歪ミノ咎学園

軍艦あびす

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第36話 まだ、正常?

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 期末テストが終わり終業式を迎えていた今日この頃。
 皆はしゃぎ過ぎて問題を起こさぬようにと何処の校長でも言いそうな事を聴いて、僕らの狂った学校は夏休みを迎えた。
「お前ら‼︎カラオケ行くぞぉぉぉぉ‼︎」
「部活だっつってんだろぉぉぉぉ‼︎」
 伊奈平の誘いを怒号で返す渡辺。
 憂鬱な夏休みになるだろう。とりあえず、お盆らへんにみんなの墓参りくらいは行ってやろうと思った。
 
 図書室は冷房が掛かり、快適な空間になっていた。平林と僕は本棚の前に立ち、棚を物色していた。
「…なぁ、平林。お前は……普通なんだよな?」
 平林は特に態度を変える様子もなく本棚から外国人の書いた有名なホラー小説を手に取って口を開いた。
「普通……ねぇ。西船橋はどう思うの?あんな…馬鹿な集団がいる日常が普通かと訊かれたら、普通じゃないとは言い切れないでしょ?だって、人間なんて人それぞれだし、人の意見を貶したり否定したりしていい理由なんて存在しない。まあでも人が死んでいくのが普通かと聞かれれば異常だと俺は答える。そう答えられる『うち』は、普通なんじゃないかな?」
 うち。と言うことはいつかは『異常』に成ってしまうのか?
「正直に答えてくれ。平林はあの馬鹿共を『殺したい』と思うか?」
 真剣な顔になっていたのだろうか。平林は表情を緩めて口を引きつらせ言った。
「お前が知ったところで人の意見を否定する理由は存在しない。俺があいつらを殺したいと思っていても実際手を染める訳無いじゃないか。そう言うところを踏まえて言わせて貰うよ。人間は嘘つきだ。そして俺も嘘今、あいつらを殺したいと嘘をついた。」
 本当に人間は嘘つきなのだろうか。
 この世界の殺すという発言と殺された人の数は勿論比例するわけない。僕は人殺しが非科学的というつもりは無いが、問いかけた。
「なんでこの世界じゃ、非科学的な事がこんなに起こるのか…分かるか?」
 平林は少し考え、答えを口にした。
「おかしくなっちゃったからでしょ。例はこっくり様とか?」
 僕は言い返す事が出来なかった。彼が何かを知っているのではという期待があり、そこに自分の名前が分からないヒントが得られるのではと少し何処かで期待していたのだろう。
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