【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第二章 おもちゃの密室

16.

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 新保につれて行かれた店は、駅前にあるアーケードの中の小さな中華料理屋だった。
 僕も今まで何回か前を通ったことがある。黒くすすけた店内は、僕達と同じような学生やサラリーマンで混雑していた。
 大きな体を無理やり席に押し込むようにおさめると、新保はメニューも見ずに言った。

「俺、ネギ味噌チャーシューメンの大盛と唐揚げ。お前は?」

 さわがしい店の雰囲気に多少気圧されていた僕は、油で汚れた壁のメニューをちらりと一瞥して言った。

「新保と同じでいいよ。……あ、でも大盛と唐揚げはなしで」
「お前、ちゃんとメシ食ってんの?」

 まるで初めて僕を見るように新保はまじまじと僕を見た。

「何だよその顔。しけたツラして……休みの前はもうちょっとしゃきっとしてた気がするぜ」

 今日一日くりかえした言葉をまた使うのも面倒になり、僕はむっつりと黙り込んだ。

「前にも言ったような気がするけど。お前って、ほんと何考えてんだかわかんねえ」

 新保は無遠慮に言葉を続けた。

「クラスの誰とでもしゃべってるし、別に話しかけにくいわけじゃないのに、なーんかうわっつらで相手してるっていうか……実は何でも知ってるくせに、何にも興味ないような。そんな感じ」

 ずいぶんな言われようだ。
 返事がないのも気にならないのか、新保はそのまま手をあげた。後ろにひかえていた店員に愛想よく注文をした後で、出された水に口をつけるとあらかた飲みほしてしまう。

「家はこのへんなのか?」

 半分社交辞令で聞くと新保は首を横に振った。

「チャリ通で六区から通ってる。雨の日は電車だけどな。──この店の近くに母親の勤め先があるんだ。母親がポンコツで、昔っから天然っての? しょっちゅう忘れ物するんだよ。で、学校のついでに忘れ物を届けて、ここの前を通った時に店の中に入ってみた。うまかったから、よく来るようになった」

 僕はわずかに頬をゆるめた。よく見る店に結局入らない人間と、ためしに入ってみる人間がいる。僕は前者で、新保は後者か。
 めずらしく僕は興味を持って他人に私的な話を聞いた。

「母親って、何してるんだ?」
「保育士。すぐそこの、相愛学園の幼稚園で副園長やってる」

 相愛といえばこの辺では有名なお嬢様学校だ。そこの副園長がポンコツでいいのか。

「幼稚園なら保育士じゃなくて幼稚園教諭だろ。副園長の息子だったらそれくらい覚えとけよ」

 僕が言うと新保はその細い目を二、三度まばたきした。

「お前、よく知ってんな。母ちゃんにもよく言われるんだ、それくらい覚えとけって。さすが優等生は違うな」

 そこで注文したラーメンがやってきた。予想以上のボリュームに僕は一瞬たじろいだ。が、食欲をそそるニンニクの香りが腹の虫を刺激した。

「さあ食うぞ」

 僕の分の倍はあるどんぶりを前にして、新保はうきうきと箸を割った。
  僕のものさえ普通の感覚なら十分に大盛りだが、新保のはてんこ盛りの白髪ネギの上に厚く切られたチャーシューが五枚も重ねられている。
 よく味のしみたチャーシューや、スープがからんだ太麺は思った以上の味わいだったが、案の定半分ほどで僕は苦しくなってきた。

「水嶋、もう食わねえの? じゃあ俺にチャーシューちょうだい」
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