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Ⅵ bud end World
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ライアは心が押し潰されそうになる日常を繰り返し、ビチャビチャと音を立てて地を赤く染める古びた教会を思い出すたび、胃の中身をぶちまけた。
一人の外道に趣味と称されココロは殺された。
怒りや恨みなんて、その外道を殺した瞬間に晴れただろう。それでもなお感じ続けるのは、己の無力さと救いを求めるココロを助けられなかった申し訳なさ。
「そろそろ戻ったらどうだ。悲しいのは分かるが、悔やんだって戻って来るわけでも無いんだからな。」
カルは、少しも発言をオブラートに包む様子は無いようで、単刀直入に言い切ってしまった。
「………解ってる。何をしたって戻ってこないって。…それでも俺は…怖いんだよ。またあんな風に、誰か死ぬんじゃないかって…」
ライアの心情は誰しもが思う物だ。
絵の中で殺したいを繰り返している者だって、身内が死ねば悲しむに決まっている。
夜。それは明るく染められた世界を闇に包み込み、光る月は全ての生物を誘導するたった一つの道しるべ。
見つめる月には美しいと語る者も居れば、闇に染められた世界を照らす光なんて必要ないと、語る者もいる訳で意見は別れる事になる。
「月…かぁ…」
月には特に思い入れがある訳ではないが、時に美しい。と、感じる時がある。
「なに黄昏てんだよ。」
屋根に寝そべるライアの目に映るのは、二階の窓から見下ろす兄の姿だった。
兄は、いつもの口調で語りかける。
「まだ考え込んでやがるのか。いい加減に元に戻れよ、いつあいつらが仕掛けて来るのか…」
瞬間に、月から鎖に繋がれたらクナイの様なものが飛んできた。
同時に、とてつもない熱風を仰ぎながら二人の子供の影が浮かぶ。
「ボスの命令は殺害対象のアストラルだけだったよね。」
「えー?そうだっけ?どっちにしろ殺すんだしさ、みんな殺そうよー?」
大きな片翼を背負う少女は派手なオレンジの着物を羽織り、少年は袴の様な形をした漆黒の装束を身に纏っていた。
そんな事を考えている時間は無かった。少年の袖口から先程の鎖が発射され、木で作られた我が家は破壊されてしまった。
「なにしてるのツクヨミー!私にも壊させてよ!」
「姉さんに任せると森ごと滅ぶから嫌だよ。ほら、僕らは対象を殺すだけなんだから。」
ツクヨミと呼ばれた少年は鎖をアストラルの首に巻きつけ、尖った刃先を喉元に柔らかく当てる。
苦しさにもがき続ける兄を目前にしたライアは、朱雀を身に纏い鎖を断ち切る。
「また仲間が殺されるなんて結末は嫌なんだ。悪いが、帰るか死ぬか選んでくれ。」
ライアは燃える翼を二人の鼻先で鋭利な刃物のように変化させた。
「ふふふっ…あははっ…」
少女は翼を掴むと、まるで蒸発するかの様に期待へ成り下がってしまった。
「こんな低温の炎で私を殺そうとしてたの?」
少女は悪魔の様な笑顔でライアに近づき、小さな太陽を創り出し皮膚に少しだけ触れる。
その瞬間には『熱』という感覚だけを覚え、ライアの身体は炎に包まれていた。
「————っ!」
きっと、この悲鳴は声になっていないだろう。
誰にも聞こえるはずのない悲鳴は燃える炎の真ん中で反響する。
仲間が死ぬとか、身内が死ぬとか、そんな心配以前に自分の無力さを責めるべきだって、あの時だって…ココロが死んでから…殻に籠もった時から気づいていた。
無力だ。無力だ。なにも出来ない。繰り返される悲劇に抗えなかった。人間がこの世界にまた来ることになるのか。
…嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
こんなところで死ぬわけにはいかないんだ。
