ドラゴンに転生したら少年にテイムされました 〜心優しいマスターの夢を叶えるため、仲間と共に戦います〜

白水廉

文字の大きさ
32 / 32

最終話 ドラゴンに転生したら心優しい少年にテイムされました

しおりを挟む
 カイルの就職をひとしきり喜んだ後、俺達は闘技場の外に出た。

「「「「カイルっ!!」」」」

 すると、カイルの両親・リリとその従魔達に親父さん、それにボンズが俺達を出迎えてくれた。

「みんな聞いて! 僕――」
「カイル、良い戦いぶりだったぞ! その、何だ……また来年頑張ればいいさ!」
「お父さんの言う通りよ! カイルは凄い! よく頑張ったわ! もちろん、アイズ君達もね!」
「え? う、うん。ありがとう」

 言葉を遮って異様に明るく話し掛けてきた両親に、カイルは戸惑った様子で言葉を返した。

「カイルっ! また来年一緒に頑張りましょ! だから前向きに! ねっ?」
「そうだぞ、カイル。初出場で準々決勝まで行くたぁ、見事なもんだ。だから自信を持て!」

 続いて掛けられたリリと親父さんの言葉に、カイルはさらに困惑した顔を浮かべた。

 一体どうしたんだろう、みんな。
 何かテンションがおかしいけど……。

 そんなことを思っていると、リリの従魔達が俺達の目の前にやってきて話し掛けてきた。

『アイズっ! それにエリノアとフィル。あんた達はよーく頑張った。だから自分を責めちゃあいけないよ』
『そうよっ! 今回は相手が悪かっただけなんだから!』
『気にしちゃ……ダメ……。アイズ達は……凄い……』
『お、おう。ありがとう……』

 モモ達の様子もおかしい。
 何か気を遣われているような……。

「おい、カイルっ! お前はこの俺に勝ったんだ。だから……負けたからって落ち込むな! 分かったな!?」
「う、うん、ボンズありがとう。でも僕、落ち込んでないよ……?」
「「「「――えっ?」」」」

 ボンズの言葉にカイルがそう返すと、そこに居た全員が心底驚いたかのような表情を浮かべた。

 ……なるほど。みんなは負けた俺達を励まそうとしてくれてたんだな。
 きっと落ち込んでいるだろうと思って。

「あ、そうだ! みんな聞いて! 僕、テイマー養成学院で講師として働くことになったんだ!」
「え、えっと……。どういうこと?」
「さっき控え室で――」

 カイルはその後、控え室で院長先生からスカウトされたことをみんなに説明した。
 すると、みんなが自分のことのように喜んでくれて、祝福してくれた。

「あっ! 父さん、母さん! 僕をテイマー養成学院に入れてくれてありがとう! これからは僕がいっぱい稼いで楽をさせてあげるから、無理をしないでね!」

 おいおい、カイル。ここでそんなことを言ったら――

「か、カイル……」
「この子ったら……」

 あーあ。ほら、泣いちゃったじゃないか。
 ……でも、カイルの両親も本当に嬉しそうだ。
 本当に良かったな、カイル。

「よぉーし。今日はカイルの就職を祝って、みんなで盛大にやろう!」
「あっ、お父さんナイスアイデア! じゃ、みんな家に来て!」

 その後、親父さんの提案で俺達はリリの家で、カイルの就職を祝う会を開いてもらえることになった。
 



 そうして、リリの家に向かっている道中、俺は空を見上げて心の中で言葉を紡ぐ。

 ――勇斗。
 兄ちゃんがそっちに行くのは、まだだいぶ先になりそうだ。

 実は兄ちゃんな。
 ドラゴンに生まれ変わって、勇斗に似た優しい男の子と仲間達と一緒に暮らしているんだ。

 旅に出たり、戦ったりと退屈しない日々だよ。

 良い子にしていられたら、とびっきり面白い話を聞かせてやるから、もうちょっとだけ待っててな。
 兄ちゃんは第二の人生も精一杯生きてから、必ず勇斗に会いにいくから。

「アイズーっ! 行くよー!」
『何してるんですか、アイズさんっ! 空なんか眺めて!』
『早くしろ。置いていくぞ』
『――悪い悪い! 今行くよ!』
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

萌那
2021.05.20 萌那

グッド!

2021.05.20 白水廉

ありがとうございます!
そう言ってもらえて嬉しいです!

解除

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。