【R18】朝も昼も夕も夜も

テキイチ

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本編

08 夏の麻 ③

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 俺はそれから美羽の部屋に居ついた。
 美羽は心地がよかった。踏み込んでこないけど、こちらからの投げかけはきちんと受け止めてくれる。旨いもん食わせたらごきげんになるし、第一印象ほど面倒なタイプじゃない。

 悪行を責められるのも、変に同情されるのも、腫れ物にさわるように扱われるのも、息が詰まる。
 美羽はどれでもなかった。中庸。清濁併せ呑む感じがありがたかった。

 自分の思う善と違うとなったら即切りしてきた友人達、他者を利用することしか考えていないコンパでしか会わない奴ら、食ってるつもりが食われてた一夜限りの女子達。美羽はそのどれとも違う。こういう人間はおそらく得難い。それは直感的にわかった。



 ☆+゜*。:゜☆゜:。*゜+☆

 はねやには楽しいものがたくさんありました。読むもの、見るもの、動くもの。

「楽しいものをたくさん紹介してくれてありがとう」

 ツバサくんがお礼においしい食べ物を作ると、ミウちゃんはとても喜んでくれました。

 ツバサくんとミウちゃんはお互いの身体を食べさせ合います。
 ミウちゃんはどんどんおいしくなっていきます。でも、ミウちゃんはツバサくんをおいしいとは思っていないようです。
 ほんとうはぼくのこともおいしく食べてほしいけど。
 せめておいしいたべものを作ってあげよう。

 とってもおいしいブタノカクニができました。はねやに行くと、店はがらんとしています。ミウちゃんはどこに行ったんだろう。不安になったツバサくんの目に、置き手紙が飛び込んできます。

《たびにでます。げんきでね!》

 せっかくミウちゃんがおいしく食べてくれるといいなと思って作ったブタノカクニです。ミウちゃんのためのものなのだから、一人で食べる気なんて、まるで起きません。

 はねやには楽しいものがたくさんあると思っていたけれど、それは違いました。
 今、ツバサくんはちっとも楽しくありません。
 ツバサくんは気づきました。ミウちゃんがいるから楽しかったのだと。

 どこに行っちゃったんだ。ミウちゃんがいればそれでいいのに。
 こんなことなら、勇気を出しておけばよかった。

 ツバサくんはずっとミウちゃんにあげたいものがありました。誰からも欲しいと言われないからあげる勇気が出なかった、でももらってほしかったもの。

 ミウちゃん、お願いだから帰ってきてよ。捨てられてもいい、せめてぼくは渡したいんだ――

 ☆+゜*。:゜☆゜:。*゜+☆



「美羽……!」
「何? どうしたん?」

 美羽が俺の顔をひょっこり覗き込んできた。

「……はい」

 珍しくちょっと困ったような顔で、美羽が箱ティッシュを渡してくる。
 それを見て俺は、自分が泣いていると気づいた。



 俺は自分の気持ちと向き合うことを恐れていた。
 セックスはただの運動だと思い込もうとしていた。
 美羽をイカせたいのも、ゲームをクリアしたいのと似たようなものだと。
 だからセックスに気持ちを込めたことがなかった。これまでの相手には、込める気持ちもなかった。
 そんなものはいらないと、美羽に、拒絶されるのが怖かった。

 フラットに見てくれる美羽のような人間は得難い。一緒にいたい理由を、打算だけで言うなら、まあ、そうなんだろう。
 でも本音は。美羽の楽しそうな、嬉しそうな、喜んでる顔をもっと見たい。そんな単純なこと。そう感じてしまうことに、理由なんかない。

 耳が綺麗だと思ったんだ。
 思わずぺろりと舐めると美羽は震えた。
 もっと舐めたい。もっと食べたい。
 もっと一緒にいたい。君が大切なんだ。行かないで。側にいて。

 その日俺は、満たされたセックスを初めて知った。
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