人間がいるこの世界はもう作りたくないんだ。もう一度助けてくれよ。紅竜の起源。俺に力をくれよ———。
「…四神を継承して尚、更に力を求めるか。本当に都合のいい生物に成り果てたものだ。」
「頼む。もう一度だけ。力を貸してくれ。」
「なにをほざいておる。貴様はもう————×××じゃろう?」
ライアの燃える体を見て楽しそうに笑う少女。
無邪気と言わずしてなんと語るべきか。
しかし、ライアを覆う灼熱は少しずつ小さくなっていき、そのうちに無くなってしまった。
残っているのは灼眼に染まったライアのみ。
とてつもないスピードで二人の元へ向かい、笑いながら少女と少年の腕を掴み引き千切った。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ‼︎」
千切れた二本の腕を投げ捨て、本体を狙うライアの姿は少女の悪魔の様な笑顔とはまた異なる、歪な悪魔の笑顔。
新しい玩具を見つけた子供の様に少年本体の首を絞め、千切れた腕の場所から見える折れた骨に集中的な振動を与えたのち、心臓の位置へライアの背から産み出される赤黒い羽が次々と突き刺した。
ボロボロになった古い玩具を投げ捨て、少女の元へ移動する。瞬間的な打撃によりゴムの如く弾け飛んだ少女の身体は血を生み出す生物の残骸でしか無かった。
「ライア………?」
アストラルの声は届いている筈もなく、その場に生きる生命体を抹消するだけのプログラムになっていた。
「オリジン継承の際に不具合でも起こっていたのか…?」
瓦礫の中から這い出たカルは、アストラルに語りかける。
「オリジンを継承する際、継承者が了承していなければ稀に闇に支配される…その例の一つだな。」
落ち着いた口調だが、見れば相当焦っていることが判る。
「元に戻す方法は——」
アストラルの質問にたいし、カルは首を左右に振った。
これで私達は終わりだ——。そう語って暴走を続けるライアを見つめていた。
ライアは暴走を続ける中、本当の人格は裏で闇に語りかけていた。
「もうやめてくれ。これは、俺の望んだ結果じゃない…。」
「何を言っている。力が欲しいと言ったのは貴様だろう?」
「これじゃあ、元にも戻れないじゃないか。」
「そうやって他の者に頼り、都合が悪いとすぐ他人のせいにする。貴様も人間も、同じ様な物じゃないのか?」
「ふざけるなっ!俺は人間なんかと…同格じゃ……ないんだ…!」
「ならば示せ。お主が自らの力で全てを終わらせ、全てを叩き潰す覚悟を。」
闇は根元から絶たれ、オリジンとはまた違う姿で現れた破壊の限りを尽くした元悪魔は、口を開いた。
「俺はオリジンに頼らない。これからは俺のオリジナルだ。」
朱雀の面影を残したまま、デザインを大幅に変えた衣装は血よりも黒く闇を感じさせるが、白いラインは純白に染められ、コントラストが表現されている。
『ふッざけんなよ……どいつもこいつも殺されやがって…』
甲高い声は、空から落ちてきた大きな青年による者だった。
「我はバハムート。鍵を手に入れ、この世界と人間界を再び繋ぐ者。」
丁寧な口調の青年が口にした言葉。それは、自分がこの事件の主犯である事。
「テメェらが俺らを壊滅して鍵を奪い返そうと無謀な事をしている事は知らなかったがまぁいい。俺の目的はアストラルだけだ。」
バハムートは指をアストラルに向け、指先から紫色のエネルギー弾を繰り出す。
「アストラル…テメェの脳に埋め込まれた鍵を手に入れないと保管庫が開かないんだよ。大人しく来てもらうぞ。」
アストラルは攻撃を避けながら必死に水を走らせ、抵抗を繰り返す。
「そこで銃を構えている女と四神の餓鬼…大人しくしてろ。殺しはしねーよ。」
そんな言葉に従う気は二人共々有るわけなく、攻撃を繰り出す。
バハムートは地割れを起こし、ライアとカルは動きを封じられたが、それでも必死に攻撃を繰り返す。
