【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第三章 夜の道で、僕を呼び出した君は。

7.

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一体何が起こったのだろう。

 あくる日の朝、僕は身支度を済ませると玄関口に腰かけた。明かり取りの窓から入るまぶしいような光の中で、昨夜から考えていた疑問を再びくり返す。
 笑香は本当に来るんだろうか。
 昨日の夜の出来事は、本当に起こったことなんだろうか?
 現実をつかめない僕の前に、十時きっかりに笑香が来た。

「史郎君、ちゃんと朝ご飯食べた?」

 フリルのついたブラウスに、動きやすそうなショートパンツ。重そうなバッグを抱えているのはどこかに出かけるつもりなのか。
 玄関先でよそいき風にはにかんでいる笑香の顔に、ぼんやりとそんなことを考える。

「朝ご飯どころじゃないよ」

 どこかふわふわとした心地で答えると、笑香は大げさにため息をついた。

「もう。いいか、すぐお昼になるから。それじゃ、行こっか」

 僕は眉間にしわをよせた。何が何だかわからない。昨日の夜から、一体笑香は何を言ってるんだ?

「どこに……」
「いいから。とにかくついて来て」

 少し強引に言い切ると、笑香は僕の家を出た。そのままもよりのバス停に向かう。僕は自分でもあっさりと抵抗を止めてついて行った。
 バスに乗り、笑香の横にすわる。せまい座席で笑香の肩と太腿が僕にふれて来た。揺れ出すバスの景色の中で、僕は自分の胸の動悸が激しくなっていくのを感じた。平気な顔をしてすわっている笑香の神経が信じられない。

 バスが目的地に近づくにつれ、僕の瞳が自分でもわかるくらいにまん丸くなった。何人もの家族連れやカップルとともにバスを降り、僕はぐるりと目的地を見回した。

「……ここ?」
「たまには高校生らしい場所に二人で出かけるのもいいでしょ?」

 笑香が僕を連れて来た場所は、地元で有名な水族館だった。たいして大きくはないものの昔からある観光施設で、近くに住む小学生だったら一度は遠足で来る場所だ。
 僕は瞳をしばたたかせた。

「どうして……」

 僕がつぶやくと、笑って笑香は問いに答えた。

「久しぶりでしょ。小学生の時の遠足以来かも」

 古ぼけたコンクリート造りの建物は、たしかに懐かしい雰囲気をかもし出していた。

「はい。これ持ってて」

 どさりと重い荷物を渡され、反応しきれずに面食らう。笑香がさっさと受付でチケットを買って来て言った。

「私、割引券があったから持って来たの」

 僕の分のチケットを手渡す。僕はあわてて首を振った。

「自分の分くらい自分で払うよ。──っていうか、僕が払うよ。いくら?」
「いいの。昨日のお礼だから」

 その言葉に、僕はどきりとした。
 当たり前だが、笑香もちゃんと覚えてるのか。昨日あった出来事を。それならば、なおさらなぜ?

「そんなわけには……」

 僕が渋ると笑香が明るく言った。

「それじゃ、代わりに荷物持ちして。お弁当が入ってるから」

 僕は自分が抱えているトートバッグに目を向けた。

「おばさんが持たせてくれたのか?」
「違う。私が作ったの‼」

 真っ赤になって笑香が叫んだ。周囲の人から注がれる視線にさらに耳まで赤くなる。
 笑香はぱっと僕の手を引いて、水族館の中に入った。つながれた笑香の手のひらを、僕は全身で意識しながら自然に見えるようににぎり返した。

     *

 くすんだガラスの向こうからアザラシがとぼけた顔をして、僕達の様子をうかがっている。

「ちょっと待ってて」

 僕は近くに売店を見つけ、笑香に言い置いて歩き出した。抱えた荷物がけっこう重い。
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