【R18】六つのかりそめの閨

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本編

第四日

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 翌朝、コンスタンツェはひどく気持ちが沈み、なかなか寝台から出ることができなかった。夫となる皇帝アレクサンドルにしか許してはいけないと信じていた場所を、奴隷のサーシャにさわられ、中を弄られ、快感まで得てしまった。閨教育は皇后となる者の責務で、身体は理想的な反応を示していたのだとしても、アレクサンドルを裏切っている気持ちがどうしても消えない。
 全てがぼんやりし始めた中で投げかけられた、サーシャの言葉を思い出す。

『コニーはいつも考え過ぎです』

 考えても意味はない。現実は変わらない。時間が流れていくだけで、無駄だ。コンスタンツェは思考を放棄した。

 湯浴みを済ませ、朝食をとると、コンスタンツェは婚礼の衣装合わせへと向かった。用意されていた衣装は、簡素な形状であったが流れるような曲線が優美で、光沢のある白絹の生地に金糸とごく淡い緑色の糸で施された草花の繊細な刺繍が映えていた。宝冠と首飾りと指輪は、金と翠玉で彩られていた。コンスタンツェの白い肌と焦げ茶の髪とはしばみ色の瞳を引き立てるように計算され尽くした意匠で、全てを纏った彼女は確かに美しかった。コンスタンツェは自分を地味で華やかさとは無縁な人間だと思っていたので、こんなに神々しく見せてくれる衣装が存在することに驚いた。

「ああ、なんて素晴らしい! まるで光り輝く春の女神のようです! アレクサンドル陛下のお見立てはさすがです!」
「ありがとうございます。アレクサンドル陛下が選んでくださったのですか?」
「はい。アレクサンドル陛下がコンスタンツェ殿下を最も美しく見せるものを吟味して、各国から取り寄せられました」

 その時きらりと家令のモノクルが光った。

「……素敵なモノクルですね」
「ありがとうございます。先帝から賜ったものです。私はこのモノクルを生涯大切に使い続けますが、最近では時代遅れでございますね。若者は薄いレンズを目に入れて、視力を矯正していることが多いです」
「そんな技術があるのですか?」
「魔法仕掛けのレンズを輸入しています」
「……魔法薬も、輸入なさっておられるのですか?」
「はい。魔法薬は、医療に使うものだけでなく、媚薬や、簡単な変化に使うものまで、多種多様です。代わりに我が国からは武器を輸出しています」

 コンスタンツェは、他国のことについても、外交についても、疎い。もうただの王女ではなく皇后となる身なのだから、これからはもっと政治について知らなければならないだろう。そう考えて、コンスタンツェの気持ちは重くなった。そもそもこの婚姻自体が政治なのだと、改めて気づいたからである。
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