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本編・取り違えと運命の人
026 初めてのボーナス
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リカルドは大工だ。ガテン系、納得。一緒に暮らし始めた翌日に町の役所でいろいろ手続きしたんだけど、リカルドはその足で職安に行き、翌々日には仕事を決めてきた。しかも、さりげなく、町で一番大きくて経営状況も安定した建築業者に。さすが、行動力ある。
すごく真面目で、毎回、給料袋そのままの金額が入ってる。飲みもしないし、打ちもしない。もちろん買いも。
「俺、お金管理できないからさー。ジュリエッタに任せられるの、すごく助かるんだ!」
嘘。毎回もらったお給料からおこづかいって形で渡すけど、あんまり使ってないっぽい。
「故郷にいた頃は、友達や後輩についおごっちゃって、給料日前なんかピーピーだったけど、こっちに来てからはあんまりそういうのないから」
職場の人達と仲が悪いとかじゃなく、ほとんどの人が真面目な所帯持ちで、飲み会がそもそもあんまりないらしい。なるほど。酒自体は好きなんだけどね、なんて言ってた。
だから、ボーナスが一部使われてたのに、ちょっとだけびっくりした。
「ごめん。俺、お金管理できないから、金額足りなくて」
「いや、いいけど。ボーナスだし。そもそも、これ、全部リカルドのお金だし」
びっくりするっていうのも、ほんとは失礼な話で。リカルドは私を信頼して預けてくれてるのに。
「なにに使ったか、聞かないの?」
「好きに使えばいいと思うから、別に」
「ジュリエッタらしい」
リカルドからくすくす笑われた。なにか笑いどころ、あったかしら。
「はい」
リカルドは愛用の袋から丁寧に包装された小箱を取り出し、私に差し出した。
「なあに、これ?」
「プレゼント」
「……開けてみていい?」
「もちろん」
包装をゆっくりと解き、箱を開けると、中に入っていたのは美しい銀の首飾りだった。
「これ……」
あまりにも予想外で、思わずリカルドを見る。
「ジュリエッタ、お針子さんなのに、自分を飾ることには無頓着だから」
にこにこしてリカルドが答える。
「ばか……せっかくのボーナスなのに……」
「せっかくのボーナスだから、自分が一番買いたいものを、買ってしまった」
お礼を言っていなかったことにはっとし、あわててお礼を言う。
「ありがとう! すごく嬉しい!」
「着けてみて! 着けてみて!」
少し重みのある首飾りを箱から取り出し、着けて、姿見の前に立つ。
「うわあ……」
私の胸元で、優美な細工の首飾りが、品のいい繊細な輝きを放っている。こんなの、着けたことも、ましてやもらったこともないので、嘆息する。綺麗。
「ああ、思った通り。とても似合う!」
私が振り向くと、満面の笑みを浮かべていたリカルドが急にあわてだした。
「え、ちょ、ジュリエッタ! ど、どうしたの!!」
「え?」
もう一度鏡を見、リカルドが動揺している理由に納得した。そっと頬を拭う。
「悲しいとか、嫌とかじゃ、なくて。すごく、嬉しくて」
「これからも、いっぱいあげるから! 俺、金の管理すごく下手で、ボーナスまでうまく貯められなかっただけで!」
「ほんと、おひとよし」
リカルドにそっと抱きつくと、リカルドはとても優しく抱きしめ返してくれた。
すごく真面目で、毎回、給料袋そのままの金額が入ってる。飲みもしないし、打ちもしない。もちろん買いも。
「俺、お金管理できないからさー。ジュリエッタに任せられるの、すごく助かるんだ!」
嘘。毎回もらったお給料からおこづかいって形で渡すけど、あんまり使ってないっぽい。
「故郷にいた頃は、友達や後輩についおごっちゃって、給料日前なんかピーピーだったけど、こっちに来てからはあんまりそういうのないから」
職場の人達と仲が悪いとかじゃなく、ほとんどの人が真面目な所帯持ちで、飲み会がそもそもあんまりないらしい。なるほど。酒自体は好きなんだけどね、なんて言ってた。
だから、ボーナスが一部使われてたのに、ちょっとだけびっくりした。
「ごめん。俺、お金管理できないから、金額足りなくて」
「いや、いいけど。ボーナスだし。そもそも、これ、全部リカルドのお金だし」
びっくりするっていうのも、ほんとは失礼な話で。リカルドは私を信頼して預けてくれてるのに。
「なにに使ったか、聞かないの?」
「好きに使えばいいと思うから、別に」
「ジュリエッタらしい」
リカルドからくすくす笑われた。なにか笑いどころ、あったかしら。
「はい」
リカルドは愛用の袋から丁寧に包装された小箱を取り出し、私に差し出した。
「なあに、これ?」
「プレゼント」
「……開けてみていい?」
「もちろん」
包装をゆっくりと解き、箱を開けると、中に入っていたのは美しい銀の首飾りだった。
「これ……」
あまりにも予想外で、思わずリカルドを見る。
「ジュリエッタ、お針子さんなのに、自分を飾ることには無頓着だから」
にこにこしてリカルドが答える。
「ばか……せっかくのボーナスなのに……」
「せっかくのボーナスだから、自分が一番買いたいものを、買ってしまった」
お礼を言っていなかったことにはっとし、あわててお礼を言う。
「ありがとう! すごく嬉しい!」
「着けてみて! 着けてみて!」
少し重みのある首飾りを箱から取り出し、着けて、姿見の前に立つ。
「うわあ……」
私の胸元で、優美な細工の首飾りが、品のいい繊細な輝きを放っている。こんなの、着けたことも、ましてやもらったこともないので、嘆息する。綺麗。
「ああ、思った通り。とても似合う!」
私が振り向くと、満面の笑みを浮かべていたリカルドが急にあわてだした。
「え、ちょ、ジュリエッタ! ど、どうしたの!!」
「え?」
もう一度鏡を見、リカルドが動揺している理由に納得した。そっと頬を拭う。
「悲しいとか、嫌とかじゃ、なくて。すごく、嬉しくて」
「これからも、いっぱいあげるから! 俺、金の管理すごく下手で、ボーナスまでうまく貯められなかっただけで!」
「ほんと、おひとよし」
リカルドにそっと抱きつくと、リカルドはとても優しく抱きしめ返してくれた。
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