【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第三章 カバーで本を判断するな

075 牧羊犬と救助犬の謝肉祭 ④

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 そう言われた瞬間、あ、と思った。
 教職の授業で学習した色覚障害。P型は赤色を、D型は緑色を、感知しづらい。
 赤いチョークは黒板と同化して判別しづらいから、大事な箇所は黄色で書くとよい、と習った。

「小さい頃から少しおかしいとは思ってて。落ち着いた色を選んだつもりなのに、響くんは派手な色が好きなのねと言われていたから。まあ、似合うらしいから、私服はもう、派手な色ばかり着てるけど」
「似合ってました。この間のシャツ」

 僕がそう答えると、響さんはにこにこ笑った。無邪気な笑顔だと、若葉ちゃんと兄妹なんだなとよくわかる。
 僕は、焼けた肉を、響さんの取り皿に置いた。

「ありがとう」
「いいえ」

 僕はひたすら焼けた肉を響さんに渡し、まだ焼いていない肉と野菜を網に乗せた。

「色覚障害、男性は二十人に一人と言われるし、そんなにレアじゃない。俺は、自分の目に映る世界も、やわらかい色合いで気に入ってる。でも」

 そこで響さんは取り皿を見て、くすりと笑い、何枚か僕の取り皿に乗せてくれた。あ。僕は肉を全部響さんに渡していたのだ。もらった肉を遠慮なく食べる。おいしい。

「ちょっとした不便はやっぱりある。赤から緑に切り替わっても充電完了に気づけないし、肉が焼けたかどうかも見分けにくい。だからこんな風に手伝ってもらえると、すごく助かる」

 響さんは笑うけど、どこかその表情は寂しげで。もっと憂いのない笑顔がいいなと思う。

「僕、視力悪くて、眼鏡が手放せないんですけど」
「うん」
「僕のことは、焼肉用眼鏡だと思ってくれたらいいですよ」

 僕の言葉を聞いて、響さんは声を上げて笑った。屈託なく。

 授業で見せてもらった健常者と色覚障害の方の視覚再現画像。僕は、色覚障害の方が見ている世界を、セピアがかったやわらかく優しい色合いだと感じた。
 不自由はなくせるといい。でも、あの世界も、とても優しく美しいんだ。
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