【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第二章 おもちゃの密室

17.

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 いいとも嫌だとも言わないうちに新保の箸がのびてくる。ひょいとチャーシューをつまみ上げ、ほぼ一口で食いきられた。
  僕は思わずむっとした。僕だって別に昔から小食だったわけじゃない。中学の頃はよくサッカー部の連中と練習の後、大盛のカレーを食べに行った。

「唐揚げ、一個食うか?」

 小山に盛られた唐揚げを自分の前に押し出され、僕はあわてて首を振った。ただ、最近は食べるのをちょっとひかえているだけだ。
 僕は半分やけになり、スープまで飲みほして完食した。

     *

 支払いを終えて店を出る時、僕は満足に息もできないくらいだった。

「お前、大丈夫か?」

 新保の心配そうな声に僕は無理やり笑顔を作った。こんなに苦しい笑顔を作るのは本当に久しぶりだ。
 どうやら気を使っているらしく、自転車を押してゆっくり進む新保の後について行く。やっとの思いで追いつくと、新保がふとその歩みを止めた。

「……俺、お前に聞きたいことがあったんだ」

 新保はぼそりとつぶやいた。

「お前、昔長野に住んでただろ」

 僕は自分の顔を上げた。

「覚えてないか? 結城ゆうき正孝って。──俺、お前と同じ東部幼稚園だったんだ」

 僕は一瞬、めまいがした。

「あの頃、俺んちはまだ親が離婚する前で、母ちゃんは幼稚園で働いてたんだ。それで俺も一緒に通ってた。結城和子かずこっての、覚えてる?」

 僕の額ににじんだ汗は決して満腹のせいではなかった。腹の底から吐き気を感じ、その場にうずくまりそうになる。

「たしかお前は途中でいなくなって、俺も小学生の時に親が離婚してこっちに来たんだ。でも長野にいとこがいて……そいつがちょっと教えてくれた。お前、小学生まで長野にいただろ。五年生くらい……いつこっちに来たんだ?」

 まさたか。結城正孝。
 たしかに僕も覚えている。体格がよく、そのわりに運動よりも絵本が好きで、当時は引っ込み思案だった僕とよく図書室の中で遊んだ。
 その頃、僕は精神が一番不安定な時期で、母親が僕を迎えに来るとすぐに本棚の影にかくれた。母親をさける僕の姿に、見つけに来た結城先生はいつもこまった顔をしていた。
 僕の過去。
 僕が一番ふれられたくない、僕を作り上げる前の過去。
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