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第11話 一人前のドラゴン
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『よし、ここらでいいかのう。それじゃあ、ワシの言う通りにやってみい』
『はいっ!』
『まずは息を思い切り吸って、一度呼吸を止めるのじゃ』
一度息を吐いてから……吸って――止める!
『そのままボワッと息を吐いてみい』
ボワッと……。こうか?
言われた通り息を吐いてみたものの、何も出ない。
そりゃ何もしていないし、当たり前だけど。
『違う! もっと勢いよく、ボワッ! っと出すのじゃ! さあ、もう一度!』
勢いよくだな、よーし。
今度は呼吸を止めた後、口を思い切り開いて息を一気に吐き出してみる。
『――んぁっ!?』
直後、自分の口から火炎放射器のような炎が一瞬吐き出された。
火っ、火が、火が口から出た!
熱……あれ、熱くない。
……えっ? 炎ってこんな簡単に吐けるの?
『よしよし。後は最初にボワッと息を吐いた後、そのまま息を吐き続けるようにすると長く炎を吐けるぞ。……って、どうしたんじゃ、そんなに目を丸くして』
『えっと……まさか、こんなに簡単だとは思ってなくて。特に何もしていないのに』
『まあ、ドラゴンじゃからなぁ。元々、そういうふうに身体が出来ているんじゃ。あっ、炎は己の魔力を大量に消費する故、いくらでも吐ける訳じゃないからそこは注意するんじゃぞ』
なるほど。自覚はないけど、魔力とやらのお陰なんだな。
よく分からないけど、まあ炎を吐けるんだったら何でもいいや。
それより、回数に限りがあるのか。これ結構重要だよな。
『あの、僕の場合だと、どれ位吐けますかね?』
『そうじゃなぁ。ちょいと失礼するぞ』
ヴァルムさんはそう言いながら、俺の頭に大きな手を置いた。
『そなたの魔力量からすると、日に三回程度かのう。ワシくらいになればいくらでも炎を吐けるが、そなたはなんせ生まれたてじゃからな』
三回か。ってことは、乱発は出来ないな。
基本は鉤爪で戦って、ここぞという時に炎って感じがよさそうだ。
『分かりました!』
『それとついでに伝えておくが、その翼は成長して筋肉が発達すればいずれ動かせるようになる。今はまだ羽ばたくどころか動かせも出来んじゃろうが、焦る必要はないぞ』
あっ! この翼のこと、すっかり忘れてた。
そのうち俺も空を飛べるようになるんだな。楽しみだ。
『はい! 色々とありがとうございます!』
『何、礼を言わねばならんのはワシのほうじゃ! そなたのお陰で、ワシはまた一つ物知りになれたわい。さて、もう少し話を聞いていたいところじゃが、ワシはこの後用事があってな。その前にそなたをモモ達のところへ届けよう』
『何から何まですみません、お願いします』
『よし。それでは、ワシの上に乗っとくれ』
お言葉通り背中によじ登らせてもらうと、ヴァルムさんは巨大な翼を羽ばたかせ、空中に浮かび上がった。
おお……! 凄い、空を飛んでるぞ!
風が気持ちいいし、夕焼けが綺麗だ。
俺もいつかこのくらい大きくなったら、カイルを乗せてやりたいな。
送ってもらっている最中、送迎のお礼として日本のことを話していると、あっという間に元居た街へ辿り着いた。
『ふう、到着じゃ。名残惜しいが、もう行かねばならん。それじゃあな、また今度ゆっくりと話を聞かせてくれ』
ヴァルムさんはリリの家の中庭で俺を降ろした後、すぐに飛び立っていった。
本当に良いドラゴンだったな。
お陰で炎も吐けるようになったし、感謝の気持ちでいっぱいだ。
次に会った時、もっと色々と教えてあげられるように、会話のネタを用意しておかないと。
『あっ、アイズお帰り! あれ、爺は?』
ヴァルムさんの声が聞こえたからか、家の中から三匹が中庭に飛び出してきた。
『ただいま! ヴァルムさんなら用事があるって言って、もう行っちゃったよ』
『爺は本当にいつも忙しいねえ。それより、アイズ。炎は吐けるようになったのかい?』
『ああ! もうバッチリだ!』
『そいつは良かったじゃないか。せっかくだし、その炎をアタシ達に見せておくれよ』
『ポポも……見たい……!』
モモ達にはお世話になってるし、そう言われたら断れないな。
『いいよ。それじゃあここで……』
芝生が燃えてしまわないように石畳まで歩いてから、俺は思い切り息を吸った。
そこから一気に息を吐き出し、その後も息が切れるまで継続的に吐き続ける。
するとヴァルムさんが言っていた通り、数秒の間、炎を吐くことが出来た。
『凄い……! もう立派な……ドラゴンさん……!』
『だね。これであんたは一人前のドラゴンって訳だ。それなら、トーナメントでも十分通用するだろうさ』
『そうね。後は同じ位強い仲間を揃えられれば、もしかしたら優勝もあるかも! あたし達もうかうかしてなれないわね!』
――ん? 仲間を揃える?
