【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第一章 スパイダー

24.

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 あきれたような笑香の声音に僕は笑いをこらえて言った。

「サッカーだって勉強が大事だぞ。戦術とか、理論とか。試合の前後は特にいろんな分析が必要だし」
「勉強以前の問題よ。あの子、頭に血がのぼりやすいから。いつか乱暴なプレイして誰かに訴えられると思う」

 僕は思わず吹き出した。

「そしたら僕が弁護してやるよ」

 笑いながら答えると、笑香はふと気づいたように僕を見た。

「史郎君は将来弁護士志望なんだっけ」
「まあね」

 僕はうなずいた。

「Jリーガーの弟がいて、夫が優秀な弁護士だったら君の将来は安泰だな」
「……」

 笑香は黙ってうつむいた。一瞬もどった以前の空気は、まるで風船がしぼむかのように一気に消え失せてしまった。
 僕は前を見たまま言った。

「一体何が不満なんだ? 僕は君に何も無理なことをさせようとしてるわけじゃない。僕の代わりに父親を殺せとか、体を売って金をかせげとか、そんなことを言ってるわけじゃないんだ。どうしてそこまで僕を嫌う?」
「違うわ」

 笑香はひどくもどかしそうに声を強めて言い切った。

「あなたは何もわかってない。──どうしていつもそうやって私に色々押しつけるの? それであなたを好きになると思うの?」
「別に好きになんかなってくれなくてもいい。ただ、今まで通りにそばにいてくれればいいだけだ」
「そんなことできるわけないじゃない!」

 平行線をたどる会話に、笑香は深く頭を抱えた。

「……こうやって、あなたと話してる今だって、ずっと私は思ってるわ。あの時のあなたの話は夢だったんじゃないかって。──変わったのはあなたの態度だけで、お父さんもお母さんも今までのことも何も変わらない。でも今まで通りになんてできるわけない!」
「あいにくだけど、夢じゃないんだ」

 僕の冷ややかな一言に笑香はびくりと肩を震わせた。

「今、君が言っただろ。君はもう知ったんだ、自分の父親の犯罪と僕の本当の姿をね。今さら僕がつくろったところで君は忘れられるのか?」

 僕達はそれぞれに押し黙った。周囲の喧騒が遠く聞こえる。
 風が吹いた。
 勇人が両手にペットボトルをかかえ、公園の入り口から走って来るのが見えた。僕はベンチから立ち上がった。

「君に見せたいものがある。後で僕の家に来てくれ」

 笑香は僕の顔を見た。
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