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第13話 テイムの旅へ
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六日ぶりにカイルの家に帰ると、カイルの両親が俺達を出迎えてくれた。
「お帰り、二人とも! アイズ君は久しぶりね。お母さん寂しかったわ」
「おう、お帰りー! カイル達にお客さんが来てるぞ」
「ただいま! お客さんって?」
「お帰り、カイルっ!」
『こんばんは……』
カイルの両親の後ろから、ぴょこっと顔を出したのはリリとポポだった。
一体、どうしたんだろう。
それにピピとモモの姿も見えないけど。
「リリ! もう帰ってきてたんだね!」
「ええ、ついさっき帰って来たの。今日はちょっとポポがカイルとアイズ君に話したいことがあるって伝えてきてね。だから、お邪魔しにきたの」
「ポポが? 一体どうしたの?」
「二人とも。そんなところで話してないで、こちらにどうぞ」
俺達は一旦リビングに移動し、椅子に腰を下ろす。
その後、カイルの両親が部屋を出て行ってから会話を再開した。
「それでね。ポポが言うには、カイルの代わりに畑で働いてあげたいんだって。そうすればカイルとアイズ君がテイムの旅に出られるからって」
「えっ? どうしてポポがそんなことを?」
「何でも、ポポはこの六日間、アイズ君のために何もしてあげられなかったって落ち込んでるみたいなのよ。だから力になりたいらしくて、それで考えついたのが畑を手伝うことみたい。ほら、前にポポが一度手伝ったことあったでしょ?」
『そうなの、ポポ?』
俺が尋ねると、ポポはコクンと頷いた。
『でもポポは応援してくれてた――』
『そんなの……意味ない……! ポポも……何かしてあげたい……!』
十分だよと伝えようとしたら、強い口調で遮られてしまった。
意味ないってこともなかったんだけどな……。
「いやいや、いいよそんなの! 流石にそこまでは甘えられないよ!」
「実際、私としても明日からは倉庫で働いてもらわなきゃならないから、うんと言ってあげられなくてね……」
そりゃそうだ。ポポはリリの従魔だし、仕事もあるんだから。
「そこでここからはビジネスの話なんだけど」
「ビジネス?」
「この六日間で私とお父さんでウィンドラに商談へ行ってきたんだけど、そこで超大口の注文を受けることになってね」
「凄いじゃないか! おめでとう!」
「ありがとう。ただ喜んでばかりもいられなくて、実は注文が多すぎて武器を作るための素材が圧倒的に足りないのよ。本来なら商談中に数を調整するべきなんだけど、お父さんが二つ返事で承諾しちゃって……」
あの豪快な親父さんのことだしな。
確かに「おう、任せな!」と言っている様が容易に想像出来てしまう……。
「だからお店で必要な素材を買うしかないんだけど、全てを買ってたらほとんど儲けが出ないのよ……。そこでポポの話を聞いて思い付いたんだけど、もしもカイル達がテイムの旅に出るなら、その途中で素材を集めてくれないかなって。そうしてもらえるなら、その代金としてポポを貸し出すことも出来るし……どう?」
なるほどな。だからビジネスの話って訳だ。
これならお互いにメリットがあるし、かなりいい話なんじゃないか?
「ポポが手伝ってくれるなら、何の心配もいらないし僕は大賛成! むしろ、ありがたく引き受けさせてもらうよ! アイズはどう?」
『俺も賛成だ!』
『これで二人の役に……立てるかな……?』
『もちろんだ、ポポ! それに俺達だけじゃなくて、リリや親父さんも助かるぞ!』
『なら……良かった……!』
ポポは嬉しそうな声色でそう言った。
本当に心優しい魔物だ。
「アイズ君も賛成してくれているみたいね。じゃあ、カイル。これで契約成立ってことでいい?」
「うん、ぜひ!」
「良かったー、本当に助かるわ! それでいつ出発する? 明日からでも私とポポは大丈夫だけど!」
「アイズさえ良ければ、明日からでも出発したいけど……。どうかな?」
『俺も大丈夫だ!』
俺はカイルの問いに頷くことで意思を示す。
これで強い魔物を仲間に出来れば、トーナメント優勝も現実味を帯びてくる。
後はカイルがテイム出来るかどうかだけど、こればかりは上手くいくことを願うしかない。
「良さそうだね! それじゃあ、明日からテイムの旅の始まりだ! 今からワクワクしてきたよ!」
「色んな意味で頑張ってね、カイル! 集めてほしい素材を纏めたメモとマジックバックを用意しておくから、明日旅に出る前に家に寄ってくれる? もちろん、食料とか道具とかもこっちで全部用意しておくから!」
「分かった、ありがとう!」
カイルも嬉しそうで良かった。
それにしてもテイムの旅か。何だか俺までワクワクしてきた!
