F級スキル持ちのモブ陰キャ、諦めきれず毎日のようにダンジョンに潜ってたら【Lv.99999】まで急成長して敵がいなくなりました

藍坂いつき

文字の大きさ
13 / 74
第1章「始まり」

第13話「氷姫の信念」

しおりを挟む

「し、しずくっ……なんで一緒にお風呂なんて言いだすんだよ」
「何、お兄ちゃんは私と入るのは嫌なの?」
「別に、嫌とかじゃないけど……だって俺高校生だし、雫だってもう中学生だし……恥ずかしいのかなって」
「恥ずかしくないよ? だって家族だしっ」
「それはずるいだろ……」
「えへへぇ~~」

 湯船に浸かる俺と雫。
 一応、念のため言っておくが俺と雫が入っているのは一人用の湯船だ。体がほぼ大人になった男女が入れば流石にパンパンでお湯も今にも溢れそうだった。

 にしても、二人で入るのは何年ぶりだろうか。
 多分、中学生……いや、小学生ぶりか。俺が16歳で雫が14歳だから意外と歳近いんだよな、俺たち。普通に俺のクラスにいる女子とまったく遜色ないくらい発達している。

 って、そんなこと言っても、妹には発情しないけどな。
 昔、本当の妹に恋するアニメがあったと孤児院のおじちゃんが言っていたけど、さすがに恋心は抱かない。

 ただまぁ、愛してはいる。

 綺麗な体だ。起伏があり、胸も中学生にしては大きめ。将来は有望株。モテすぎて恋愛が嫌になるくらいの女性だろう。

「お兄ちゃん。さっきからえっちな目でどこ見てるの?」
「んな!? だ、誰がえっちな目をしてるんだよっ!!」
「だって、さっきから私の胸ジロジロ見てくるじゃん……変態っ」
「っんぐ」

 妹からの「変態」は胸にくるものがあった。
 そして、雫の頬が若干赤くなっているのは気のせいだろうか?

「……どうして、赤くなってるんだよ」
「え、赤く? 私が?」
「そうだよ。雫の方こそ変なこと考えてるんじゃないのか?」

 そう訊ねると少し悩んだ顔をして答えた。

「私、お兄ちゃん好きだからかな?」
「は、え?」
「もちろん、家族的な意味だけどね。でもお兄ちゃんすっごく雫のこと考えてくれるし、大好きだよ?」

 急な言葉には俺の顔は熱くなった。
 なんだ、これ。めっちゃ嬉しいんだけど。てか最高だな、俺のマイラブリーシスターエンジェルしずくたん!

「でも……さすがに私の発情するのはやめてね? 私、好きな人いるんだから」
「別に発情なんてしてなーーってえ!? すき、好きな人がいるのか!?」
「まぁそれはうん。いるけど……」

 なんだ、誰だよ俺の妹に唾つけてやがる男は!
 俺の眼前に現れてみろ、ぶっ叩いて……っていや、いつから俺は怖い頑固親父になったんだ。
 
 驚きながらも胸を落ち着かせて「ふぅ」と一息。

「ま、まじか……雫に好きな人が」
「うん……っでも、なんか言うのは恥ずかしいね、へへっ」

 俺が一丁前に恋愛をする妹に感服していると、雫は頬を赤ながらにへらと笑う。

 体もくねくねと動かしているのが俺の目には可愛く映った。

「まぁ、そうだなぁ」
「お兄ちゃんは好きな人とか、いないの?」

 すると、恥ずかしそうに顔を赤くした雫は俺に話を振ってきた。

「俺は……そうだなぁ。好きな人って言われると難しいなぁ」

 好きな人。
 そんな響きはもうかれこれ数年間聴いていない。小学生の時は施設でよく遊んでいた女の子が好きだったことはあったけど、その子とは今も連絡は取れずじまいだし、結局中学に入ってからは地獄のような勉強の日々でそんな匂いは一ミリもなかった。

 そして、今高校生になって青春できるーーっていうわけでもなく。やっぱり探索者の学科では、強い人が圧倒的にモテるし、俺みたいな雑魚は女子に相手にすらされないからな。

 そう言う意味では好きな人なんていない、かな……。

 そんなふうに考えたところで、ふと顔が浮かんできた。




『——できるとかどうかじゃないわ。私がやらなきゃだめなのよ』




 あの、力強く言って見せた彼女の顔がふとおもいうかんだんだ。
 
 それを思い出して、俺は思う。
 そうか、俺は彼女のことが好きなのか?

