【R18】朝も昼も夕も夜も

テキイチ

文字の大きさ
9 / 23
本編

09 夏の麻 ④

しおりを挟む
 あれから一年ちょっと。俺達はまだ一緒に過ごしている。

「翼。用意できた」

 普段から名前で呼んでくれと美羽に頼んだら、あっさり、わかったと言われた。本当は自発的に呼んでほしかったんだけどと少し拗ねると、頼まれない限り誰のことも名字でしか呼ばない、そう、さらりと言われた。
 具体的に言えば、美羽は大抵やってくれるのだ。

 今日はお互い三品ずつ用意することにした。俺達は週末、そんな風に過ごすことがある。ちょっとしたパーティーみたいな。
 美羽が用意したのは、冷奴と、解凍した枝豆と、厚めにスライスしたアボカドにオリーブオイルと醤油をかけたもの。美羽の出してくるものは、簡単なはずなのに、なんだか癖になる。アボカドは手の込んだ料理でしか食べたことがなかったので、このシンプルな味にはまってしまった。旨い。

 俺が用意したのは、ささみと大根のサラダに梅ドレッシングをかけたものと、薬味を添えたそうめんと、茄子の揚げ煮。美羽はそうめんの薬味を冷奴にもかけて楽しんでいる。俺も真似をする。この豆腐、ちょっと高いやつだ。味が濃くて旨い。

「そうめんは正義」
「夏だしな」
「サラダ、おいしい」
「だろ? さっぱりしてるし、梅の酸味もいいだろ」
「うん。茄子もおいしい」
「だろ? 茄子は油と合うよな」
「うん。かりっとしてじゅわっとして、おいしい」

 乱切りにした茄子を揚げて、出汁と醤油で軽く煮た。面倒な時はごま油で炒めてもいいけど、揚げた方が断然旨い。
 今日の料理は、さっぱりしたものと油物の塩梅がよく、組み合わせても相性がいい。ビールが旨い。
 美羽がにこにこしていて、とても穏やかな気持ちになる。平和な夏の夜。



「今日、暑いね」

 食事と後片付けを終え、美羽が手をぱたぱたさせる。そんなことをしても、温度は変わらないだろうに。

「暑い?」
「うん」

 確かに、美羽はうっすら汗をかいていて、鎖骨のあたりが光って見えた。

「それなら、脱いじゃうか」

 ワンピースの前ボタンを外し、そっと鎖骨にくちづける。

「そういうつもりじゃ、なかったんだけど」
「じゃあ、そういう気になって。俺はなった」
「まあ、いいけど」

 俺は自分の服を脱ぎ捨て、ベッドに雪崩れ込み、美羽の服を腰まで下げた。

「今日の下着、初めて見た」
「こないだ買ったやつ」
「ピンクのレース、可愛い」

 美羽は少し目を泳がせている。

 この一年ちょっとで、いくつか変わったことがある。美羽の下着もその一つだ。最初は本当にシンプルなものしか持ってなかった。飾りが全くなく、色はベージュか黒。ベージュは透けないように、黒はうっかり見えても比較的目立たないという色気のない理由。機能性重視。

 だから、レースがあしらわれたオフホワイトの下着を纏った美羽を初めて見た時、俺は興奮して褒めまくった。すごくいい。似合う。可愛い。
 そんなに絶賛されると思ってなかったみたいで、本人は少しぽかんとしてたけど。

 綺麗な下着はもちろん俺も大歓迎だ。でもそれ以上に、ネットで下着を見ている美羽が、なんだか嬉しそうで。そう言ったら、今までは興味なかったけど楽しくなってきた、と返ってきた。
 喜んでる美羽が増えるのは、とても嬉しい。

「せっかく可愛いのに脱がすのもったいないけど」
「手は全然名残惜しんでないけど」

 確かに俺は、美羽の返事を聞いている間に肩紐を下げ、ホックを外し、取り去っていたけど。

「ほら、プレゼントは包装紙よりも中身が大事だし」
「またよくわからないたとえを……」

 胸をそっと揉みしだくと、美羽は声を上げた。

「あっ……」
「直接さわった方が美羽もよさそうだし」
「さわりたいだけでしょ」
「うん。やわらかくて気持ちいい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】ゆるぎとはな。

海月くらげ
恋愛
「せんせえ、もうシよ……?」 高校生の花奈と、聖職者であり高校教師の油留木。 普段穏やかで生徒からも人気のある油留木先生。 そんな男が花奈にだけ見せる表情がある。 教師×生徒 禁断TL小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...