Seoul the world

軍艦あびす

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Ⅶ under world dragon

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 バハムートとの戦いから一ヶ月が経とうとしていた。
ライア達三人は、レクトが会長として務める『魂操者』という称号を手にした者の集まる連合への加入を決めた。
 既に四人幹部として入会していたのにもかかわらず、仕事が嫌で脱走して森で生活していたミヤビさんは、自室に籠り沢山の書類と悪戦苦闘を繰り広げていた。
「うぇー、ミカゲちゃん書類終わんないよー!」
 どうせまた逃げ出すだろうと、レクトさんはミヤビの仕事に見張りとしてミカゲと呼ばれた少女を配置したのだった。
「そんな事言われましても、私にはどうしようもないので………」
 苦笑いで淡々と答えるミカゲは、全然手を付けていない山積みの書類の隙間から顔を覗かせる。
「なんでこんなに書類溜まってんの⁉︎ねぇ⁉︎」
「それはミヤビさんが一年程全く手を付けなかったからです。」
 突っ伏した顔を机に叩き続けながらミヤビは叫び続けた。
「……白虎使っても良いんですよ?」
 その手があったか。みたいな顔でミカゲを見つめるミヤビは、早速白虎を身に纏い手だけを高速で動かし始めた。
 
「っ終わったぁぁー!」
 結局三十分程白虎を纏ったまま、山積みだった書類は全ての記入欄を埋めた状態で部屋の床を埋め尽くしていた。
「っじゃーね!ミカゲちゃん!ちょっと行ってくる!」
 窓を開け放ち、外へ飛び降りたミヤビは、三階の高さを何の恐怖も無く飛び去っていった。
「あっ!ちょっとミヤビさん…!」
 窓から身を乗り出しミヤビを目で追うミカゲは、ため息をついて呟いた。
「…まだ半分も終わってないのに…」
 
「ほー、部屋に入りきらなかった分の書類を外に置いてたら、ミヤビは終わったと勘違いして出てったって事か。えー、半分どころか十分の二くらいしか終わってないじゃんこれ…」
 ミヤビが姿を消したのち、ミカゲの報告を受け部屋の前にやって来たレクトは珍しく笑顔の中に怒りを隠していた。
「…あの男装癖…帰ってきたら俺が見張ってやろうじゃねぇか…」 
 そんな修羅の如く表情に怒りを隠したレクトの元に兄弟が通りすがった。
「…どーしたんすかレクトさんそんな分かりやすい怒り方して…」
 恐る恐るライアが問う。
「…いや、またミヤビが脱走したんだけど…」
 またかよ…と、二人は頭を抱えた。
「あ、ライア君いた!ちょっと時間いい…ん?」
 いきなり現れたミヤビに向けられるのは、最早怒りしか感じられないレクトの表情だった。
「どーしたのレクトそんな怖い顔して…おふっ‼︎」
 レクトはミヤビの頭部を殴りつけ、胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「…仕事をするぞ………?」
 普通に怖いレクトを見て、ライアは少しビビっていた。
「…だからモテないんだよ…」
 ミヤビは顔を赤らめながら呟いた。
「なんで俺がモテねぇ話になるんだよ!」
 意外とキレていた…どっちかっていうとツッコミみたいな感じでレクトは叫んだ。
「だって…勝手に体触るし、しかも胸ぐら掴んでくるし、あと頭殴るし…」
 普通に乙女化してしまったミヤビになんて声をかけていいか分からずに戸惑う三人の姿がそこにあった。
「おい、ミカゲー!なんとかしてくれー!」
 泣きながらレクトに抱きつくミヤビに戸惑いながらも、最善策であろうミカゲに頼ることにした。
「なんですかレクトさん。」
「なんかミヤビがおかしくなったんだけど…」
 分厚い生地の冬用メイド服を着たミカゲはミヤビを胸中に収め、相槌を打ちながら、ミヤビの話を聞いていた。
「…だいたい判りました……あの…」
 ミカゲはレクトの方を向き、無機質な目で口を開いた。
「100%レクトさんが悪いです。」
「なんでだよ!」
 建物の中を響き渡るレクトの大声は外で竹刀を振っていたカルにまで届いていた。
「………?」
 一瞬首を傾げ、また何事も無かったかの様に竹刀を振り続けるカルには、どこか哀しげな表情があった。
 