「クソがぁっ!」
「愚かだな…。」
掌を天に仰ぎ、大きな気弾を構えたバハムートは、ライア達に向かい手を振り下ろした。
平地と化した森には動く事なく倒れ込む姿の二人が居た。
「バハムート…ふざけるなよ…!」
かろうじて動けていたアストラルは、口を開いた。
それに対し、バハムートは論を述べる。
「本来テメェがあの場で負けてなければこんな結末は無かったんじゃねーのか?薄々感じてんだろ?こんな展開になってしまったのは自分のせいだって、よ。」
違う…違うんだ。違う。絶対に違う。
「俺は——」
口を開こうとした刹那、久し振りに有る声を聞いた。
「おにーさん無茶しすぎだよ?」
「全く、何かあったら呼んでって言ったじゃん。」
それは、ミヤビさんと——
あの時。教室で重力を操った正義の味方ごっこの青年だった。
「…ミヤビ……レクト…てめぇら生きてやがったのか。」
レクトと呼ばれた青年は前回同様笑いながら答える。
「だ~か~ら~勝手に殺すなって。」
ミヤビさんが白虎を纏い、喋り出す。
「僕らはあんたら潰す為にオリジン継いだんだ。本命を殴れるならそれで僕は満足だよ。」
言うが早いかミヤビさんはいつも通り素早い動きで攻撃を始める。
「はぁ、俺が最後なんだよな。全く、世にも珍しい四神オリジンがどうしてこんなに集まるんだか。」
レクトは、背中に無数の蛇を従え、体中を六角形の紋章で覆い尽くす姿へ変化した。
「正直さ、玄武は攻撃型じゃねぇからミヤビに頼むぜ?」
ミヤビさんは全然大丈夫だよ。と、声を響かせた。
「たかが継承者如きが何出来るんってんだ……ッ⁉︎」
叫んだ瞬間だった。バハムートは地に伏せるように倒れ込んだ。
「玄武の能力は惑星のあらゆる能力を操るんだよ。重力もその一つだ。」
ミヤビさんはライアとカルを起こし、心臓の位置へ手を当て攻撃を繰り出す。心臓のドクンと動く音と共に、二人は血を吐きつつ意識を取り戻したのち立ち上がった。
「さっきはよくもやってくれやがったな…」
「クソ共がぁ…」
言うが早いか、その場からバハムートの姿は瞬間的に無くなった。
一人の外道に趣味と称されココロは殺された。
怒りや恨みなんて、その外道を殺した瞬間に晴れただろう。それでもなお感じ続けるのは、己の無力さと救いを求めるココロを助けられなかった申し訳なさ。
「そろそろ戻ったらどうだ。悲しいのは分かるが、悔やんだって戻って来るわけでも無いんだからな。」
カルは、少しも発言をオブラートに包む様子は無いようで、単刀直入に言い切ってしまった。
「………解ってる。何をしたって戻ってこないって。…それでも俺は…怖いんだよ。またあんな風に、誰か死ぬんじゃないかって…」
ライアの心情は誰しもが思う物だ。
絵の中で殺したいを繰り返している者だって、身内が死ねば悲しむに決まっている。
夜。それは明るく染められた世界を闇に包み込み、光る月は全ての生物を誘導するたった一つの道しるべ。
見つめる月には美しいと語る者も居れば、闇に染められた世界を照らす光なんて必要ないと、語る者もいる訳で意見は別れる事になる。
「月…かぁ…」
月には特に思い入れがある訳ではないが、時に美しい。と、感じる時がある。
「なに黄昏てんだよ。」
屋根に寝そべるライアの目に映るのは、二階の窓から見下ろす兄の姿だった。
兄は、いつもの口調で語りかける。
「まだ考え込んでやがるのか。いい加減に元に戻れよ、いつあいつらが仕掛けて来るのか…」
瞬間に、月から鎖に繋がれたらクナイの様なものが飛んできた。
同時に、とてつもない熱風を仰ぎながら二人の子供の影が浮かぶ。
「ボスの命令は殺害対象のアストラルだけだったよね。」
「えー?そうだっけ?どっちにしろ殺すんだしさ、みんな殺そうよー?」
大きな片翼を背負う少女は派手なオレンジの着物を羽織り、少年は袴の様な形をした漆黒の装束を身に纏っていた。
