【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第三章 カバーで本を判断するな

072 牧羊犬と救助犬の謝肉祭 ①

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 うちの大学は、就職に関して、手厚いフォローがある方なんだろう。
 就職説明会が開催されると掲示されていた。就職課の職員による就職全般のまとめと、内定済の四年生と卒業生による体験談が聞けるらしい。事前登録不要で誰でも参加可能だったので、出席することにした。特に希望の職種がない僕は、先輩達がどこに就職したかを知りたかったのだ。過去に内定者がいるならば、今後も採用を期待でき、より現実的だから。

「あ……」

 会場の教室に入ると、スーツ姿の響さんと目が合った。まさかの再会。ごく普通の黒いビジネススーツに白いシャツなのに、圧倒されてしまうのはなぜだろう。

「ボーダーコリー……いや、渋沢くん」
「はい」
「説明会終了後、時間ある? 話をしたい。男同士で」

 あ、これ、面倒な予感しかないやつ。
 人生には避けられない局面がある。むしろ避けると厄介なことになるから、早めに対峙しておいた方がいい。
 僕は覚悟を決めた。就職説明会終了後、響さんと二人で話すことにしたのだ。



 奢ってくださるということでお任せしたら、焼肉になった。しかも個室。緊張感半端ない。

「あの、僕は若葉さんと真剣にお付き合いしています」
「うん。わかる。若葉、幸せそうだから」
「それは、よかったです」

 客観的な目線、特にご家族から見て、若葉ちゃんが幸せそうというのは、非常に安心するし、とても嬉しい。

「若葉は危なっかしいとこあるけど、ギチギチに縛るより、のびのびさせた方が、よさを発揮できるタイプ」
「はあ」
「ボーダーコリー、合ってると思う」
「はあ」
「出会いが出会いだったから、ちょっと拗ねただけ」

 なんだろう、この、しょぼくれた大型犬みたいなのは。
 再会してからずっと思っていたけれど。響さん、なんだか見た目とキャラが違う。第一印象はどこのヤの付く自由業の方かという感じだったけど、一対一で話してみると、なんだかのんびりした空気が漂っている。

「今日は、親睦を深めたかったのと、恋愛相談がしたくて」
「恋愛相談」

 モテそうな顔してるのに。そう思ったのが表情に出ていたのか、響さんは続けて言う。

「俺の顔に惹かれて寄ってきた女子とは続かない。ワイルドな感じとか俺についてこいみたいな硬派な男気を求めるタイプからは、ウザいって振られる」
「はあ。でも、僕に相談しても仕方な」
「君はモテてきたはず。俺の嗅覚がそう言ってる」

 動物的な勘の鋭い兄妹だ。
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