【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

10.

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 二学期の中間テストが終わり、季節は本格的な秋を迎えていた。

 朝晩がだいぶ冷えてきて、僕は学ランの下に一枚何か着込むようになっていた。一緒に登校している笑香は指定されたカーディガンを羽織っている。
 結局笑香のテストの結果は僕とリーダーが同点で、たとえ賭けをしていたとしても、どちらが勝ったとは言えないようなひどくあいまいなものだった。
 だが、一学期から比べると見違えるような成績に、笑香とおばさんの二人は素直に喜びを分かち合っていた。

 中間が済むとあっという間に準備の期間が過ぎ去って、いよいよ最大のイベントである文化祭が始まった。
 赤や黄色に染まり始めた木々が校庭を彩る中、校舎の窓やベランダから下げられた各々のクラスの案内板が、色とりどりに文化祭の雰囲気を盛り上げている。開演まで後二時間を切ったのに、美術部らしい生徒達が大掛かりな門をあわててロータリーの前に組み上げていた。

 昨夜は教師に叱られながら十時に校舎を追い出され、家に帰るとテーブル上に笑香からの置き手紙があった。
 僕は一瞬、どきりとした。僕に対する不満なら重々承知の上だ。ここ一週間ほど朝が早いので笑香と一緒に登校できず、ラインでのやり取りもおざなりになっている。
 かさばる荷物をその場に置いて、テーブルの手紙に視線を落とす。ピンク色の可愛いカードにいつもの見慣れた笑香の字。

『ついに明日だね。いつもがんばってる姿を見かけます。
 ちゃんと食べてるか心配なので、シチューを作って持ってきました。おなべの中を見てください。
 明日、早いのでもう寝ます。おやすみなさい』

 僕はカードの字を見つめ、せめてスマホで声を聞きたい衝動を抑えるのに苦労した。

 そして本番の今日を迎えて、僕は朝から校内を走り回っていた。小春日和の暖かい日差しに、学校指定のTシャツとジャージの僕は汗をかいていた。本部のテントに差し入れされた五百ミリリットルのスポーツドリンクを、すでに三本も空にしている。
 配られた書類の不備を見つけ、責任者を見つけて訂正し、先輩の尻ぬぐいを済ませて再び校内の見回りをしていると、出店の並ぶロータリーの一角で人だかりができているのを見つけた。
 僕は思わず目をすがめた。あれは笑香がいる五組のテントじゃないか?

「どうしたんだ?」

 僕が人垣に声をかけると、そろいの長袖のTシャツを着たグループが顔を上げた。ちょうど中心に立っていた笑香が僕に気づいて口を開く。

「カット野菜が足りないの」
「カット野菜? 豚汁の?」

 僕がたずねると、女子の一人が泣き出しそうな表情を作った。

「ロットの数を間違えて……二十袋必要なのに、二袋しか来なかったんです」

 僕は強くこめかみを押さえた。だからあれだけ通知を出して、数を確認しろと言ったのに。

「近くのスーパーがもうすぐ開くから、事情を話してカット野菜をあるだけ手配してもらったんだけど。全然間に合わなくて……」

 動きやすいよう、髪を二つに結んだ笑香が沈んだ声で訴える。

「食材を今から切るにしても、時間も人数も足りなくて。どうすればいいと思う?」

 僕は深くため息をついた。

「──わかった。僕が手伝う」

 周囲の人垣がどよめいた。

「見回りは先輩に代わってもらう。とにかく食材を集めてくれ。明日の手配が今からできるか、それも電話して確認しろよ」

 笑香が目を丸くした。
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