【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第四章 走る前に歩くことを学べ

112 僕の彼女とホワイトデー ⑦

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 翌朝。バレンタインとは違う意味で、若葉ちゃんはなかなか起きられなくて。

「……新くん、すっごく意地悪だった」
「ごめん。反省してるけど、若葉ちゃんがあんまり淫らで、血迷った」
「……人のせいにした。ひどい」
「ごめん。でも、気持ちよさそうで、すごく可愛かった」

 なんだかんだ理由をつけては抱きつぶしてしまうので、やっぱりあんまり長いこと会わないのはよくないかもしれない。

 本当に反省したので、ゆっくりお風呂に入ってもらっている間、朝食とも昼食ともつかない食事を僕が作った。ごはんと味噌汁と野菜炒めと卵焼き。大したものは作れないけど、若葉ちゃんは僕がごはんを用意するとものすごく喜んでくれるし、とてもほめてくれる。今日もおいしいと言ってもらえた。嬉しい。
 食後、お茶を飲みながらのんびりしている若葉ちゃんに切り出してみる。

「若葉ちゃん」
「なあに?」
「バイト代入ったら、一緒に選んでほしいものがあるんだけど」
「選んでほしいもの?」
「車を買おうと思ってるんだ」
「車?」
「うん。貯金と合わせれば買えるかなと思って。これから夜に行動しないといけない時は、いつでも言って」

 笑顔で伝えたつもりだったけど、若葉ちゃんは困惑の表情を浮かべた。

「もしかして、私のために、そんな高価な買い物をしようとしてる?」

 少し顔色も悪い。これは安心させなければならない。

「ううん。確かにきっかけは、若葉ちゃんに無理させちゃったことなんだけど」

 全然関係ないよと嘘を吐くよりも、正直に話した方が若葉ちゃんは納得する気がするし、そもそも僕は嘘がそこまで上手くない。黙ってやり過ごすことと、上手い嘘を吐くことは、やっぱり違うのだ。

「僕はずっと先延ばしにして、自分から行動してなかったなって。これから社会に出ることを考えると、運転免許だけ持ってても仕方ないし、今が車に慣れる最後のいい機会かと思って。それに」
「それに?」
「若葉ちゃんと一緒にもっといろんなところに行きたいから、若葉ちゃんも気に入る車がいいなと思ったんだ。選ぶの、手伝ってくれないかな?」

 僕の言葉を聞くと、若葉ちゃんは数回瞬き、ゆっくり口を開く。

「もちろん、喜んで!」

 とびきり素敵な笑顔だったから、僕は思わず若葉ちゃんを抱き寄せ、くちづけた。

 キスを終え、彼女の肩越しに見た窓の外の空は、雲一つなく澄み切っていて。
 春はすぐそこまで来ている。



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You have to learn to walk before you run.
走ることができるようになる前に、歩くことを学ばねばならない。千里の道も一歩から。
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