ブルガリブラックに濡れる〜恋人の元・セフレ(攻)を優しくじっくりメス堕ちさせる話〜

松原 慎

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恋人の元セフレ(攻め)を優しくじっくりメス堕ちさせる①

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 大鳥の座る方からいい匂いがする。
 彼の香水の匂いだろうかと考えていたら大きなため息と舌打ちがその思考を打ち消した。

「マジこれ死ぬんじゃねぇの? お前と死ぬの嫌なんだけど」

 相手にするのも面倒なので黙っていたら、長い脚が右から飛んできて僕の脛を蹴飛ばしてくる。

「痛い……」
「無視すんなよ。イライラすんだろ」
「もう、してる」
「だって三十分も閉じ込められてるんだぜ? 空調も効いてねぇこんな狭いとこでさぁ。汗でTシャツびっしょびしょだっつーの」

 時計を確認する。もう三十分といっていたか? 違うだろう、“まだ”三十分しか経っていないのだ。ここからしばらく出られないだろうことを考えるとげんなりした。
 ことの発端は、彼の言う通り。三十分と少し前のことだ。
 ビルとビルの隙間に建てられた、古く細長い建物の中に入った居酒屋を利用し、それなりに飲んで帰宅しようとエレベーターに乗っていたときのことだった。
 あまりに古くガタガタとうるさく揺れるので「止まったら怖ぇー」なんて大鳥が軽口を叩いた直後。明らかに機械の不調では片付けられない揺れが起こった。
 大きな地震、停止するエレベーター……中の電気も消えて一時この狭い箱の中は真っ暗になったが、すぐに予備電力のおかげで明るさを確保されたのが不幸中の幸いだった。最近のエレベーターはその予備電力でトラブル発生時には近くの階まで動いてくれると聞くが、地震の前から振動の激しかったこのエレベーターには当然そんな機能まではついていなかった。
 スマートフォンですぐに状況を確認すれば地震だけではなく都心で大規模な停電が起きているとニュースになっていた。
 今日は金曜日だ。僕らと同じような目にあっている人間が相当数いるだろうことを考えると、数時間待つのも覚悟しないといけないだろう状況だ。
 立っていても仕方ないので嫌々ながら、壁に寄り添って二人で並んで床に座っている。
 この空間は今、かろうじて電灯がついているのみ。残暑のまだ辛い九月にエアコンなしは相当きつい。いつ暗くなるかもわかったものじゃない。
 普段の様子から代謝がいいと思われる大鳥は着ているTシャツが汗で張り付いて気持ち悪いのか、裾を持って忙しなくパタパタと扇ぐようにしていた。
 また何か香りが漂ってきて、イライラした。スモーキーなバニラの香り……ああ、そうか。僕の愛煙している煙草に少し香りが似ているのだ。

「煙草、吸いたい……」
「はぁ!? こんなとこで吸えるわけねぇだろ」
「わかってるよ……」

 大げさな返しにこちらまで腹が立ってくる。というかイライラしすぎだろう。イライラしたって涼しくはならないし早く出られるわけでもないし。諦めて大人しく待っていようと思っているのに、こちらにまで伝染するから大人しくしてほしい。
 大鳥からずーっと香水の香りがしてくる。一度似ていると思ってしまったら煙草のことで頭がいっぱいになってきて、首筋を伝う汗が物凄く気になった。苛立ちをぶつけるように強く爪を立てるようにその汗を拭う。