そんな事を考えている時間は無かった。少年の袖口から先程の鎖が発射され、木で作られた我が家は破壊されてしまった。
「なにしてるのツクヨミー!私にも壊させてよ!」
「姉さんに任せると森ごと滅ぶから嫌だよ。ほら、僕らは対象を殺すだけなんだから。」
ツクヨミと呼ばれた少年は鎖をアストラルの首に巻きつけ、尖った刃先を喉元に柔らかく当てる。
苦しさにもがき続ける兄を目前にしたライアは、朱雀を身に纏い鎖を断ち切る。
「また仲間が殺されるなんて結末は嫌なんだ。悪いが、帰るか死ぬか選んでくれ。」
ライアは燃える翼を二人の鼻先で鋭利な刃物のように変化させた。
「ふふふっ…あははっ…」
少女は翼を掴むと、まるで蒸発するかの様に期待へ成り下がってしまった。
「こんな低温の炎で私を殺そうとしてたの?」
少女は悪魔の様な笑顔でライアに近づき、小さな太陽を創り出し皮膚に少しだけ触れる。
その瞬間には『熱』という感覚だけを覚え、ライアの身体は炎に包まれていた。
「————っ!」
きっと、この悲鳴は声になっていないだろう。
誰にも聞こえるはずのない悲鳴は燃える炎の真ん中で反響する。
仲間が死ぬとか、身内が死ぬとか、そんな心配以前に自分の無力さを責めるべきだって、あの時だって…ココロが死んでから…殻に籠もった時から気づいていた。
無力だ。無力だ。なにも出来ない。繰り返される悲劇に抗えなかった。人間がこの世界にまた来ることになるのか。
…嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
こんなところで死ぬわけにはいかないんだ。
人間がいるこの世界はもう作りたくないんだ。もう一度助けてくれよ。紅竜の起源。俺に力をくれよ———。
「…四神を継承して尚、更に力を求めるか。本当に都合のいい生物に成り果てたものだ。」
「頼む。もう一度だけ。力を貸してくれ。」
「なにをほざいておる。貴様はもう————×××じゃろう?」
ライアの燃える体を見て楽しそうに笑う少女。
無邪気と言わずしてなんと語るべきか。
しかし、ライアを覆う灼熱は少しずつ小さくなっていき、そのうちに無くなってしまった。
残っているのは灼眼に染まったライアのみ。
とてつもないスピードで二人の元へ向かい、笑いながら少女と少年の腕を掴み引き千切った。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ‼︎」
千切れた二本の腕を投げ捨て、本体を狙うライアの姿は少女の悪魔の様な笑顔とはまた異なる、歪な悪魔の笑顔。
新しい玩具を見つけた子供の様に少年本体の首を絞め、千切れた腕の場所から見える折れた骨に集中的な振動を与えたのち、心臓の位置へライアの背から産み出される赤黒い羽が次々と突き刺した。
ボロボロになった古い玩具を投げ捨て、少女の元へ移動する。瞬間的な打撃によりゴムの如く弾け飛んだ少女の身体は血を生み出す生物の残骸でしか無かった。
「ライア………?」
アストラルの声は届いている筈もなく、その場に生きる生命体を抹消するだけのプログラムになっていた。
「オリジン継承の際に不具合でも起こっていたのか…?」
瓦礫の中から這い出たカルは、アストラルに語りかける。
「オリジンを継承する際、継承者が了承していなければ稀に闇に支配される…その例の一つだな。」
落ち着いた口調だが、見れば相当焦っていることが判る。
「元に戻す方法は——」
アストラルの質問にたいし、カルは首を左右に振った。
これで私達は終わりだ——。そう語って暴走を続けるライアを見つめていた。
ライアは暴走を続ける中、本当の人格は裏で闇に語りかけていた。
「もうやめてくれ。これは、俺の望んだ結果じゃない…。」
「何を言っている。力が欲しいと言ったのは貴様だろう?」
「これじゃあ、元にも戻れないじゃないか。」
