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第23話 第三十八回リバラルティア最優秀テイマー決定戦 一回戦
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「皆様っ! 大変長らくお待たせいたしましたっ! 只今より、第三十八回リバラルティア最優秀テイマー決定戦を開催いたします!」
通路の中でそのまま待っていると、男性による挨拶が聞こえてきた。
「「「「うおおおおおおお!!!」」」」
直後、会場にどよめきが起きる。
凄い盛り上がりようだ。
さっきフィルが言っていた通り、みんな楽しみにしていたんだな。
「それでは早速、第一グループの一回戦第一試合を開始いたしますっ! まずは北側から――カイル・ルースター選手っ!」
「よし! アイズ、エリノア、フィル、行こう!」
いよいよ本番だ!
カイルのためにも絶対に勝つぞっ!
通路を抜けると、そこはまさにコロシアムという表現がぴったりと当てはまる会場。
中央にはマイクを握ったスーツ姿の男性と、同じくスーツに身を包んだゴリラが立っていた。
辺りを囲む壁の上には、軽く千は超えるであろう無数の席が階段状に設置されており、およそ半分が埋まっている。
「みんなーっ! 頑張ってーっ!」
「努力の成果を見せてやれーっ!」
声に反応して振り向くと、そこにはカイルの両親の姿があった。
それに対し、カイルは少し恥ずかしそうに手を振っている。
「続きまして、南側から――ボンズ・ソルグマ選手っ!」
『あ、あいつは!』
反対側の通路から出てきたのは、以前カイルのことを落ちこぼれとバカにしていた茶髪で小太りのクソガキだった。
その後ろには、それぞれ一メートル以上はある巨大なカブトムシ・クワガタ・ムカデの姿がある。
あいつがボンズだったのか、カイルが嫌そうだったのも納得だな。
「よう、久しぶりだなカイル。まさか落ちこぼれ君が相手だなんて俺はとことんツイてるぜ。まあ、安心しろよ。すぐに終わらせてやっからさ。お前だって長い時間恥をかくのは嫌だろうしな!」
闘技場の中央まで歩いてきたクソガキは、ニヤニヤしながらカイルにそう言った。
それを聞いたカイルは悔しいのか、拳をギュッと握りしめている。
相変わらず憎たらしいガキだな。こんな奴の言うことなんて気にしなくていいのに。
『カイルさんになんてことを……! 絶対に許せません! こうなったらボコボコにして、思い知らせてあげます!』
カイルをバカにされてエリノアも怒ってるな。そりゃ当然だ。
『まあ待て。あれだけのことをほざく位なのだ、それなりに自信があるのだろう。カイルを悪く言われて苛立つ気持ちは分かるが、一旦冷静になれ』
『そ、そうですね。すみません……』
フィルはいつも冷静沈着だな。でも確かにその通りだ。
あそこまで調子に乗れるってことは、それを裏付ける強さがあるからに違いない。
俺も気を引き締めなきゃな……。
あっ、そうだ! 誰を最初に倒すか決めておかないと。
『それでどうする? どいつを狙う?』
『ふむ、そうだな……。右に居る、ヘラクレスでいいのではないか? あの角は厄介そうだ』
『ですね。じゃあ、ヘラクレスを集中的に狙うということで』
俺達は相手に聞こえないよう小声で話し合い、まずはカブトムシを集中砲火することに決まる。
その直後、
『はぁ……。早く帰りたい』
『だるいわー。何で俺様がこんなことを』
『ねー。面倒ったらありゃしない』
ボンズの従魔三匹からそんな会話が聞こえてきた。
全くやる気がないみたいだけど、だからといって油断する訳にはいかないな。
「では試合を始めますので、それぞれ規定の位置についてください」
司会の男性の指示に従い、カイルとクソガキはそれぞれ後ろに下がった。
「それでは、第一グループの一回戦第一試合っ! 開始っ!」
その言葉が聞こえた直後、俺は走って一気にカブトムシと距離を詰めた。
そして前もって装着していた鉤爪で身体を三回引き裂いてから、横に大きく飛び退く。
『――痛っ! ちょ、ちょっと待て!』
そのすぐ後、後方から氷柱と風の刃が飛んできて、カブトムシに直撃。
『ぐぶっ!』
氷柱が顔に突き刺さり、風の刃で角を切断されたカブトムシはその場に倒れた。
「か、カイーザっ!」
……えっ? 弱すぎないか?
