【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

14.

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どこか落ち着かない気分の中で何とか開演を迎えると、その後は特に問題もなく、僕は回された仕事をこなした。準備不足の場所もあったが、祭りの盛り上がりに合わせるように順々と整って行った。

 先輩達と交代で簡単に昼食をすませた後、午後の校内の見回りを行う。北高の制服を着た生徒がそこかしこで見受けられ、僕は何となく不愉快になった。また五組のテントにはあえて近づかなかった。忙しかったせいもあるが、半分は意地になっていたのだ。

 夕方になって今日の催しの予定がすべて終了すると、僕達は後片付けに追われた。明日の準備を確認し、帰る目安がついた頃にはもう六時をすぎていた。
 朝振り替えた仕事の代わりに最後の見回りを行って、一緒にいた先輩と学内に残った人間を追い出す。その時、重そうなリュックを下げた笑香がひょいと顔を出した。

「水嶋、彼女のお迎えだぞ」

 一緒にいた先輩に茶化され、僕ははた目にもはっきりわかる仏頂面で笑香を見た。笑香が少し困った顔で無言のままの僕を見つめる。
 不穏な空気に気がついたのか、先輩は軽く肩をすくめると鍵を僕に預けて言った。

「俺、北校舎を回って帰るから、水嶋はここの鍵を閉めてくれ。──じゃあな」

 そのまま教室から出て行ってしまう。
 僕達は互いに口をきかず、誰もいない教室に取り残された。
 笑香はまだパーカーの下に僕のTシャツを着込んでいた。僕の視線に気がついて、笑香は照れたように笑った。

「ああ、これ? ……結局お母さんが最後まで来られなくて。遠征の試合が長引いて、帰り道で事故渋滞に巻き込まれちゃったんだって。まだ家にもどれないみたい」
「それで豚汁はどうなったんだ」

 僕がぶっきらぼうにたずねると、笑香はちょっとはにかんで答えた。

「午前中はそうでもなかったけど、午後から風が出て来たせいか、よく売れたよ。明日も天気いいみたいだし、調整しようって話してた。あ、それから、明日の食材も手配出来た。クラスのみんなが史郎君にお礼を言っておいてって。……ありがとう」

 僕は笑香の顔を眺めた。僕のあからさまに不機嫌な態度にも、いつもと変わらず笑香は接して来る。
 僕は小さくため息をついた。やっぱり、僕は笑香に勝てない。

「朝はごめん。ちょっと疲れてたみたいだ。──自分が悪いんだけど」
「そんな……それは、私が」

 笑香の声音は心底申し訳なさそうだった。

「こっちこそごめんね。史郎君が頑張ってるのを知ってて、あんなことを言っちゃって。史郎君は私を心配してくれてるのに」

 笑香の柔らかな声が、固くしこった僕の心をゆっくりと解きほぐしていく。
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