待てよ、まさかトーナメントって……。
『あの……。トーナメントって、もしかして一対一じゃなかったりする……?』
『ええ、三対三のチーム戦だからね。あれ、言ってなかったっけ?』
そうだったのか……。てっきり一対一だとばかり……。
『う、うん』
『あちゃー、ごめんね! チーム戦といっても最大三匹まで出られるってだけだから、一応一匹だけでも出られはするんだけどね』
別に一匹でも二匹でも良いってことか。
ただ、当然みんな三匹連れてくるよな。
ってことは、俺一人だけじゃ間違っても優勝出来ないってことじゃないか……。
『しかし、カイルはどうするつもりなんだろうね』
『どうするって?』
『普通は最初の従魔が強くなったら、新たな魔物をテイムしに旅に出るのさ。でも、カイルは家の手伝いで忙しいみたいだし、そんな時間はないだろ? それにそもそも契約の魔法を使えないから、旅に出たところで……って、そんな言い方は良くないね。もしかしたら、あんたみたいに懐きテイムされる魔物がいるかもしれないし』
確かに……。
カイルが後二匹テイムしてくれれば良い話だけど、旅に出る時間もテイムする技術もないってなるとな……。
ん? 待てよ。西の森に居るゴブリンとか野犬をテイムすればいいだけなんじゃないか?
あそこなら家の手伝いを終えた後でも行けるし。
『あのさ、西の森とかでテイムするんじゃダメなの?』
『ダメって訳ではないけど、あの森に居る魔物は弱いし、知能も低くて仕事も出来ないからねえ。一人につき三匹までしかテイム出来ないっていう決まりがある中、わざわざあそこの魔物をテイムするのはちょっとね』
そんな決まりがあったのか。
それじゃあ強い魔物を仲間にするには、やっぱり旅に出ないとダメなんだな。
『あっ……! カイルが来たよ……!』
ポポの言葉に反応して門扉のほうに振り向くと、カイルが近づいてきていた。
噂をすれば何とやらってやつか。
「久しぶり、アイズ! 会いたかったよ!」
『ああ、俺もだカイル!』
「どう? 強くなれた?」
カイルの問いかけに対し、俺は頭を縦に振って答える。
「良かった! それもピピ達のお陰だね! 三匹とも本当にありがとう。またいつか改めてお礼するから!」
『その言葉だけで十分よ。それよりアイズ。せっかくだし西の森にでも行って、これまでの成果をカイルに見せてあげたら?』
それは良いアイデアだ。
なんたって俺はカイルのために強くなったんだから。
『そうだね、そうするよ!』
『ならポポが……伝えてあげる……』
ポポは以前したように葉っぱの両手を地面に伸ばして、魔法でゴブリンと俺が森で戦っている絵を書いてくれた。
「これは西の森かな? それにアイズとゴブリンが戦って……分かった! これから森に行って、強くなった姿を見せてくれるってことだよね! どう、アイズ合ってる?」
『流石カイル、その通りだ! ポポも伝えてくれてありがとう!』
「正解みたいだね。それじゃあ、早速行こうか! ピピ、モモ、ポポ、本当にありがとうね!」
『どういたしまして。本当はアタシ達もあんたの実戦を見届けたいんだけどねえ。そろそろリリが帰ってくるはずだから、ここでお別れだ。しっかりやるんだよ』
『じゃあね、アイズ、カイル』
『ばいばい……』
『ああ、みんなありがとう! それじゃ、また』
俺とカイルは三匹と別れ、街から出て西側にある森を目指す。
その際、カイルはいつも通り肩に俺を乗せようとしていたけど、俺はそれを断り自分の足で歩いた。
今の俺は前と違って早く歩けるから、カイルの歩くスピードに難なく合わせられるし、何よりいつまで経っても甘える訳にもいかないもんな。
『はいっ!』
『まずは息を思い切り吸って、一度呼吸を止めるのじゃ』
一度息を吐いてから……吸って――止める!