「あ、それと期間についてだけど、カイルが帰ってくるまでだったらいつまででもいいわ。だからトーナメント直前まででも大丈夫。ポポのトレーニングは仕事が終わってから出来るしね。だから焦らず、ゆっくり旅してね」
「了解! どの位掛かるかは分からないけど、帰ってくるまでよろしく頼むね、ポポ」
『任せて……!』
「じゃあ私達は準備もあるし、そろそろおいとまするね! お父さんにも伝えないと!」
「うん、また明日!」
『ポポ、本当にありがとうね!』
『こちらこそ……! じゃあね……!』
話が纏まったところで、リリとポポは自宅に帰っていった。
その後、カイルは両親にこのことを伝えると、二人とも快く旅に出ることを許してくれた。
特にお父さんはポポが手伝うって聞いた瞬間、かなり嬉しそうにしていた。
後でその理由をカイルに尋ねると、ポポは土を操れる魔法を使えるから畑仕事にはもってこいの人材だかららしい。
実際、前にポポが一度手伝った時は短時間で仕事が済んだ上に、滅茶苦茶美味い野菜が採れたとのこと。
だから、あれだけ嬉しそうだったんだな。
何はともあれ、両親からも許可を得られて良かった。
明日から長旅が始まることだし、今日はしっかりと休まないとな。
カイル、お休み――
「お帰り、二人とも! アイズ君は久しぶりね。お母さん寂しかったわ」
「おう、お帰りー! カイル達にお客さんが来てるぞ」
「ただいま! お客さんって?」
「お帰り、カイルっ!」
『こんばんは……』
カイルの両親の後ろから、ぴょこっと顔を出したのはリリとポポだった。
一体、どうしたんだろう。
それにピピとモモの姿も見えないけど。
「リリ! もう帰ってきてたんだね!」
「ええ、ついさっき帰って来たの。今日はちょっとポポがカイルとアイズ君に話したいことがあるって伝えてきてね。だから、お邪魔しにきたの」
「ポポが? 一体どうしたの?」
「二人とも。そんなところで話してないで、こちらにどうぞ」
俺達は一旦リビングに移動し、椅子に腰を下ろす。
その後、カイルの両親が部屋を出て行ってから会話を再開した。
「それでね。ポポが言うには、カイルの代わりに畑で働いてあげたいんだって。そうすればカイルとアイズ君がテイムの旅に出られるからって」
「えっ? どうしてポポがそんなことを?」
「何でも、ポポはこの六日間、アイズ君のために何もしてあげられなかったって落ち込んでるみたいなのよ。だから力になりたいらしくて、それで考えついたのが畑を手伝うことみたい。ほら、前にポポが一度手伝ったことあったでしょ?」
『そうなの、ポポ?』
俺が尋ねると、ポポはコクンと頷いた。
『でもポポは応援してくれてた――』
『そんなの……意味ない……! ポポも……何かしてあげたい……!』
十分だよと伝えようとしたら、強い口調で遮られてしまった。
意味ないってこともなかったんだけどな……。
「いやいや、いいよそんなの! 流石にそこまでは甘えられないよ!」
「実際、私としても明日からは倉庫で働いてもらわなきゃならないから、うんと言ってあげられなくてね……」
そりゃそうだ。ポポはリリの従魔だし、仕事もあるんだから。
「そこでここからはビジネスの話なんだけど」
「ビジネス?」
「この六日間で私とお父さんでウィンドラに商談へ行ってきたんだけど、そこで超大口の注文を受けることになってね」
「凄いじゃないか! おめでとう!」
「ありがとう。ただ喜んでばかりもいられなくて、実は注文が多すぎて武器を作るための素材が圧倒的に足りないのよ。本来なら商談中に数を調整するべきなんだけど、お父さんが二つ返事で承諾しちゃって……」
あの豪快な親父さんのことだしな。
確かに「おう、任せな!」と言っている様が容易に想像出来てしまう……。
「だからお店で必要な素材を買うしかないんだけど、全てを買ってたらほとんど儲けが出ないのよ……。そこでポポの話を聞いて思い付いたんだけど、もしもカイル達がテイムの旅に出るなら、その途中で素材を集めてくれないかなって。そうしてもらえるなら、その代金としてポポを貸し出すことも出来るし……どう?」
なるほどな。だからビジネスの話って訳だ。
これならお互いにメリットがあるし、かなりいい話なんじゃないか?
