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第四章 文化祭
13.
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笑香は明らかに不機嫌な声で続けた。
「さっき仲林さんと仲よくしゃべってたじゃない。仲林さん、さばさばしててかっこいいよね、何でも一人でできる感じで。もしかして、史郎君にはああいう人が向いてるのかなって……」
思いもよらない反論に、呆気に取られて笑香を見る。
「私なんか、史郎君に助けてもらってばっかりで。今だって失敗しちゃって、史郎君に迷惑かけて」
だんだん笑香の目線が下がる。言葉を切ると、今度は視線を床に落としてつぶやいた。
「前からちょっと考えてたの。史郎君が私にこだわったのは、もしかしてすり込みだったのかなって。ほら、卵からかえったひなが、一番始めに会ったものを親鳥とまちがえるって話。最初に会ったのが私だったから、史郎君は私のこと──」
「いいかげん僕も怒るぞ」
つい口調がきつくなる。
「そんな勝手に僕の気持ちを解釈されてたまるか。そんな簡単な思いだったら、僕は今君のそばにいない。大体、もしもすり込みだったら何だっていうんだ? 誰かに代わって欲しいのか?」
「そんな、ちが……」
僕を見上げる笑香の細い肩をつかむ。
「もう誰にも代われない。今さら何を言ってるんだ」
不意に笑香が泣き出しそうな表情を作った。
「史郎君、……怖い」
僕ははっとした。つかんだ肩から手を離すと、笑香は痛そうにその場所を押さえた。
「史郎君のこと、もっと知りたいと思ってる。でもこんな風に乱暴にされるとやっぱりちょっと怖くなる。──美優のことも、最初に私に言って欲しかったのに……」
僕は笑香から顔をそむけた。きつく唇を噛みしめる。
大西は僕と対峙した後、学校を欠席し続けていた。
大西と会ったことを話すと笑香は眉をしかめていた。すべてを語り終わった後、笑香は僕にぽつりと言った。
『先に、私に言って欲しかったな。私が美優と話したかった。美優は私の親友だったのに……』
『あんなやつ親友じゃないだろ』
吐き捨てるように重ねた僕を笑香は悲しそうに見つめた。
『でも、なんとなくわかるの。もし私が美優だったら同じことをしたかもしれない。それに優しかったんだよ? やったことは確かにひどいと思うけど、その後は本気で心配してくれてた。……後悔してたかもしれない』
『笑香は優しすぎるんだよ。自分を裏切ったやつのことなんか考えてたら、きりがないだろ。お人好しにもほどがある』
そうきっぱりと言い切った後、僕は一瞬胸を突かれた。思わずごくりと息をのむ。
僕も同じか。
笑香は何も答えずに、ただ寂しげに微笑んだのだ。
「──とにかく」
僕は固い口調で言った。
「また後で話そう。僕もそろそろ本部にもどらないと。……僕を疑ってるひまがあったらもう一度ロットを確認しろよ」
笑香の返事を聞く前に、鍵を開けて部屋の外へ出る。
僕達は互いに無言のまま、生徒会室の前で別れた。
「さっき仲林さんと仲よくしゃべってたじゃない。仲林さん、さばさばしててかっこいいよね、何でも一人でできる感じで。もしかして、史郎君にはああいう人が向いてるのかなって……」
思いもよらない反論に、呆気に取られて笑香を見る。
「私なんか、史郎君に助けてもらってばっかりで。今だって失敗しちゃって、史郎君に迷惑かけて」
だんだん笑香の目線が下がる。言葉を切ると、今度は視線を床に落としてつぶやいた。
「前からちょっと考えてたの。史郎君が私にこだわったのは、もしかしてすり込みだったのかなって。ほら、卵からかえったひなが、一番始めに会ったものを親鳥とまちがえるって話。最初に会ったのが私だったから、史郎君は私のこと──」
「いいかげん僕も怒るぞ」
つい口調がきつくなる。
「そんな勝手に僕の気持ちを解釈されてたまるか。そんな簡単な思いだったら、僕は今君のそばにいない。大体、もしもすり込みだったら何だっていうんだ? 誰かに代わって欲しいのか?」
「そんな、ちが……」
僕を見上げる笑香の細い肩をつかむ。
「もう誰にも代われない。今さら何を言ってるんだ」
不意に笑香が泣き出しそうな表情を作った。
「史郎君、……怖い」
僕ははっとした。つかんだ肩から手を離すと、笑香は痛そうにその場所を押さえた。
「史郎君のこと、もっと知りたいと思ってる。でもこんな風に乱暴にされるとやっぱりちょっと怖くなる。──美優のことも、最初に私に言って欲しかったのに……」
僕は笑香から顔をそむけた。きつく唇を噛みしめる。
大西は僕と対峙した後、学校を欠席し続けていた。
大西と会ったことを話すと笑香は眉をしかめていた。すべてを語り終わった後、笑香は僕にぽつりと言った。
『先に、私に言って欲しかったな。私が美優と話したかった。美優は私の親友だったのに……』
『あんなやつ親友じゃないだろ』
吐き捨てるように重ねた僕を笑香は悲しそうに見つめた。
『でも、なんとなくわかるの。もし私が美優だったら同じことをしたかもしれない。それに優しかったんだよ? やったことは確かにひどいと思うけど、その後は本気で心配してくれてた。……後悔してたかもしれない』
『笑香は優しすぎるんだよ。自分を裏切ったやつのことなんか考えてたら、きりがないだろ。お人好しにもほどがある』
そうきっぱりと言い切った後、僕は一瞬胸を突かれた。思わずごくりと息をのむ。
僕も同じか。
笑香は何も答えずに、ただ寂しげに微笑んだのだ。
「──とにかく」
僕は固い口調で言った。
「また後で話そう。僕もそろそろ本部にもどらないと。……僕を疑ってるひまがあったらもう一度ロットを確認しろよ」
笑香の返事を聞く前に、鍵を開けて部屋の外へ出る。
僕達は互いに無言のまま、生徒会室の前で別れた。
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