「大鳥……それ、やめて」
「ああ?」
「扇ぐの」
「いいだろ好きにさせろよ」
「香水の匂いが、きつい」
「チッ。あーそうかよ。くそ」

 なんだこいつ。舌打ちばかりして、みっともない。僕が間違ったこと言ったか? もう会話しないほうがお互いのためだな。
 大鳥と僕はなんとなくたまにこうして飲んだりしているけれど、たまたま接点があったというだけで別に気が合うとかそういうわけではない。こういう状況下におかれるとそれが露骨に出てしまうようだ。
 煙草吸いたいな……吸えないと思うと余計に吸いたくなる。現状吸えないし、さらには何時間後に吸えるんだか。煙草……煙草……いや、こんな風に思考の大多数をイラ立ちの要因に向けるのは良くない(今なら時間、暑さ、煙草、大鳥のことは考えるべきではない)。
 こういう時の癒やし、というか僕にとっての癒やしアイテムは一つしかない。
 出雲。
 出雲しか勝たないに決まってる。
 幸い常に大容量のモバイルバッテリーは携帯しているので、しばらくはスマートファンの電池残量を気にする必要はない。本当ならば自宅で待っているリアルタイムの出雲の映像を眺めたいところだが、通信環境もよくはないし、さすがにそれはやめておこう。ちなみにこの状況になってすぐにメッセージアプリと自宅に設置しているWebカメラで出雲の無事は確認済みである。
 いくつかの隠しフォルダの中から特に気に入ってるものが入っているフォルダを選んで閲覧する。真剣な顔をしてテーブルに向かい、爪の手入れをしているところだ。
 女性のように何か色をつけたりするわけでもないけれど、出雲の手は爪の先まで綺麗だ。なんといっていたかな。甘皮を処理して? ネイルオイルを塗って? 前に説明されたけどよく覚えていない。何をやっているかはよくわからないけれど、真剣な顔と、ちょっと痛そうな顔と、満足気な顔が見れて、爪の手入れをする出雲を眺めるのはとても好きなのだ。

「何見てんの?」

 そうだ大鳥もいたんだった。出雲があんまり可愛くて忘れてた。
 このまま意識を大鳥から遮断しておきたいので、とりあえず無視をする。

「おーい」

 出雲って真剣になるとちょっと唇尖っちゃうんだよな。可愛い。ほっぺたもすこしだけ膨らんだりして……我慢できずに横からむにってすると凄く怒るのがまた可愛い。

「無視すんなよ」

 今どうしているだろうか。心配だから起きて待っていると言っていたけれど、ゆっくり休みながら待っていてほしい。

「みーちゃーん」

 うるっさいな。
 靴で人の足をつんつんするんじゃない。汚いな。
 あーあ、近づいて来てるな気配がする。嫌だな相手したくないな。めんどくさい。出雲見てたい。

「はぁ? お前、出雲見てんの? しかも隠し撮りかよ。きしょ」

 横からにゅっと身を乗り出してきた大鳥の頭が現れ、画面を覗き込んでくる。僕が見えないんだけど。

「邪魔……」
「暇だろ、相手しろよ」
「やだ」
「なーそれハメ撮りとかないの? 絶対あるだろ」
「見せない」
「ケチケチすんなよ。どうせあいつの身体なんて見尽くしてるっつーの」
「大鳥きらい」
「ひでぇ! 俺は割に好きだけどなー、加賀見。うるさくねぇし」
「君はうるさい」
「俺まで黙ったらお葬式状態だろ」

 結局大鳥の相手をしてやっている自分に対して、意外と優しいなと感心する。それにしても香水の匂いどうにかならないかと思った瞬間、大鳥の手が伸びてきて「えい」と画面をスワイプした。

「おっ、えろ……て、お前なんだよー! いいじゃん! ケチだな!」

 僕の上にいる出雲が一瞬画面に写ったが、即、画面を暗くした。
 大鳥は歓喜の声からすぐにまた文句をたれ始め、スマホを奪おうと手を伸ばしてくるので、いい加減本気で腹が立ってきた。
 なんでじっとしてられないかな。
 自分も目一杯に後方に腕を伸ばし、大鳥が誘いに乗ってくる隙を狙った。案の定のノコノコと近づいてきた腕を引っ張り、床についていた膝を軽く蹴飛ばし(散々蹴られていたのでおあいこだ)、床に転がしてやった。大鳥はすぐさま起き上がろうとしたが、起きようと仰向けに向き直ったところで、下腹部より少し下辺りに跨り腰を下ろしてやった。

「ちょ、お前なんだよ! 動けねぇだろ、この巨人! どけよ!」
「やだよ。そこで大人しく、してな?」
「はぁー?! ありえねー! 重いっつーのー!」
「君が、悪い」

 後ろでご自慢の長い脚がばたばた動いている。ぐらぐらと揺れて乗り心地は良くない……が。
 床について起き上がろうと頑張っていた手が、僕に危害を加えようと伸びてきたので手首を掴んで床に抑えつけた。
 乗り心地は良くない。それは確か。
 けれど……僕を見上げる大鳥の綺麗な顔。悔しそうに鋭く僕を睨みつけ、薄い唇から食いしばった歯を覗かせている。
 この光景はなかなか悪くない。

「君はさー……瑞生とのハメ撮り、見せてって言われたら……見せるの?」
「玲児そんなん撮らせてくれねぇし。まぁ見せねーよ」
「じゃあ君も、だめ」
「俺とお前じゃ違うじゃん。俺はあいつの初体験の相手だし、精通させたのもオナニー教えたのも俺だし」
「なに、それ……」

 初耳の情報がいきなり飛び込んできて我が耳を疑った。精通? 出雲と大鳥が知り合ったのは、出雲が高校二年生のときのはずなのに?