『そのままボワッと息を吐いてみい』
ボワッと……。こうか?
言われた通り息を吐いてみたものの、何も出ない。
そりゃ何もしていないし、当たり前だけど。
『違う! もっと勢いよく、ボワッ! っと出すのじゃ! さあ、もう一度!』
勢いよくだな、よーし。
今度は呼吸を止めた後、口を思い切り開いて息を一気に吐き出してみる。
『――んぁっ!?』
直後、自分の口から火炎放射器のような炎が一瞬吐き出された。
火っ、火が、火が口から出た!
熱……あれ、熱くない。
……えっ? 炎ってこんな簡単に吐けるの?
『よしよし。後は最初にボワッと息を吐いた後、そのまま息を吐き続けるようにすると長く炎を吐けるぞ。……って、どうしたんじゃ、そんなに目を丸くして』
『えっと……まさか、こんなに簡単だとは思ってなくて。特に何もしていないのに』
『まあ、ドラゴンじゃからなぁ。元々、そういうふうに身体が出来ているんじゃ。あっ、炎は己の魔力を大量に消費する故、いくらでも吐ける訳じゃないからそこは注意するんじゃぞ』
なるほど。自覚はないけど、魔力とやらのお陰なんだな。
よく分からないけど、まあ炎を吐けるんだったら何でもいいや。
それより、回数に限りがあるのか。これ結構重要だよな。
『あの、僕の場合だと、どれ位吐けますかね?』
『そうじゃなぁ。ちょいと失礼するぞ』
ヴァルムさんはそう言いながら、俺の頭に大きな手を置いた。
『そなたの魔力量からすると、日に三回程度かのう。ワシくらいになればいくらでも炎を吐けるが、そなたはなんせ生まれたてじゃからな』
三回か。ってことは、乱発は出来ないな。
基本は鉤爪で戦って、ここぞという時に炎って感じがよさそうだ。
『分かりました!』
『それとついでに伝えておくが、その翼は成長して筋肉が発達すればいずれ動かせるようになる。今はまだ羽ばたくどころか動かせも出来んじゃろうが、焦る必要はないぞ』
あっ! この翼のこと、すっかり忘れてた。
そのうち俺も空を飛べるようになるんだな。楽しみだ。
『はい! 色々とありがとうございます!』
『何、礼を言わねばならんのはワシのほうじゃ! そなたのお陰で、ワシはまた一つ物知りになれたわい。さて、もう少し話を聞いていたいところじゃが、ワシはこの後用事があってな。その前にそなたをモモ達のところへ届けよう』
『何から何まですみません、お願いします』
『よし。それでは、ワシの上に乗っとくれ』
お言葉通り背中によじ登らせてもらうと、ヴァルムさんは巨大な翼を羽ばたかせ、空中に浮かび上がった。
おお……! 凄い、空を飛んでるぞ!
風が気持ちいいし、夕焼けが綺麗だ。
俺もいつかこのくらい大きくなったら、カイルを乗せてやりたいな。
送ってもらっている最中、送迎のお礼として日本のことを話していると、あっという間に元居た街へ辿り着いた。
『ふう、到着じゃ。名残惜しいが、もう行かねばならん。それじゃあな、また今度ゆっくりと話を聞かせてくれ』
ヴァルムさんはリリの家の中庭で俺を降ろした後、すぐに飛び立っていった。
本当に良いドラゴンだったな。
お陰で炎も吐けるようになったし、感謝の気持ちでいっぱいだ。
次に会った時、もっと色々と教えてあげられるように、会話のネタを用意しておかないと。
『あっ、アイズお帰り! あれ、爺は?』
ヴァルムさんの声が聞こえたからか、家の中から三匹が中庭に飛び出してきた。
『ただいま! ヴァルムさんなら用事があるって言って、もう行っちゃったよ』
『爺は本当にいつも忙しいねえ。それより、アイズ。炎は吐けるようになったのかい?』
『ああ! もうバッチリだ!』
『そいつは良かったじゃないか。せっかくだし、その炎をアタシ達に見せておくれよ』
『ポポも……見たい……!』
モモ達にはお世話になってるし、そう言われたら断れないな。
『いいよ。それじゃあここで……』
芝生が燃えてしまわないように石畳まで歩いてから、俺は思い切り息を吸った。
そこから一気に息を吐き出し、その後も息が切れるまで継続的に吐き続ける。
するとヴァルムさんが言っていた通り、数秒の間、炎を吐くことが出来た。
『凄い……! もう立派な……ドラゴンさん……!』
『だね。これであんたは一人前のドラゴンって訳だ。それなら、トーナメントでも十分通用するだろうさ』
『そうね。後は同じ位強い仲間を揃えられれば、もしかしたら優勝もあるかも! あたし達もうかうかしてなれないわね!』
――ん? 仲間を揃える?
