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第三章 夜の道で、僕を呼び出した君は。
9.
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「何よ。文句ある?」
笑香がついに開き直る。僕は笑いながらわりばしを手に取った。
「いただきます」
「あ、そのコロッケは冷凍だから、こっちの肉団子からにして」
料理人から指図を受けて、はいはいとありがたく口に運ぶ。
「うまいよ」
僕の言葉に、じっと様子をうかがっていた笑香の顔が明るくなった。
「よかった。もっと食べて、この卵焼きも」
僕は一瞬、はしを止めた。だがいたずらっぽくこちらを見ている笑香の表情に、黙って卵焼きにはしをつける。
それは甘くないだし巻き卵だった。
「おいしい?」
笑香に聞かれ、ゆっくりとうなずく。何年かぶりに口にした黄色い卵焼きの味は、素直においしいと言えるものだった。
「史郎君が嫌いなことは知ってたんだけど、やっぱりお弁当には卵焼きが入ってないとさみしいかなと思って。練習してよかった」
うれしそうなその顔に、僕は一瞬胸に込み上げるものを感じた。笑香に気づかれないように卵焼きの味とともに飲み込む。その後は笑香に言われるままに、僕は充実した食事を満喫した。
食べ終わった弁当箱を笑香がかたづけている間、僕は芝生の上に寝転がり、深く満足のため息をついた。そっと目を閉じ、まぶたの向こうにちらつく木漏れ日を感じていると、いつしか眠気さえおりて来る。
そんな僕の様子を見たのか、笑香がくすっと笑うと言った。
「昨日、眠れなかったの?」
「……眠れるわけないだろ」
僕はぼそりとつぶやいた。
あんな──あんな告白の後で、ぐっすり眠れるわけがない。一晩悶々と考え続け、いつしか朝になっていた。
どこかうらみがましく続ける。
「言っとくけど、僕だって初めてなんだからな」
「何が?」
きょとんとした面持ちで笑香がたずねる。僕は勢いよく顔を上げた。
「何がって、あの……昨日」
思わず息をのむ。
「す……っ、好きな子から、告白されるなんて初めてなんだよ‼」
やけになってそう答えると、笑香はぱちぱちとまばたきした。そして半分開いた口がわずかにゆがんで閉じられる。
笑いをこらえている顔に、僕はぷいっと横を向いた。
「今さら、何言ってんだって思ってるんだろ」
ついに笑香が肩を震わせて笑い始める。僕は深々とため息をついた。
「もういい。そうやって笑ってろよ」
僕は再び寝転んだ。満腹感に毒気を抜かれて腹を立てる気にもならない。
「だって……だって」
笑香がくっくっと喉を鳴らした。
「史郎君……かわいいかも」
その一言に、僕は口元を大きく曲げた。
「ここで押し倒してもいいんだぞ」
ふてくされたままそう言うと、笑香はにこやかな表情で答えた。
「こーんなにやせちゃって、私より小さく見えるのに? ぜんっぜん怖くないけど」
笑香がついに開き直る。僕は笑いながらわりばしを手に取った。
「いただきます」
「あ、そのコロッケは冷凍だから、こっちの肉団子からにして」
料理人から指図を受けて、はいはいとありがたく口に運ぶ。
「うまいよ」
僕の言葉に、じっと様子をうかがっていた笑香の顔が明るくなった。
「よかった。もっと食べて、この卵焼きも」
僕は一瞬、はしを止めた。だがいたずらっぽくこちらを見ている笑香の表情に、黙って卵焼きにはしをつける。
それは甘くないだし巻き卵だった。
「おいしい?」
笑香に聞かれ、ゆっくりとうなずく。何年かぶりに口にした黄色い卵焼きの味は、素直においしいと言えるものだった。
「史郎君が嫌いなことは知ってたんだけど、やっぱりお弁当には卵焼きが入ってないとさみしいかなと思って。練習してよかった」
うれしそうなその顔に、僕は一瞬胸に込み上げるものを感じた。笑香に気づかれないように卵焼きの味とともに飲み込む。その後は笑香に言われるままに、僕は充実した食事を満喫した。
食べ終わった弁当箱を笑香がかたづけている間、僕は芝生の上に寝転がり、深く満足のため息をついた。そっと目を閉じ、まぶたの向こうにちらつく木漏れ日を感じていると、いつしか眠気さえおりて来る。
そんな僕の様子を見たのか、笑香がくすっと笑うと言った。
「昨日、眠れなかったの?」
「……眠れるわけないだろ」
僕はぼそりとつぶやいた。
あんな──あんな告白の後で、ぐっすり眠れるわけがない。一晩悶々と考え続け、いつしか朝になっていた。
どこかうらみがましく続ける。
「言っとくけど、僕だって初めてなんだからな」
「何が?」
きょとんとした面持ちで笑香がたずねる。僕は勢いよく顔を上げた。
「何がって、あの……昨日」
思わず息をのむ。
「す……っ、好きな子から、告白されるなんて初めてなんだよ‼」
やけになってそう答えると、笑香はぱちぱちとまばたきした。そして半分開いた口がわずかにゆがんで閉じられる。
笑いをこらえている顔に、僕はぷいっと横を向いた。
「今さら、何言ってんだって思ってるんだろ」
ついに笑香が肩を震わせて笑い始める。僕は深々とため息をついた。
「もういい。そうやって笑ってろよ」
僕は再び寝転んだ。満腹感に毒気を抜かれて腹を立てる気にもならない。
「だって……だって」
笑香がくっくっと喉を鳴らした。
「史郎君……かわいいかも」
その一言に、僕は口元を大きく曲げた。
「ここで押し倒してもいいんだぞ」
ふてくされたままそう言うと、笑香はにこやかな表情で答えた。
「こーんなにやせちゃって、私より小さく見えるのに? ぜんっぜん怖くないけど」
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