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8.もう居ない

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 男が何かを言ってるのに、全然意味を理解できない。
 探してたって何? 見つけたってどういうこと? 私たちは初対面だ。約束なんて知らない。
 
「しらな……い! あんたなんか……しらな、ひぃぃんっ」

 太く固いもので遠慮なく奥を捏ねられて、目の前に星が飛んだ。気持ちの良さに一瞬意識まで飛びそうになる。

「アリーサっ! 俺は一日たりとも、忘れたことは、なかったのに! 訓練で殺されかけても、ドラゴンに炎を吐かれても! なのにお前はっ、勝手に村からいなくなって……! 俺がどんな気持ちで……っ、国中を探したのかっ! お前が誰彼構わず寝るような女だと、俺が知った時どんな気持だったのか……! それを、知らないなど……っ!」

 抵抗すらできないくらい激しく揺さぶられて、突き込まれて。
 身体が勝手に変換する気持ち良さに、肉体だけが高められる。でも私がイっても男の動きは少しも緩まず、それどころか益々激しくなる。

「……ヨアキ、ム?」

 勝手に口から出てしまう嬌声の合間に、もしかしてとふと思い出した名前を口にした。
 瞬間にぴたりと男の動きが止まる。

「ヨアキム、なの?」

 涙と涎とでべとべとだろう顔で後ろを振り返った。

 濃い茶の髪という特徴は確かに一致しているような気がする。
 でもヨアキムはこんなに鋭い目はしていなかった。それに身体もとても小さくて、ほっぺたもぷにぷにで、大きくて丸い目をした天使みたいな男の子だった。

 この男がヨアキムなはずがない。
 浮かんだ自分の考えを即座に否定した。ヨアキムはもう居ない。居ないんだから。



 小さい頃、私には幼馴染の男の子がいた。
 隣同士の家でいつも一緒で、私たちは兄妹のように育った。

 ヨアキムは女の子みたいに可愛かったけどそれでも男らしい一面もあって、私をいじめて泣かせてくる男の子とはよくケンカをしてくれた。
 でもそうするとヨアキムのキレイな顔に傷が付くから私はもっと泣いちゃって、よくヨアキムに『僕は男の子だから大丈夫だよ』って抱きしめてもらっていた。

 ヨアキムは一歳年上だったけど身体の大きさは私と変わらなくて、でも中身は間違いなくお兄ちゃんだった。

 関係が変わってしまったのは隣の家で火事が起きた事が原因だった。
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