追放公爵ベリアルさんの偉大なる悪魔料理〜同胞喰らいの逆襲無双劇〜

軍艦あびす

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第3部

第11話 お願いしたい事

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「さて……午前の仕事はこいつで終わりだな。昼からはいつも通り会議で居ねえからよろしく」
「了解でーす」
 隊長の右手でひらひらと踊る一枚の書類を眺めながら、浦矢の抜けた返事が反響する。定例会議に毎日のように駆り出される隊長の姿は見慣れたもので、その姿を追うようにみなが昼食を求めて3課を後にする日も少なくはない。
 ふと、軋む音と共に扉が開かれる。現れた影は、毎度のことながらビニール袋を片手に下げてた。
「うぃーす」
「よおマモン。早く食わせろ」
「そう焦んなよベリアル。今日はモンブランだぜ」
「相変わらずマジで暴食かよ」
 見慣れた光景にいつしか加わったカマエルの姿も交え、かなりの盛り上がりを見せる3課。よくもまぁ毎日こんなパーティーみたいな事が起こるなと思う。
 
 
「そういやめちゃくちゃ急いでたせいで昼飯買うの忘れてたんだわ……」
「おいトウヤてめえ何してくれてんだ」
 部署の入り口付近に設置された、来客担当用のソファに腰掛けた我々はモンブランを貪る。美原とハルファスの襲撃によって失われた出勤時間では、スーパーマーケットに寄る時間など当然存在しなかったのだ。
「しっかし次から次へとマジで忙しいなお前ら。DR壊滅に天使襲撃、んで今は悪魔狩りだろ?」
「天使に関してはお前らのせいだろうが」
「確かにラファエルの言うことに乗ったのはアタシだけど……‼︎そもそもテメェらが詮索しなけりゃマジで何にも起こってなかったわけで……」
「言い訳すんな。乳むしり取るぞ」
「んだテメェマジ糞が‼︎」
 ベリアルとカマエルは、いつもこんな感じで喧嘩っぽいやり取りをしている。ベリアルは自身の身体を使わないと何もできないので手が出せず、カマエルは現在謹慎処分を受けているので手が出せない。結局、口頭以外での争いが起きることはないので安心である。できればやめて欲しいけども。
「あー、お前らうるさい。隣まで響いてるから」
 またしても軋んだ音を響かせた扉の先に、ひとりの女が顔を覗かせる。隣に所在する悪魔犯罪対策2課の隊員、篠原莉音の声が双方の喧嘩を統制していた。
「宮沖さん、今朝の件で色々聞きたいんでこの後2課まで来てくださいねー」
 篠原はそう言い残して、扉の音と共に去る。何度か目にすることはあった人物だが、何故あそこまでのクマが目の下を覆っているのかは不明である。もしかすると、2課はとんでもないブラックな環境なのではないだろうか。
「大変だねー、トウヤくん」
「まあ、しゃあないっすよコレは。どっちにしろ悪魔狩りの件も早く解決しねえとですし」
「……そうだね。ところで飲み物買いに行くけどなんかいる?」
「んー、BASSの無糖ブラックお願いしていいっすか」
「オレ様はコーラ」
「じゃあ俺カフェオレで」
「レモンティーマジで頼むわ」
 次々に注文を繰り返す天使と悪魔に、少々苦笑を零す山藁さんはいつも見せている笑顔をしていた。
「……蓮磨くん、一人じゃ持てないから着いてきてもらっていい?」
「了解した」
 
 
 コーラと、カフェオレと、レモンティー。次々とボタンを押して、自販機からペットボトルを取り出していく。
「あいつらには少し遠慮というものを覚えさせた方が良さそうだな……」
「いいよいいよ、ワガママはうちの妹で慣れてるからね」
「それは身内の話だろう。奴らには俺からキツく言っておく」
 山藁宗二の取り出したペットボトルを両手で抱え、会話を続ける。彼は自身用にアイスティーを購入して、また一つとペットボトルを取り出した。
「蓮磨くんは何にする?あと浦矢ちゃんは何がいいかな」
「俺は大丈夫だ。浦矢は……まあなんでも良いだろう」
 山藁宗二は、適当な清涼飲料水のボタンを押す。先程と同じようにペットボトルを取り出して、釣り銭のレバーを下げた。
「……ねぇ、蓮磨くん。一つお願いしたいことがあるんだけど、いいかな」
「……どうした?」
 山藁宗二は、二つのペットボトルを抱えてこちらを向く。真剣な眼差しを示したと思えば、深々と頭を下げ始めた。
「妹を……助けてほしい」
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