「嘘」
「嘘じゃねーよ。あいつ高ニになっても何も知らなかったんだぜ。自分から出た我慢汁見て、精液出ちゃったって涙目になってて、あれはめちゃくちゃ可愛かった」
「え……本気で?」
「こんな嘘思いつかねぇよ。なんも知らないからさ、どこが気持ちいいとかちゃんと言わなきゃいけないって教えたら、恥ずかしいのに素直に淫語言いまくってて……今も言ってる? 俺のお陰だから感謝しろよ。手コキもフェラも全部俺が教えたんだからさ」

 ここまで……ここまで複雑な感情を抱えることもなかなかない。
 僕が初めて見かけた時の出雲はまだ精通すらしていなかったのだ。あまりに理想的に可愛くてゾクゾクとくる……が、目の前の男が全部はじめてを奪っていったわけで。
 初体験うんぬんはわかっていたことだ。だが、まっさらな出雲に全てを教えたなんて、あんまりだ。羨ましい。羨ましすぎる。しかもそんな可愛い子にセフレなんてポジションに落ち着かせて、自分勝手な酷い抱き方をしてきたのだろう。信じられない。

「よく……さ。君、自分がこの状況で……人を煽れるね?」
「はぁ? 何がだよ。ムカついてんだよこっちは」
「僕も、相当……頭にきてるけど?」
「だからなんだよ。て、おいおいおい、お前マジふざけんなよ、勃ってんじゃん……出雲の話聞いたくらいで勃起してんじゃねぇよ。当たってるって」
「うん。出雲は本当に、可愛いからね。でも君は、本っ当に……腹が立つな。その高い鼻、へし折りたくなる」

 はぁ? と聞こえてきそうな顰め面を見せる大鳥の腹に指を滑らす。汗で湿ったシャツの上は滑りが悪く、引っかかる。大鳥は僕の指の動きを目で追っていたが、その指が胸元まで上がってくるとため息とともに天井を仰いだ。

「あー……そういうこと? くだらね」
「余裕だね?」

 強がりだろうかとも思ったが、僕と目も合わせず天井を眺める大鳥は、心の底からどうでもいいというような無感情な顔をしていた。例えるなら授業中ただぼんやりと空でも眺めている時のような顔だ。
 本気にしていないのかなと、焦らすのをやめて弱いと思われる胸の突起に触れる。声を上げることはしないが、ピクッと瞼が動いたのを僕は見逃さなかった。人差し指の腹でさすり、尖ってきたことろを親指と人差指でそっと擦るようにつまむ。

「ん……」

 あまり大きな反応は見せない……が、時折震えた吐息をふぅっと静かに吐いたり、そっと瞼を閉じる姿に思わず息を飲んでしまった。堀の深い眉の下で震える、量の多く濃い影を作る睫毛が芸術品みたいだ。
 大鳥隼人という男はどこまで見目が良いのかと驚かされる。
 最初は少し弄ばれる側の気持ちでも味わえばいいと、からかってやろうと思っただけだった。でも今はこの男の性に歪む顔に興味が湧いている。

「出雲に君が、仕込んだんだろ……? 出雲が触ってくるから、君がここ……好きなんだろうと思ってたんだ」
「普通に女だって触ってくるだろそんぐらい。お前だって触られたことあんだろ? まーそこはちんことセットでいじってほしいけど」
「抵抗、しないの?」

 大鳥に触るため、どうしても片手の拘束を解かなければいけなかった。なにかしら抵抗してくるだろうと思ったが、手首を離した時と同じ場所にその左手は投げ出されたままだ。

「抵抗したらやめんの?」
「いや……?」
「本気で抵抗したらどっちか怪我すんじゃん」
「え? きみ、本気?」

 予想できるわけのない答えに目を剥けば、大鳥は片側の口の端だけあげて笑い、肩を竦めた。

「さすがにケツはやだけど……うんこ出んぞ、うんこ」
「そんなきれいな顔で、汚いな……」
「ははっ、バーカ」

 軽口を叩いかと思えば急に、んん、と下唇を噛んで見せて、ドキリとした。薄い唇に、鋭い歯が刺さると痛そうだ。
 なんだろうかこれは。
 なんでそんなすぐに諦めるのだろうか。
 これは駄目だ。手を出すべきじゃない。
 警鈴は確実に鳴っており、この子を本気で傷つけてしまうのではないかと危惧しているのに。僕の手は彼のシャツをたくし上げ、愛煙している煙草と似た香りを纏うその肌をさらけ出していた。
 性感帯として機能しているとはいえ、出雲の乳輪からふっくらとした乳首とは全然違う。小さく、ツンと固そうだ。舌を伸ばし乳輪の周辺からまるごとべろりと舐めあげる。

