【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

9.

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 笑香。
 誰にも相談できない思いをどうやって抱えていたのだろう。

「──わざわざ北高のグループを選んでそこで広めたのはどうしてだ? 笑香を傷つけたいのなら、出会い系サイトに登録した後、ツイッターで拡散した方が早いだろう。なんでそんな面倒なことを……」

 僕が鋭く切り出すと、大西は深くうつむいた。

「塾でちょっと話題になるだけで良かったの。それならそんなに大変なことにはならないだろうって。笑香のお母さんにも伝えたわ。不審者がいるって言えば笑香を一人にしないと思って……。水嶋君が笑香を迎えにここに来たことも知ってる。だから言ったの、お母さんに。夜遅く、水嶋君とこっそりコンビニで会ってましたって。──笑香は知らない、でも私はこのことを知ってるって、それだけだったのに……!」

 それだけ。それだけか。
 僕は拳を握りしめた。

『どうしてわざわざ笑香のことを伝えに来たんだ?』

 僕の問いかけに、植原紗栄子が答えたのだ。

『水嶋さんの役に立てたらと……』

 思いつめた目でつぶやいた後、胸を押さえて言葉をつなげる。

『いいえ。会いたかったんです。もう一度水嶋さんに会いたかった。──それだけです』

 僕のまるであわれむような視線に気づいたのだろう。真っ赤になって肩をすくませる。

『あのっ、あの、それで……最後に、一度だけ握手してもらえませんか? それだけでいいんです。もう、それで終わりにします』

 勇気をふりしぼった声。

『──悪いけど』

 返した言葉は同じものだった。
 告白を聞いたあの時と、同じ口調の同じ言葉。植原紗栄子の表情があの時と同様にゆがむ。

『ごめんなさいっ……』

 その場から走り去る後ろ姿を、僕は虚無感と共に見送った。
 それだけ。
 もう一度、会いたかっただけ。
 一度だけ、手をつなぎたかっただけ。
 塾で、ちょっと話題になるだけ。
 僕は静かにつぶやいた。

「もういい。とにかく僕は君が何をしたか知ってる。今後笑香に何かあったら……」

 僕は唇だけで笑った。

「同じことを返すだけじゃ、済まないと思ってくれ。──これは警告だ」

 それだけ言って背を向ける。
 大西は返す言葉をなくし、優等生の仮面を脱ぎ捨てた僕の背中を見つめていた。
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