歪ミノ咎学園

軍艦あびす

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第33話 ブキミ→ダイスキ

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 これは一年二組のある生徒から聞いた話だ。

 うちの学校には、中庭に植えられた大樹がある。春になれば見事な桜を咲かせる木だ。その木の下で快晴の日に告白すると必ず恋が実ると噂がある。
 そんな噂に最適なのがその日だった。
 その日は休み時間に中庭を眺めていると二人の生徒が木の下で向かい合っていた。その後、二人の生徒は行動を共にする姿をよく見かける様になった。
 それは『普通』なのだろう。そんな『普通』なのにそこまで目につくのはおかしくないかと疑問を抱いた。
 この学校にもそういう関係の人間は沢山居るだろう。しかし、この二人だけが異様に目につくのだ。
 
 ある日、また廊下でその生徒二人とすれ違った。
 次の時間も、教室の前を歩いて行った。
 その次も教室から出た途端に二人を目撃した。
 その後も。その後も。何度も何度も。
 異様に目につく?違う。
『必然的に出会うことを強いられている』
 
 時が経つにつれて、二人の生徒の顔が脳裏にこびりついていった。夢にまでそのままの顔で登場するほどまでにその顔は鮮明に覚えていた。
 画力さえあれば違わずに顔を描くことが出来るだろうというほどまでに。 
 普通の顔をしているのに。
 普通の中学生相手に。
 その顔に恐怖を覚えてしまう。
 
 学校が怖くなった。あの二人に出会うのが怖いのだ。
 何かしらを届けに来てくれたであろう制服を着た人間が家の前に立ち、インターホンを鳴らした。
 二階の窓から覗くと、あの二人が立っていた。
 不気味な笑顔でこちらを睨み、インターホンを鳴らし続けていた。
 ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…ピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポ………
 やっと分かった。あの二人が目についていた理由が。
『私はこの男に恋をしてたんだ』
 だって私、今とても嬉しいもの。彼がお見舞いに来てくれた事が……とっても…ウレシイ…
 私は台所から包丁を持ってきて玄関を開け、女の方を刺し殺した。
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