「は、お前そこまですんの? やめろって……」
「抵抗しなよ……?」
「んんー……あー、その舐め方は、あんまされたことないな、んっ……ちょ、待て待て、あはは、やば」

 なんともなさそうなフリをした声が、上擦ってきている。
 舌先で乳首の先だけをチロチロと舐めたり、乳輪からぐるりと舐め回して焦らし、ふいに乳首を舌で押しつぶしたり、優しく唇で挟んで扱いたり……と繰り返している内に、どんどん大鳥の息が荒くなり、吐く息が震えていく。両手を解放しても抵抗しないのだろうかと、右手首も離して脇腹を撫でる。

「あっ……!」

 ビクッと腰を引いて一際大きな声を上げるその姿に、興奮してぞくりと背筋が震えた。
 低い声をしているが、掠れた吐息混じりのそれは非常に色っぽく、なかなか聞こえてこないだけにもっと鳴かせたくなる。
 やっぱり抵抗しないんだなと思いながら、どうしてやろうかと乳首を咥えて腹から胸までをなぞっていると、抵抗どころか大鳥の右手が僕の下半身に触れてきた。驚いて胸から顔を上げれば、いつもより力の抜けた眼差しで、しかしいつもと同じように片側の口の端だけニヤリと上げて、大鳥は笑った。

「でっけー。なんだこれ、えぐすぎだろ……」
「あ、ちょっと、君……」

 ズボンの左の内股をギチギチと窮屈にしている男性器を意外なほど優しく擦られる。根本から亀頭に向かってゆるく揉むようにしながら触り、鈴口をくにくにと弄ばれる。興奮しているところに淡い刺激がたまらない。

「湿ってんじゃん」
「うん………………触るの、上手いな」
「そりゃどーも。なんなんだよ全く、お前はさぁ。出雲恋しくなっちゃったか? 抜いてやろっか? 手でいいだろ?」
「いや…………大鳥、君さ……受け入れすぎ。襲われちゃうよ?」
「襲ってるやつが言うセリフかよ」
「僕じゃなかったら、もっと酷いことされるよ?」
「あー? 心配してくれちゃってんの? ウケる」

 性的な部分を好きにされても抵抗しなかった大鳥は、僕が頬を撫でようとすると指先が触れる前にその手を払い除けた。

「まー、さぁ……ほら。俺ぐらい目立つと、おっさんとかからそういう目で見られることもあるしな。性的に搾取されんのは慣れてるんですよ、なんてな。さすがにヤんねぇけど、動じはしないわけよ。こういう時こそ冷静にってな」
「……さっきまで、あんなに……イライラしてたのに」
「この状況はイライラすんだろー⁉ 暑いし、お前は無視するしよー!」
「その、おっさん、にも……今くらいのことは、させるの?」
「させるわけねーだろ、気色悪い」

 さっきまでイライラしていた大鳥の冷静な姿に、結局僕までイライラしていたことに気がついて、頭に上った血がすーっと引いていくのを感じた。
 つまり……さっきのあれも僕に無視されて気を引きたかっただけか。拗ねてたのか。いや、ううむ……確かにこの子、こういう可愛いところあるんだよな。悪いことしちゃったな。わかっていたことに大人気なく煽られすぎた。
 反省は確かに、したのだけれど。
 大鳥からしたら“おっさん”にされるのは気色悪くて、僕にされるのは気色悪くないのか?
 僕だからおっぱい舐めさせてくれたのか?
 怪我させたくないから? 僕のこと割と、好きだから?

「なーお前のちんこ、すっげぇ曲がってね? どうなってんのこれ」
「大鳥」
「あ?」
「どうしよう」
「何が?」

 面と向かってソレを言うのはあまりに恥ずかしく、自分でも戸惑っている真っ最中の頭を、僕は大鳥に預けた。首筋に顔を埋め、意外と甘い香水の香りを吸い込む。

「君のこと……すっごく、抱きたくなっちゃった」

 大鳥は「おいおいマジかよ無理無理」なんて笑って言いながら、抱きついてきた僕の背をあやすようにぽんぽんと叩いてくれた。
 

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