そんなことを思いながらも、俺は次の標的をムカデに定め、間合いまで踏み込んだ。
『ね、ねえ? お話しましょ、お話――』
何か声が聞こえたような気がしたものの、俺は構わず腕を縦に横にと振るう。
その度に深緑色の液体が辺りに飛び散り、やがてムカデは動かなくなった。
『エリノア! フィル! 魔法は解除してくれ!』
それを確認した俺は、二匹に攻撃を辞めるように伝える。
それにより、直撃する前に氷柱と風の刃はスッと消え去った。
ほっ、危ない危ない。あれ当たってたら間違いなく死んでたな……。
『さて、残り一匹か』
『ひぃっ!』
そう口にするとクワガタは情けない声を上げて、ボンズの後ろに隠れた。
「お、おい! エンペル、何をしてるんだ!」
『あんなの勝てる訳ないだろっ! き、棄権だ棄権!』
『棄権ですね。マスターに伝えますので、お互いに攻撃は中止してください』
スーツ姿のゴリラはそう言ってから、隣に立っている司会の男性に向けて両腕を交差させる。
その後、ボンズとクワガタのほうに向かって手を伸ばした。
「ボンズ選手の従魔のうち、二匹が戦闘不能、一匹が棄権により、一回戦第一試合はカイル選手の勝利です! 皆様、両選手と従魔達に大きな拍手を!」
「――なっ!」
それを聞いたボンズは何が起きたか分からないといった様子で、素っ頓狂な声を出した。
同時に会場のあちこちから「うおおおおおおお!」という歓声が沸き上がる。
「やった……! やったよ三匹とも! 初戦突破だ!」
『……初戦突破? ――そうだ、俺達は勝ったんだ! やったぞ!』
『やりましたね!』
『ああ、そのようだ』
「じゃあ喜ぶのは後にして、ひとまず僕達は控室に戻ろっか! ここに居ると、次の試合の邪魔になっちゃうし」
俺達はカイルに連れられ、控室に引き返した。
「――アイズ、エリノア、フィル! やったよ、僕達勝ったんだ!」
そうして控室に入った瞬間、カイルが大はしゃぎしながらそう伝えてくる。
『ああ! まさかあんなに簡単に勝てるとは!』
『このままいけば優勝も余裕ですね!』
『……おい。お前達、何を浮かれている?』
『ん?』
『今回は相手が雑魚だっただけに過ぎない。自惚れるな』
『えっ、でもフィルさん、試合前にさっきの相手のこと強いって言ってませんでしたっけ?』
『そ、それは……すまない。我としたことが見当違いだったようだ。まさかあれほどの大口を叩いておいて、実力が伴っていないとは思ってもいなかったものでな』
ニヤニヤしながら言うエリノアに対して、フィルはバツが悪そうに言葉を返した。
まあ、確かにフィルの言う通りだな。
今回は相手が弱過ぎただけだし、慢心は禁物だ。
『冗談ですよ、フィルさん。確かにちょっと浮かれちゃいましたけど、もう大丈夫です!』
『俺もだ。フィルのお陰で気が引き締まったよ』
『そうか、ならいい。次は二回戦だ。相手も勝ち上がってきている以上、先ほどのように簡単にはいくまい。気を抜くなよ』
『おう!』
『はい!』
「三匹とも本当に凄いよ! まさかあんな簡単に勝っちゃうなんて!」
俺達とは対照的にカイルはずっとはしゃいでるな。
初戦を突破したのがよっぽど嬉しかったみたいだ。
よし、二回戦も突破してもっと喜ばせてあげないとな。
通路の中でそのまま待っていると、男性による挨拶が聞こえてきた。
「「「「うおおおおおおお!!!」」」」
直後、会場にどよめきが起きる。
凄い盛り上がりようだ。
さっきフィルが言っていた通り、みんな楽しみにしていたんだな。
「それでは早速、第一グループの一回戦第一試合を開始いたしますっ! まずは北側から――カイル・ルースター選手っ!」
「よし! アイズ、エリノア、フィル、行こう!」
いよいよ本番だ!