待てよ、まさかトーナメントって……。
『あの……。トーナメントって、もしかして一対一じゃなかったりする……?』
『ええ、三対三のチーム戦だからね。あれ、言ってなかったっけ?』
そうだったのか……。てっきり一対一だとばかり……。
『う、うん』
『あちゃー、ごめんね! チーム戦といっても最大三匹まで出られるってだけだから、一応一匹だけでも出られはするんだけどね』
別に一匹でも二匹でも良いってことか。
ただ、当然みんな三匹連れてくるよな。
ってことは、俺一人だけじゃ間違っても優勝出来ないってことじゃないか……。
『しかし、カイルはどうするつもりなんだろうね』
『どうするって?』
『普通は最初の従魔が強くなったら、新たな魔物をテイムしに旅に出るのさ。でも、カイルは家の手伝いで忙しいみたいだし、そんな時間はないだろ? それにそもそも契約の魔法を使えないから、旅に出たところで……って、そんな言い方は良くないね。もしかしたら、あんたみたいに懐きテイムされる魔物がいるかもしれないし』
確かに……。
カイルが後二匹テイムしてくれれば良い話だけど、旅に出る時間もテイムする技術もないってなるとな……。
ん? 待てよ。西の森に居るゴブリンとか野犬をテイムすればいいだけなんじゃないか?
あそこなら家の手伝いを終えた後でも行けるし。
『あのさ、西の森とかでテイムするんじゃダメなの?』
『ダメって訳ではないけど、あの森に居る魔物は弱いし、知能も低くて仕事も出来ないからねえ。一人につき三匹までしかテイム出来ないっていう決まりがある中、わざわざあそこの魔物をテイムするのはちょっとね』
そんな決まりがあったのか。
それじゃあ強い魔物を仲間にするには、やっぱり旅に出ないとダメなんだな。
『あっ……! カイルが来たよ……!』
ポポの言葉に反応して門扉のほうに振り向くと、カイルが近づいてきていた。
噂をすれば何とやらってやつか。
「久しぶり、アイズ! 会いたかったよ!」
『ああ、俺もだカイル!』
「どう? 強くなれた?」
カイルの問いかけに対し、俺は頭を縦に振って答える。
「良かった! それもピピ達のお陰だね! 三匹とも本当にありがとう。またいつか改めてお礼するから!」
『その言葉だけで十分よ。それよりアイズ。せっかくだし西の森にでも行って、これまでの成果をカイルに見せてあげたら?』
それは良いアイデアだ。
なんたって俺はカイルのために強くなったんだから。
『そうだね、そうするよ!』
『ならポポが……伝えてあげる……』
ポポは以前したように葉っぱの両手を地面に伸ばして、魔法でゴブリンと俺が森で戦っている絵を書いてくれた。
「これは西の森かな? それにアイズとゴブリンが戦って……分かった! これから森に行って、強くなった姿を見せてくれるってことだよね! どう、アイズ合ってる?」
『流石カイル、その通りだ! ポポも伝えてくれてありがとう!』
「正解みたいだね。それじゃあ、早速行こうか! ピピ、モモ、ポポ、本当にありがとうね!」
『どういたしまして。本当はアタシ達もあんたの実戦を見届けたいんだけどねえ。そろそろリリが帰ってくるはずだから、ここでお別れだ。しっかりやるんだよ』
『じゃあね、アイズ、カイル』
『ばいばい……』
『ああ、みんなありがとう! それじゃ、また』
俺とカイルは三匹と別れ、街から出て西側にある森を目指す。
その際、カイルはいつも通り肩に俺を乗せようとしていたけど、俺はそれを断り自分の足で歩いた。
今の俺は前と違って早く歩けるから、カイルの歩くスピードに難なく合わせられるし、何よりいつまで経っても甘える訳にもいかないもんな。
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