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第四章 文化祭
9.
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笑香。
誰にも相談できない思いをどうやって抱えていたのだろう。
「──わざわざ北高のグループを選んでそこで広めたのはどうしてだ? 笑香を傷つけたいのなら、出会い系サイトに登録した後、ツイッターで拡散した方が早いだろう。なんでそんな面倒なことを……」
僕が鋭く切り出すと、大西は深くうつむいた。
「塾でちょっと話題になるだけで良かったの。それならそんなに大変なことにはならないだろうって。笑香のお母さんにも伝えたわ。不審者がいるって言えば笑香を一人にしないと思って……。水嶋君が笑香を迎えにここに来たことも知ってる。だから言ったの、お母さんに。夜遅く、水嶋君とこっそりコンビニで会ってましたって。──笑香は知らない、でも私はこのことを知ってるって、それだけだったのに……!」
それだけ。それだけか。
僕は拳を握りしめた。
『どうしてわざわざ笑香のことを伝えに来たんだ?』
僕の問いかけに、植原紗栄子が答えたのだ。
『水嶋さんの役に立てたらと……』
思いつめた目でつぶやいた後、胸を押さえて言葉をつなげる。
『いいえ。会いたかったんです。もう一度水嶋さんに会いたかった。──それだけです』
僕のまるであわれむような視線に気づいたのだろう。真っ赤になって肩をすくませる。
『あのっ、あの、それで……最後に、一度だけ握手してもらえませんか? それだけでいいんです。もう、それで終わりにします』
勇気をふりしぼった声。
『──悪いけど』
返した言葉は同じものだった。
告白を聞いたあの時と、同じ口調の同じ言葉。植原紗栄子の表情があの時と同様にゆがむ。
『ごめんなさいっ……』
その場から走り去る後ろ姿を、僕は虚無感と共に見送った。
それだけ。
もう一度、会いたかっただけ。
一度だけ、手をつなぎたかっただけ。
塾で、ちょっと話題になるだけ。
僕は静かにつぶやいた。
「もういい。とにかく僕は君が何をしたか知ってる。今後笑香に何かあったら……」
僕は唇だけで笑った。
「同じことを返すだけじゃ、済まないと思ってくれ。──これは警告だ」
それだけ言って背を向ける。
大西は返す言葉をなくし、優等生の仮面を脱ぎ捨てた僕の背中を見つめていた。
誰にも相談できない思いをどうやって抱えていたのだろう。
「──わざわざ北高のグループを選んでそこで広めたのはどうしてだ? 笑香を傷つけたいのなら、出会い系サイトに登録した後、ツイッターで拡散した方が早いだろう。なんでそんな面倒なことを……」
僕が鋭く切り出すと、大西は深くうつむいた。
「塾でちょっと話題になるだけで良かったの。それならそんなに大変なことにはならないだろうって。笑香のお母さんにも伝えたわ。不審者がいるって言えば笑香を一人にしないと思って……。水嶋君が笑香を迎えにここに来たことも知ってる。だから言ったの、お母さんに。夜遅く、水嶋君とこっそりコンビニで会ってましたって。──笑香は知らない、でも私はこのことを知ってるって、それだけだったのに……!」
それだけ。それだけか。
僕は拳を握りしめた。
『どうしてわざわざ笑香のことを伝えに来たんだ?』
僕の問いかけに、植原紗栄子が答えたのだ。
『水嶋さんの役に立てたらと……』
思いつめた目でつぶやいた後、胸を押さえて言葉をつなげる。
『いいえ。会いたかったんです。もう一度水嶋さんに会いたかった。──それだけです』
僕のまるであわれむような視線に気づいたのだろう。真っ赤になって肩をすくませる。
『あのっ、あの、それで……最後に、一度だけ握手してもらえませんか? それだけでいいんです。もう、それで終わりにします』
勇気をふりしぼった声。
『──悪いけど』
返した言葉は同じものだった。
告白を聞いたあの時と、同じ口調の同じ言葉。植原紗栄子の表情があの時と同様にゆがむ。
『ごめんなさいっ……』
その場から走り去る後ろ姿を、僕は虚無感と共に見送った。
それだけ。
もう一度、会いたかっただけ。
一度だけ、手をつなぎたかっただけ。
塾で、ちょっと話題になるだけ。
僕は静かにつぶやいた。
「もういい。とにかく僕は君が何をしたか知ってる。今後笑香に何かあったら……」
僕は唇だけで笑った。
「同じことを返すだけじゃ、済まないと思ってくれ。──これは警告だ」
それだけ言って背を向ける。
大西は返す言葉をなくし、優等生の仮面を脱ぎ捨てた僕の背中を見つめていた。
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