カイルのためにも絶対に勝つぞっ!
通路を抜けると、そこはまさにコロシアムという表現がぴったりと当てはまる会場。
中央にはマイクを握ったスーツ姿の男性と、同じくスーツに身を包んだゴリラが立っていた。
辺りを囲む壁の上には、軽く千は超えるであろう無数の席が階段状に設置されており、およそ半分が埋まっている。
「みんなーっ! 頑張ってーっ!」
「努力の成果を見せてやれーっ!」
声に反応して振り向くと、そこにはカイルの両親の姿があった。
それに対し、カイルは少し恥ずかしそうに手を振っている。
「続きまして、南側から――ボンズ・ソルグマ選手っ!」
『あ、あいつは!』
反対側の通路から出てきたのは、以前カイルのことを落ちこぼれとバカにしていた茶髪で小太りのクソガキだった。
その後ろには、それぞれ一メートル以上はある巨大なカブトムシ・クワガタ・ムカデの姿がある。
あいつがボンズだったのか、カイルが嫌そうだったのも納得だな。
「よう、久しぶりだなカイル。まさか落ちこぼれ君が相手だなんて俺はとことんツイてるぜ。まあ、安心しろよ。すぐに終わらせてやっからさ。お前だって長い時間恥をかくのは嫌だろうしな!」
闘技場の中央まで歩いてきたクソガキは、ニヤニヤしながらカイルにそう言った。
それを聞いたカイルは悔しいのか、拳をギュッと握りしめている。
相変わらず憎たらしいガキだな。こんな奴の言うことなんて気にしなくていいのに。
『カイルさんになんてことを……! 絶対に許せません! こうなったらボコボコにして、思い知らせてあげます!』
カイルをバカにされてエリノアも怒ってるな。そりゃ当然だ。
『まあ待て。あれだけのことをほざく位なのだ、それなりに自信があるのだろう。カイルを悪く言われて苛立つ気持ちは分かるが、一旦冷静になれ』
『そ、そうですね。すみません……』
フィルはいつも冷静沈着だな。でも確かにその通りだ。
あそこまで調子に乗れるってことは、それを裏付ける強さがあるからに違いない。
俺も気を引き締めなきゃな……。
あっ、そうだ! 誰を最初に倒すか決めておかないと。
『それでどうする? どいつを狙う?』
『ふむ、そうだな……。右に居る、ヘラクレスでいいのではないか? あの角は厄介そうだ』
『ですね。じゃあ、ヘラクレスを集中的に狙うということで』
俺達は相手に聞こえないよう小声で話し合い、まずはカブトムシを集中砲火することに決まる。
その直後、
『はぁ……。早く帰りたい』
『だるいわー。何で俺様がこんなことを』
『ねー。面倒ったらありゃしない』
ボンズの従魔三匹からそんな会話が聞こえてきた。
全くやる気がないみたいだけど、だからといって油断する訳にはいかないな。
「では試合を始めますので、それぞれ規定の位置についてください」
司会の男性の指示に従い、カイルとクソガキはそれぞれ後ろに下がった。
「それでは、第一グループの一回戦第一試合っ! 開始っ!」
その言葉が聞こえた直後、俺は走って一気にカブトムシと距離を詰めた。
そして前もって装着していた鉤爪で身体を三回引き裂いてから、横に大きく飛び退く。
『――痛っ! ちょ、ちょっと待て!』
そのすぐ後、後方から氷柱と風の刃が飛んできて、カブトムシに直撃。
『ぐぶっ!』
氷柱が顔に突き刺さり、風の刃で角を切断されたカブトムシはその場に倒れた。
「か、カイーザっ!」
……えっ? 弱すぎないか?