「そうやって他の者に頼り、都合が悪いとすぐ他人のせいにする。貴様も人間も、同じ様な物じゃないのか?」
「ふざけるなっ!俺は人間なんかと…同格じゃ……ないんだ…!」
「ならば示せ。お主が自らの力で全てを終わらせ、全てを叩き潰す覚悟を。」
闇は根元から絶たれ、オリジンとはまた違う姿で現れた破壊の限りを尽くした元悪魔は、口を開いた。
「俺はオリジンに頼らない。これからは俺のオリジナルだ。」
朱雀の面影を残したまま、デザインを大幅に変えた衣装は血よりも黒く闇を感じさせるが、白いラインは純白に染められ、コントラストが表現されている。
『ふッざけんなよ……どいつもこいつも殺されやがって…』
甲高い声は、空から落ちてきた大きな青年による者だった。
「我はバハムート。鍵を手に入れ、この世界と人間界を再び繋ぐ者。」
丁寧な口調の青年が口にした言葉。それは、自分がこの事件の主犯である事。
「テメェらが俺らを壊滅して鍵を奪い返そうと無謀な事をしている事は知らなかったがまぁいい。俺の目的はアストラルだけだ。」
バハムートは指をアストラルに向け、指先から紫色のエネルギー弾を繰り出す。
「アストラル…テメェの脳に埋め込まれた鍵を手に入れないと保管庫が開かないんだよ。大人しく来てもらうぞ。」
アストラルは攻撃を避けながら必死に水を走らせ、抵抗を繰り返す。
「そこで銃を構えている女と四神の餓鬼…大人しくしてろ。殺しはしねーよ。」
そんな言葉に従う気は二人共々有るわけなく、攻撃を繰り出す。
バハムートは地割れを起こし、ライアとカルは動きを封じられたが、それでも必死に攻撃を繰り返す。
「クソがぁっ!」
「愚かだな…。」
掌を天に仰ぎ、大きな気弾を構えたバハムートは、ライア達に向かい手を振り下ろした。
平地と化した森には動く事なく倒れ込む姿の二人が居た。
「バハムート…ふざけるなよ…!」
かろうじて動けていたアストラルは、口を開いた。
それに対し、バハムートは論を述べる。
「本来テメェがあの場で負けてなければこんな結末は無かったんじゃねーのか?薄々感じてんだろ?こんな展開になってしまったのは自分のせいだって、よ。」
違う…違うんだ。違う。絶対に違う。
「俺は——」
口を開こうとした刹那、久し振りに有る声を聞いた。
「おにーさん無茶しすぎだよ?」
「全く、何かあったら呼んでって言ったじゃん。」
それは、ミヤビさんと——
あの時。教室で重力を操った正義の味方ごっこの青年だった。
「…ミヤビ……レクト…てめぇら生きてやがったのか。」
レクトと呼ばれた青年は前回同様笑いながら答える。
「だ~か~ら~勝手に殺すなって。」
ミヤビさんが白虎を纏い、喋り出す。
「僕らはあんたら潰す為にオリジン継いだんだ。本命を殴れるならそれで僕は満足だよ。」
言うが早いかミヤビさんはいつも通り素早い動きで攻撃を始める。
「はぁ、俺が最後なんだよな。全く、世にも珍しい四神オリジンがどうしてこんなに集まるんだか。」
レクトは、背中に無数の蛇を従え、体中を六角形の紋章で覆い尽くす姿へ変化した。
「正直さ、玄武は攻撃型じゃねぇからミヤビに頼むぜ?」
ミヤビさんは全然大丈夫だよ。と、声を響かせた。
「たかが継承者如きが何出来るんってんだ……ッ⁉︎」
叫んだ瞬間だった。バハムートは地に伏せるように倒れ込んだ。
「玄武の能力は惑星のあらゆる能力を操るんだよ。重力もその一つだ。」
ミヤビさんはライアとカルを起こし、心臓の位置へ手を当て攻撃を繰り出す。心臓のドクンと動く音と共に、二人は血を吐きつつ意識を取り戻したのち立ち上がった。
「さっきはよくもやってくれやがったな…」
「クソ共がぁ…」
言うが早いか、その場からバハムートの姿は瞬間的に無くなった。
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