 あの強さの中に見える弱さが自分と似ているというか、重ねてしまっていた。

 いや、好きと言うよりも憧れか。

「憧れの人でもいいけど……」

 それなら、言える人は一人いるかもしれない。


「そうだな。憧れの人は見つかったかな?」






――――――――――――――――――――

※追記

 その翌日の話。

 こんばんは、どうも世界一何も持っていないF級探索者、國田元春です。

 今日も今日とてジン君とクサビ君にパンを買ってこいといじめられ、挙句の果てには狭い部屋に閉じ込められています。

 あぁ、ちょっと語弊があったかもしれません。

 実はその、閉じ込めているのはいじめっ子のクサビ君とジン君ではありません。
 うん、あなたが今思いついただろう場所。

 申し訳程度についた仕切りでほぼ隠れていないトイレに、小さな冷たい水しか出ない洗面台。そして、羽毛なんてまったくと言って入っていない、形だけにせた日本の伝統式寝具、お布団。

 極めつけには小さすぎて開けられもしない窓に、反対側の鉄格子。

「……どうしてこうなった」

 その翌日。
 俺はなぜか、探索者犯罪拘置所の刑務所に入っていたのだ。

 なぜか――そう言うとまるで俺が何もしていないのに捕まった犯罪者みたいに聞こえるが、実際のところ。

 もちろん、理由は理解している。

 俺のレベルがバグっているからだ。
 まぁ、上限100のレベルで99999になっているのは色々とおかしい。俺さえも疑っていたが、最近はものにしようと努力している。

 しかし、その――ものにしようとしたことが仇になった。
 直接的な原因はあのEランク迷宮区に入ろうとした時。
  
 自衛官にステータスを見せた時だ。まさか、通報していたとは思わなかった。だって、そうはいってもF級だよ、俺?

 ただ、自衛官がしたことは間違っていないのも確か。

「くそぉ……ここからの人生、つんだな」

 もちろん、デバイスもすべて奪われていて雫とも連絡つかないし、下校中に拘束されたからもう19時は過ぎているだろう。

 色々と終わった。

 どうしよう、せめて、換金したお金を家に預ければよかった。

 でもまぁ、雫のことは下田さんが何とかしてくれるかな。そう信じるしか、今はできない。

 うすぐらい鉄格子のなかでぼそぼそと呟きながら考えていると、目の前に二人の刑務官が立ち止まる。
 
「これが例のやつか?」
「はい。F級のレベル99999の人です」
「はぁ……鑑定士には見せたのか?」
「一応、ステータスまでは見れませんでしたが……レベルはしっかりと。それに、改ざんされている跡もありませんでした」

 うん、だって俺は何もしていない。
 急に神様がいたずらしただけなんだから。

「まぁ、にしてもなぁ、俺的にはこいつがレベルが99999には見えないけどなぁ」
「ははっ。私にも見えませんよ」

 いくら容疑者だからってここまでディスられると悲しい。
 だいたい、俺だって最近まではそこまで上がっているとは知らなかったからだ。

 それに、急にジン君とクサビ君が怖くなったことだって変に余裕ができたからだと思ってたくらいだ。

 しかし、そんなところで奥からもう一人、刑務官がやってきた。
 デバイスを起動し、驚いた顔で少しだけ重苦しい声を上げている。

「あ、あのっ。探索者ギルドの方から連絡があって——」
「何? ギルドが?」

 おそらく、地位が高いだろうおじさんは俺を一瞥して呟く。

「あいつら、また俺たちの仕事にちゃちゃを入れるのか」
「はい。なんか、無罪放免で逃がしてやれと」
「くそぉ、いくら下部組織だからってそう簡単に犯罪者を逃がしてたまるかよ……」

 さっきまで俺の事はディスっていたのに、どうやら逃がしたくはないらしい。

「……ですが、一応。上の判断ですし」
「っく。仕方ない」

 というわけで、なぜか分からないが——約4時間後。
 
 俺は捕まって解放されたのである。
 





 意味のない、時間を過ごしたのはこれで二度目だった、そんな風に思いながら家に帰り、雫に泣きつかれたのは言うまでもないだろう。
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...