そんなことを思いながらも、俺は次の標的をムカデに定め、間合いまで踏み込んだ。
『ね、ねえ? お話しましょ、お話――』
何か声が聞こえたような気がしたものの、俺は構わず腕を縦に横にと振るう。
その度に深緑色の液体が辺りに飛び散り、やがてムカデは動かなくなった。
『エリノア! フィル! 魔法は解除してくれ!』
それを確認した俺は、二匹に攻撃を辞めるように伝える。
それにより、直撃する前に氷柱と風の刃はスッと消え去った。
ほっ、危ない危ない。あれ当たってたら間違いなく死んでたな……。
『さて、残り一匹か』
『ひぃっ!』
そう口にするとクワガタは情けない声を上げて、ボンズの後ろに隠れた。
「お、おい! エンペル、何をしてるんだ!」
『あんなの勝てる訳ないだろっ! き、棄権だ棄権!』
『棄権ですね。マスターに伝えますので、お互いに攻撃は中止してください』
スーツ姿のゴリラはそう言ってから、隣に立っている司会の男性に向けて両腕を交差させる。
その後、ボンズとクワガタのほうに向かって手を伸ばした。
「ボンズ選手の従魔のうち、二匹が戦闘不能、一匹が棄権により、一回戦第一試合はカイル選手の勝利です! 皆様、両選手と従魔達に大きな拍手を!」
「――なっ!」
それを聞いたボンズは何が起きたか分からないといった様子で、素っ頓狂な声を出した。
同時に会場のあちこちから「うおおおおおおお!」という歓声が沸き上がる。
「やった……! やったよ三匹とも! 初戦突破だ!」
『……初戦突破? ――そうだ、俺達は勝ったんだ! やったぞ!』
『やりましたね!』
『ああ、そのようだ』
「じゃあ喜ぶのは後にして、ひとまず僕達は控室に戻ろっか! ここに居ると、次の試合の邪魔になっちゃうし」
俺達はカイルに連れられ、控室に引き返した。
「――アイズ、エリノア、フィル! やったよ、僕達勝ったんだ!」
そうして控室に入った瞬間、カイルが大はしゃぎしながらそう伝えてくる。
『ああ! まさかあんなに簡単に勝てるとは!』
『このままいけば優勝も余裕ですね!』
『……おい。お前達、何を浮かれている?』
『ん?』
『今回は相手が雑魚だっただけに過ぎない。自惚れるな』
『えっ、でもフィルさん、試合前にさっきの相手のこと強いって言ってませんでしたっけ?』
『そ、それは……すまない。我としたことが見当違いだったようだ。まさかあれほどの大口を叩いておいて、実力が伴っていないとは思ってもいなかったものでな』
ニヤニヤしながら言うエリノアに対して、フィルはバツが悪そうに言葉を返した。
まあ、確かにフィルの言う通りだな。
今回は相手が弱過ぎただけだし、慢心は禁物だ。
『冗談ですよ、フィルさん。確かにちょっと浮かれちゃいましたけど、もう大丈夫です!』
『俺もだ。フィルのお陰で気が引き締まったよ』
『そうか、ならいい。次は二回戦だ。相手も勝ち上がってきている以上、先ほどのように簡単にはいくまい。気を抜くなよ』
『おう!』
『はい!』
「三匹とも本当に凄いよ! まさかあんな簡単に勝っちゃうなんて!」
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