いいよ蓮磨くん。全然そんなじゃなくて普通に旅行行ってただけだから。はいこれお土産」
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「おはようございます……」
「おう、お疲れ」
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ちなみにこいつはずっと飴玉を食っていた。朝からの働きぶりを見ると何も言えなくなるのが残念だ。
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「久しぶりだねー、トウヤくん。朝から悪魔退治お疲れ様」
「いや、ほんと疲れましたよ」
「トウヤ、早速だが、今回3課が調べなきゃならないってのはなんだ?」
隊長の言葉が飛ぶ。これは、恐らく現在の世間を取り巻く環境を打破する為のヒントに限りなく近いものだと思われる。
「悪魔狩り……かもしれない奴と会いました」
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