 竹刀を振り続けて早四日。
 彼女の何がオリジンを継がせたのか。その話はまた次の機会にしよう。と自分に言い聞かせ、また一歩、足を引きまた前へ…竹刀を振る。そんな動作を繰り返すだけの行為を続けていた。
 ライアの声がした。そちらを向くと、他の皆も集まってくる。
「何を真面目にずっと修行なんてしてるんだ?」
 今度はアストラルの声。こんな状況だからこそ皆の言葉の一つ一つが大切に思えてくる。
 カルはライア、アストラル、ミヤビ、レクトに一切を打ち明ける事にした。
「大人しく聞いてくれ…もうすぐこの世界は滅ぶかも知れない。」
カルは珍しく怯えた声色で話を続けた。 
「青龍の危険予知能力で巨大な力を感じ取った。バハムートではない、それ以上に強大な……おそらく…時空異竜。」
 時空異竜。それは、四千年に一度現れる災厄。あらゆる世界線と時間軸を捻じ曲げ新たな一つの世界を創り出す創造神。かつての全オリジンが闘っても討ち取る事が出来なかった最強で最恐の存在。
 そんな化け物が、近いうちに現れる。カルはそう語った。
 四神の力に狂いはない。万が一時空異竜でなくとも大きな脅威である事に変わりはない。
 早急に部屋へ戻り、対策を練り始めた五人はある結論に辿り着いた。
『全種の継承者を集める事。この地の加護を最大まで引き上げる事。この二つが最善の策だ。』
 レクトとミヤビはオリジン継承者に応援を求める間、残った三人はこの地に加護を造る『杭』の前に居た。
 この地には五本の大きな杭が刺さり、五角形で国を囲う様に加護を生み出していた。
 加護を上昇させるには、各杭の番人を倒し、認められる必要があるらしい。
 杭の周りは鎖で囲われており、ここより先に近づく事は法律により出来ないらしい。
「その法律までも抜けれるとかこの連合どーなってんだよ。」
 鎖を乗り越え、杭の前に掘られた穴を降りて番人とやらを見つけるためダンジョンに臨んだ。
 しかし入るとすぐそこに番人は居た。
 長くなるだろうとクソデカいリュック背負わされたが、ただの荷物になった。
「あ……ど、どうも…私…門番やってますリナと申します…加護ですか?それとも…道場破りですか?」
「ここ道場じゃないよね。」
 すかさず無慈悲にも突っ込んだ。後悔はしてない。
 しかしなんだ、この子を見ていると忌まわしき記憶が蘇る。それは悲しく、己の無力さに嘆いていた日に旅立ったかつての仲間を……
 危うく本来の目的を忘れてしまうところだったが、なんとか現実へ引き戻してくれたのはカルの「加護」という言葉だった。
「加護ですね。それじゃあ…私に貴方たちの魂を見せて下さい。私も出来る限り手加減せずに闘いますので…」
 そういうとリナは立ち上がり、靴を脱いで歩み寄り笑顔を見せた。
「それでは…始めましょうか?」
 視界から何かが消えた。その何かの正体がリナの身体であると理解するのに数秒を使った。
 背後からのかかと落としに反応できずモロに食らってしまい、その消えた正体を掴むこととなった。
「ッ…早い‼︎」
 生地がかなりの量重なっている服を纏いながらこのスピードである。スピードが遅くなるスカート状の衣服でのかかと落としを瞬時に繰り出せるスピードに絶句した。 
 その場凌ぎで朱雀オリジナルを纏い、賢明に目で姿を追った。無論、目では追いきれなかったが。
 気づけばアスとカルも強烈な一撃を食らった様子で倒れ込んでいた。
「嘘だろッ⁉︎」
 そもそもこの地を守る力に制御が何故必要なのか。
 強すぎる故に生物を寄せ付けなくなるからである。
 加護を破れるものが万が一居たとして、加護の中を占拠し独立国を生むことになるであろう事態を回避するため、認められなければならないという条件が生まれた。
 つまり『加護を破る力よりも強い番人が必要』である為、事実加護を破れない者に番人を倒すことは不可能であった。
「この程度では…加護を強くする証明にはなりません。私はここでいつでもお待ちしておりますので…。」
 完敗だった。舐めてかかった訳ではない、これが今の限界だったという訳だ。
「…私も時空異竜の気配は感じています。しかし盟約に誓った以上掟は厳守しなければならないのです…。」
 時空異竜の事を知っていた。この番人は四神を二人倒しているのだ、おかしい事ではない。
「だったら…リナさんも一緒に戦ってくれよ…」
「それは出来ません。盟約に誓った身ですので。」
 無機質な返答に言葉を返す事は無かった。
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