「ポポが手伝ってくれるなら、何の心配もいらないし僕は大賛成! むしろ、ありがたく引き受けさせてもらうよ! アイズはどう?」
『俺も賛成だ!』
『これで二人の役に……立てるかな……?』
『もちろんだ、ポポ! それに俺達だけじゃなくて、リリや親父さんも助かるぞ!』
『なら……良かった……!』
ポポは嬉しそうな声色でそう言った。
本当に心優しい魔物だ。
「アイズ君も賛成してくれているみたいね。じゃあ、カイル。これで契約成立ってことでいい?」
「うん、ぜひ!」
「良かったー、本当に助かるわ! それでいつ出発する? 明日からでも私とポポは大丈夫だけど!」
「アイズさえ良ければ、明日からでも出発したいけど……。どうかな?」
『俺も大丈夫だ!』
俺はカイルの問いに頷くことで意思を示す。
これで強い魔物を仲間に出来れば、トーナメント優勝も現実味を帯びてくる。
後はカイルがテイム出来るかどうかだけど、こればかりは上手くいくことを願うしかない。
「良さそうだね! それじゃあ、明日からテイムの旅の始まりだ! 今からワクワクしてきたよ!」
「色んな意味で頑張ってね、カイル! 集めてほしい素材を纏めたメモとマジックバックを用意しておくから、明日旅に出る前に家に寄ってくれる? もちろん、食料とか道具とかもこっちで全部用意しておくから!」
「分かった、ありがとう!」
カイルも嬉しそうで良かった。
それにしてもテイムの旅か。何だか俺までワクワクしてきた!
「あ、それと期間についてだけど、カイルが帰ってくるまでだったらいつまででもいいわ。だからトーナメント直前まででも大丈夫。ポポのトレーニングは仕事が終わってから出来るしね。だから焦らず、ゆっくり旅してね」
「了解! どの位掛かるかは分からないけど、帰ってくるまでよろしく頼むね、ポポ」
『任せて……!』
「じゃあ私達は準備もあるし、そろそろおいとまするね! お父さんにも伝えないと!」
「うん、また明日!」
『ポポ、本当にありがとうね!』
『こちらこそ……! じゃあね……!』
話が纏まったところで、リリとポポは自宅に帰っていった。
その後、カイルは両親にこのことを伝えると、二人とも快く旅に出ることを許してくれた。
特にお父さんはポポが手伝うって聞いた瞬間、かなり嬉しそうにしていた。
後でその理由をカイルに尋ねると、ポポは土を操れる魔法を使えるから畑仕事にはもってこいの人材だかららしい。
実際、前にポポが一度手伝った時は短時間で仕事が済んだ上に、滅茶苦茶美味い野菜が採れたとのこと。
だから、あれだけ嬉しそうだったんだな。
何はともあれ、両親からも許可を得られて良かった。
明日から長旅が始まることだし、今日はしっかりと休まないとな。
カイル、お休み――
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